産婦人科医が解説!妊娠中や授乳中にインフルエンザワクチンは接種できる?

  • 作成:2021/12/13

新型コロナウイルス感染症の拡大 が落ち着いている今、冬に備えて私たちができることの1つは「インフルエンザワクチンの接種」かもしれません。インフルエンザのワクチンは、接種してから抗体が 体の中にできるまでに約2週間かかります。そのため12月までにはワクチンを接種することがお勧めです。今回は、淀川キリスト教病院産婦人科医の柴田綾子先生が、妊娠中や授乳中のインフルエンザワクチン接種について解説します。

柴田 綾子 監修
淀川キリスト教病院 産婦人科医長・産婦人科専門医
柴田 綾子 先生

この記事の目安時間は3分です

産婦人科医が解説!妊娠中や授乳中にインフルエンザワクチンは接種できる?

1. 妊娠中のインフルエンザワクチン

妊娠中もインフルエンザのワクチンを打つことができます。インフルエンザのワクチンは不活化ワクチンといって、中にウイルスは含まれていません。そのため妊娠初期の方でもインフルエンザワクチンを打つことが可能です(1)
妊娠中にインフルエンザに感染してしまうと、重症化や入院するリスクが高くなっています。インフルエンザのワクチンを接種することで、妊娠中の入院を40%減少できたと報告されています(2)。また、妊娠中にインフルエンザのワクチンを接種しても、赤ちゃんの奇形・死産・流産などの増加は認められませんでした(3)。妊娠中にワクチン接種すると、お母さんの体の中で作られた抗体が胎盤を通じて赤ちゃんにも移行します。その結果、生まれてきた赤ちゃんも、インフルエンザに感染しにくくなることが報告されています(4)

2. 授乳中のインフルエンザワクチン

授乳を続けながらワクチンを打つことができます。ワクチンを接種しても授乳を止めたり延期したりする必要はなく、いつもどおり授乳を続けて大丈夫です。授乳中の方がワクチン接種をすることで、お母さんの体の中で作られた抗体が母乳へ移行し、赤ちゃんのインフルエンザ感染が減らせる可能性が報告されています(5)

3. 新型コロナウイルス感染症ワクチンとインフルエンザワクチンの接種間隔

日本では、新型コロナウイルス感染症ワクチンとその他のワクチンは、前後2週間は空ける必要があります(6)。そのため、新型コロナウイルス感染症ワクチンとインフルエンザワクチンは2週間空ければ接種可能です。いっぽうアメリカでは、新型コロナウイルス感染症ワクチンとインフルエンザワクチンは同じ日に接種可能です。アメリカでは、同じ日に2種類のワクチンを接種しても、それぞれ別の腕へ接種すれば問題ないと考えられているためです。

いかがでしたでしょうか?インフルエンザの流行状況によりますが、もし何かご心配なことがありましたら、お近くの産婦人科にご相談ください。

参考文献
1.国立成育医療研究センター, 妊娠中のインフルエンザワクチン・抗インフルエンザ薬
2. Mark G Thompson et. al. Clinical Infectious Diseases, Volume 68, Issue 9, 1 May 2019, Pages 1444–1453
3. Giles et al. Human vaccines & immunotherapeutics vol. 15,3 (2019): 687-699.
4.Omer SB et al. Lancet Respir Med. 2020;8(6):597-608. doi:10.1016/S2213-2600(19)30479-5
5. Brady RC, et al. Vaccine. 2018 Jul 25;36(31):4663-4671.
6.厚生労働省, 新型コロナワクチンとそれ以外のワクチンは、同時に接種することはできますか。

2006年 名古屋大学情報文化学部を卒業し群馬大学医学部に編入
2011年 沖縄で初期研修を開始し、2013年より現職
世界遺産15カ国ほど旅行した経験から、母子保健に関心を持ち産婦人科医となる。著書に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)、『産婦人科ポケットガイド』(金芳堂)、『女性診療エッセンス100』 (日本医事新報社)など。

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