「風邪に抗生物質は使わない」病院が増えてきた理由

  • 作成:2021/08/22

風邪をひいて病院を受診すると、以前はよく抗生物質(抗菌薬)が処方されていたのに、最近はそういった病院が減ってきています。これは何故でしょうか。 ※この記事は医師監修のもと、作成しております

アスクドクターズ監修ライター アスクドクターズ監修ライター

この記事の目安時間は3分です

「風邪に抗生物質は使わない」が主流になってきた理由【医師監修】

Q.風邪をひいた時は、抗生物質(抗菌薬)を飲んだ方が良いですか?

A.基本的に、抗生物質は要らない。

風邪は、基本的にその大部分がウイルスの感染症です。抗生物質は細菌を退治する薬ですが、ウイルスには何ら作用しません。そのため、風邪の時に抗生物質を飲む必要はありません。

ウイルスの感染症である「風邪」に、細菌を退治する「抗生物質」を使っても、効果はない

風邪の原因となる病原体の90%以上は、アデノウイルスやライノウイルスなどの「ウイルス」です1,2)。そのため、もし風邪を薬で根本的に治療しようと思ったら、これらのウイルスに作用する「抗ウイルス薬」を使う必要がありますが、残念ながらそういった薬はまだ世の中に存在しません(※風邪薬も、あくまで症状を抑えるために使う対症療法の薬です)。

抗生物質は「ウイルス」ではなく「細菌」を退治するための薬なので、風邪の人が抗生物質を飲んでも、特に何も効果は得られません3)。それどころか、下痢や軟便といった副作用に悩まされる4)だけの可能性もあり、薬を使うメリットはほとんどありません。そのため、風邪をひいた時には、抗生物質はむしろ使わない方が良いのです。

※感染症・病原体の違い

「風邪に抗生物質は使わない」が主流になってきた理由【医師監修】

※同じ感染症でも原因となる病原体が全く異なるため、それぞれの病原体に合わせたタイプの薬を使う必要があります(例:ウイルス→抗ウイルス薬、細菌→抗生物質(抗菌薬)、真菌→抗真菌薬、寄生虫・原虫→抗寄生虫・原虫薬)。

昔は「肺炎」の予防に使われていたが、害の方が大きいということがわかってきた

昔は、風邪が悪化して肺炎になってしまうのを防ぐ目的で、風邪の段階から抗生物質がよく使われていました。事実、風邪をひいた4,000~12,000人に抗生物質を投与することで、1人の肺炎を防げる5,6)、というくらいの効果はあるようです。
しかし、これだけの人に抗生物質を飲ませると、副作用で下痢をしたり、アレルギーを起こしたり、重い副作用で救急外来を受診しなければならないような人7)が、大勢出てきてしまうこと、さらに、抗生物質を使い過ぎると、薬が効かない危険な「耐性菌」を生み出す原因にもなることが、近年明らかになってきました。つまり、風邪の人に抗生物質を使うという方針は、肺炎になってしまう人を1人減らせる代わりに、もっとたくさんの人を薬の副作用で苦しませ、危険な耐性菌を増やしてしまうことに繋がってしまうのです。

つまり、薬を使うメリットよりデメリットの方が上回ることが色々な研究結果としてわかってきたため、最近は「風邪に抗生物質を使わない」のが主流になっています。

抗生物質をむやみに欲しがらないで

「風邪の時には抗生物質を飲まないといけない」と勘違いしている人は多く、病院でも患者からの希望によって、医師がしぶしぶ抗生物質を処方してしまうケースは少なくないようです8)。しかし、風邪の時に抗生物質を飲んでもほとんどメリットはありません。むしろデメリットの方が大きいので、飲まない方が良いでしょう。
医師から、抗生物質を使った治療が必要(細菌による感染症)だ、と診断された場合を除き、むやみに抗生物質を欲しがらないようにしましょう。

1) 日本呼吸器学会:市民のみなさまへ「風邪症候群」
2) Ann Allergy Asthma Immunol. 1997 Jun;78(6):531-9; quiz 539-40.
3) Cochrane Database Syst Rev. 2017 Sep 7;9:CD004417.
4) Cochrane Database Syst Rev. 2013 Jun 4;(6):CD000247
5) BMJ. 2007 Nov 10;335(7627):982.
6) Ann Fam Med. 2013 Mar-Apr;11(2):165-72.
7) Clin Infect Dis. 2008 Sep 15;47(6):735-43.
8) Ir J Med Sci . 2018 Nov;187(4):969-986.

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