妊娠中にインフルエンザワクチンは受けるべき?接種を避けたいワクチンはどんなもの?

  • 作成:2021/11/24

毎年寒くなり始めると、インフルエンザのワクチン接種が始まります。ワクチンに関してはインターネットやSNSでも色んな情報が出回っており、なんとなく不安を感じる人も多いと思います。とくに“妊娠中”は、自分だけではなくお腹の子どものことも考えなければならないため、なおさら慎重になって当然です。だからこそ、ワクチンに関しては正確な情報をもとに考えることが大切です。

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妊娠中にインフルエンザワクチンは受けるべき?接種を避けたいワクチンはどんなもの?

インフルエンザのワクチンは、妊娠中でも接種できる

妊娠中はインフルエンザのワクチンを接種してはいけない、と誤解している人はたくさんいます。確かに、「妊娠中には接種できないワクチンがある」のは事実ですが、それは弱らせた病原体をそのまま使っている「生ワクチン」です。

一方、インフルエンザのワクチンは「不活化ワクチン」に分類されるもののため、この妊娠中は接種できないワクチンには該当しません。そのため、妊娠中でも接種することが可能です。実際、どの妊娠の時期に接種しても、胎児の先天異常や早産のリスクを高めたり、出産後の乳児の発育などに影響したりすることはなかったことが確認されています1,2)

なお、妊娠中には接種できない「生ワクチン」は、麻疹(はしか)、風疹、水痘、ポリオ、おたふくかぜのワクチンが該当します。特に、妊娠中に麻疹(はしか)や風疹、水痘などに罹ると、母親だけでなく胎児にも障害を及ぼす恐れがあるため、これらの生ワクチンは妊娠前に接種しておくことが大切です。

※妊娠中には接種できない「生ワクチン」と、その感染症リスクの例

妊娠中にインフルエンザワクチンは受けるべき?接種を避けたいワクチンはどんなもの?

妊婦さんがインフルエンザのワクチンを接種すると、生まれてくる子どもも一緒に守れる

妊娠中にインフルエンザを発症すると、通常よりも重症化しやすい傾向にあります。たとえば、アメリカのCDC(疾病予防管理センター)は、妊娠中と産後2週間以内を、インフルエンザ重症化のハイリスク要因に挙げています3)。ここで言う“重症化”とは、38℃を超える熱が出て、筋肉痛や関節痛に悩まされる状態ではなく、入院して生死の境をさまようことになる状態のことを指します。そのため、こうした生死に関わる重症化のリスクを避けるために、妊娠中の女性はインフルエンザへの感染対策をより強く行う必要があります

このとき大事になってくるのが、手洗いなどの感染対策に加えて、ワクチン接種です。インフルエンザのワクチンは、感染リスクを6割ほど減らしてくれるだけでなく、重症化リスクも大きく軽減してくれます。特に、妊娠中の女性がインフルエンザのワクチンを接種すると、母親だけでなく、生まれてくる子どものインフルエンザ感染・発症を3分の1程度にまで減らせることがわかっています4)。つまり、妊娠中にインフルエンザのワクチンを接種すると、自分だけでなく生まれてくる子どももインフルエンザから守ることができる、ということです。

妊娠中は、むしろ「接種が推奨」されている

妊娠中にインフルエンザのワクチンを接種しても妊娠の転帰や胎児の発育には影響しないという有効性、さらにインフルエンザが重症化しやすい妊婦や乳幼児を守れるという安全性のデータが得られていることから、日本でも海外でも、妊娠中は妊娠の時期にかかわらずインフルエンザのワクチン接種を接種することが推奨されています5,6)。そのため、接種しようかどうか迷っている人は、ぜひ積極的に接種を検討していただければと思います。

インフルエンザを発症しても、薬があるからワクチン接種しなくても良いのでは・・・と考える人もいるかもしれません。確かに、インフルエンザが重症化しても、色々と薬を使って治療を行うことはできます。しかし、その治療薬の中には妊娠中に使えない(※胎児に悪影響を及ぼす)ものもたくさんあります。つまり、妊娠中にインフルエンザが重症化してしまうと、少ない選択肢で治療を行わなければならない、ワクチンよりも遙かにリスクの高い薬を使わなければならない場面も起こり得るということです。そのため、できるだけワクチン接種で感染や重症化を防ぐことをおすすめします。

執筆:薬剤師K 調剤薬局勤務、薬剤師10年目

1) 感染症学雑誌.84(4):449-453,(2010)
2) JAMA . 2012 Jul 11;308(2):165-74.
3) CDC「People at high risk of developing flu-related complications.
4) N Engl J Med . 2008 Oct 9;359(15):1555-64.
5) Obstet Gynecol . 2018 Apr;131(4):e109-e114.
6) 日本感染症学会「2021-2022シーズンにおけるインフルエンザワクチン接種に関する考え方」

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