毎年ぶり返す水虫…。正しい対処法を知っていますか?

  • 作成:2021/07/04

夏になると水虫の相談が増えます。確かに、高温多湿な夏は水虫になりやすい季節ですが、実は「前年に治し切れなかった水虫」がぶり返しているケースも少なくありません。どうすればぶり返さないようになるのか、対処法を解説します。

この記事の目安時間は3分です

Q.水虫は、なぜ毎年夏になるとぶり返す?

A.前年の夏に、きちんと「白癬菌」を退治できていなかったケースが多い

水虫の原因菌である「白癬菌」は、高温多湿の環境で活発に繁殖します。そのため、水虫の流行時期は毎年梅雨からお盆休みあたりまで。その後、気温が下がって空気が乾燥してくると、白癬菌が皮膚に残っていても痒みや赤み、めくれといった症状が落ち着いてくることがあります。これを「治った」と勘違いして治療を止めてしまうと、次の年また気温や湿度が高くなってきた時、水虫の症状をぶり返すことに。水虫を「夏になるとぶり返す」という人の多くは、このケースです。

毎年ぶり返す水虫…。正しい対処法を知っていますか?

水虫治療のゴールは、皮膚の痒みや赤み、めくれといった症状を解消することではなく、水虫の原因菌である白癬菌を皮膚から完全に退治することです。白癬菌が皮膚に残っているかぎり、どれだけ見た目が綺麗になって自覚症状がなくなっても、治ったとは言えません。医師からOKをもらえるまで、しっかりと薬を使い続けるようにしてください。

塗り薬は、どれだけ短くても2ヶ月は使い続ける必要がある

基本的に水虫は「抗真菌薬」の塗り薬を使って治療を行いますが、この薬の目的は白癬菌を退治することです。そのため、見た目が綺麗になった、痒みなどの自覚症状がなくなった、という時点で止めてしまってはいけません。通常、その時点ではまだ皮膚に白癬菌が残っていると考えられるからです。
抗真菌薬をどの程度の期間塗り続ければ良いかは、水虫のできている場所やその広がり方にもよりますが、たとえば足の指の間にできた水虫であれば2ヶ月以上、かかとや足の裏など角質の分厚い場所にできた水虫であれば6ヶ月以上が目安になります1)。これは、皮膚のターンオーバー(生まれ変わり)に、そのくらいの時間がかかるからです。
かなり気長な治療が必要にはなりますが、一度きちんと白癬菌を退治してしまえば、新たに感染しない限りはぶり返すことはありません。毎年水虫をぶり返している人は、この機会に完治を目指してしっかりと治療を行うことをお勧めします。

「薬の選び方」よりも「薬の使い方」を重視しよう

水虫治療では、「どの塗り薬を選ぶか」よりも、「塗り薬をどれだけしっかりと使える」かの方が圧倒的に重要です。
水虫治療に使う抗真菌薬の塗り薬には何種類もありますが、どの薬も効き目にそれほど差があるわけではなく2)、どの薬であっても、きちんと使えれば治療ができます。インターネットやSNS、雑誌などでは「水虫薬ランキング」のようなものがよく出回りますが、ほとんどは主観的なものなので、あまりその順位に振り回される必要はありません。

毎年ぶり返す水虫…。正しい対処法を知っていますか?

▲副作用などが出た場合は、別系統の薬に切り替えるなどして対応します

一方、どの塗り薬であっても、きちんと適切に使い続けることができなければ、水虫治療は失敗してぶり返すことになってしまいます。
先述した「見た目が綺麗になった、痒みなどの自覚症状がなくなった時点で治療を止めてしまう」ことも大きな失敗の要因ですが、他にも治療の失敗として「症状のある場所にしか薬を使わない」というものがあります。
通常、水虫は見た目で病変がわかる場所だけでなく、その周辺にも広く感染しています。そのため、たとえば足の指の間に水虫の症状がある場合でも、塗り薬は爪の周り・足の裏・足の側面・くるぶしなども含めた足全体に使わなければいけません1)。また、たとえ右足にしか症状がない状態でも、同じ床やマットを左足でも必ず踏んでいますので、左足にも薬を塗ることをお勧めします。つまり、塗り薬は両足全体にまんべんなく広く使う必要がある、ということです。
なお、こうした使い方をしていると、10gの塗り薬はおよそ1週間~10日程度でなくなる計算になります。よく水虫をぶり返す人は、一度塗り薬の減り方を意識してみてください。

必ず病院を受診して欲しい、特殊な水虫

現在、ドラッグストア等で購入できる市販薬(OTC医薬品)にも、抗真菌薬の塗り薬はたくさん販売されています。そのため、きちんと使うことができれば、市販薬でも水虫を治療することが可能です。しかし、中には重症化してしまったり、生活に大きな支障を来たしてしまったりする恐れのある水虫もあります。
たとえば、これまでに一度も水虫と診断されたことがない人が、足に痒みがあるからといって自分で「水虫だ」と判断して市販薬を使うのは危険です。水虫だと自己判断して皮膚科を受診した人のうち、3~4人に1人は水虫ではない別の皮膚疾患だったという調査結果もある3)ほど、水虫の鑑別は難しいからです。

また、糖尿病患者さんの場合、指先の感覚が鈍っている(末梢神経障害)ために、水虫の悪化に気付きにくい傾向があります。そのため、水虫が深刻な感染症の引き金になることが多く4)、これが足の切断などの重大なトラブルの原因になることもあります。必ず、皮膚科を受診して医師・薬剤師の指導のもとで治療を行うようにしてください。
その他にも、高齢者では水虫による足の痒みや違和感、皮膚のめくれといった症状が、歩く時のバランスに悪影響を及ぼすこともあります5)。こうしたバランスの悪化は転倒・骨折のリスクにつながってしまうため、早めのケアが必要です。

水虫は、きちんと治療すれば完治させることのできる感染症です。たかが水虫、と油断することなく、正しい治療方法でしっかりと治すようにしてください。

(参考文献)
1) 日本皮膚科学会 皮膚白癬症診療ガイドライン2019
2) Cochrane Database Syst Rev . 2007 Jul 18;2007(3):CD001434.
3) J Dermatol . 2010 May;37(5):397-406.
4) Eur J Dermatol. 2000 Jul-Aug;10(5):379-84.
5) 日本フットケア学会雑誌.16(3):125-30,(2018)

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