乳がんになりやすい体質を専門医が解説! 出産経験やストレスはどこまで影響する?

  • 作成:2021/12/11

国は40歳以上を対象に、2年に1度の乳がん検診を推奨しています。定期的に検診を受けることは乳がん発見に欠かせませんが、がんができる前に自分で予防する方法はあるのでしょうか。乳腺外科専門医の法村尚子先生に、乳がんのリスクから見た予防法について解説していただきました。

法村 尚子 監修
高松赤十字病院 胸部・乳腺外科 副部長
法村 尚子 先生

この記事の目安時間は3分です

乳がんになりやすい体質を専門医が解説! 出産経験やストレスはどこまで影響する?

出産・授乳経験の有無との関連性は?

一口に乳がんと言ってもいろいろなタイプがあります。約80%は「エストロゲン」という女性ホルモンの影響で増殖すると考えられています。そのため、乳がんになりやすい人というのは、長い間エストロゲンの影響を受けている人と言えます。

現代女性は初潮が早い一方、閉経は遅い傾向にあります。月経のある期間が長い人は、女性ホルモンの影響を受ける期間も長くなります。

出産経験の有無も乳がんに関係しています。
妊娠期や授乳中は、エストロゲンの分泌は止まっています。出産は、ホルモンの影響を受ける期間を短くし、乳がんのリスクを低くすると言えるでしょう。女性の社会進出に伴い、出産の高齢化、少子化が進んだことは、乳がんの増加に影響している可能性があります。

閉経後の肥満、喫煙はほぼ確実にリスクを高める

近年、乳がん患者は増加しており、食生活・生活習慣の変化も原因と考えられています。日本乳癌学会乳癌診療ガイドラインでは、世界がん研究基金(WCRF)/米国がん研究機構(AICR)の報告書をもとに、日本人の食生活や生活習慣と乳がんの発症リスクの関連をまとめています。
これによると、日本人において確実に乳がんリスクが上がるとされているのは、閉経後の肥満、喫煙はほぼ確実、閉経前の肥満は可能性あり、運動、授乳、大豆・イソフラボンは乳がんを予防できる可能性ありとなっています。また、飲酒や牛乳などの乳製品、野菜や肉、魚等の食べ物、葉酸やビタミン等はデータ不十分で結果は出ていません。

国際的な結果と日本人の結果は一致しているわけではありませんが、両方の結果をもとにひとつずつ見ていきます。

肥満

特に閉経後の女性では乳がん発症リスクを高めます。肥満は乳がんだけではなく、他の生活習慣病のリスクも高めます。そのため、適切なカロリー摂取と適度な運動により、太りすぎないように気を付けることが大切です。

飲酒

日本人ではデータが不十分で飲酒と乳がんリスクとの関連は出ていませんが、国際的な報告では発症リスクが高くなることはほぼ確実です。長期にわたる大量の飲酒は、乳がんだけではなく、肝臓をはじめ、全身に悪い影響を与える可能性があるため、適量で楽しむ程度にしましょう。

乳製品

乳製品の摂取で乳がんリスクが上がる、あるいは下がると話題になったことがありましたが、現在、乳製品の摂取により乳がん発症リスクは低くなる可能性があるとされています。ただし、摂りすぎは肥満を招きかねませんので要注意です。

大豆・イソフラボン

イソフラボンと乳がんのリスクの可能性についてもよく耳にします。イソフラボンには抗エストロゲン作用があり、摂取することで乳がん発症リスクが低くなる可能性があります。しかし、イソフラボンをサプリメントで服用することで乳がん発症リスクが低くなることは証明されておらず、安全性にも問題があるかもしれません。イソフラボンは通常の大豆食品からの摂取を心がけましょう。サプリメントとして服用する場合は1日30mg以下にとどめましょう。

喫煙

喫煙により乳がん発症リスクが高くなることもほぼ確実です。また、受動喫煙(他人が吸ったタバコの煙を吸うこと)も乳がん発症リスクを高くする可能性があります。喫煙は肺がんをはじめ、多くの生活習慣病の原因となります。乳がんリスクの観点からだけではなく、喫煙はもちろん受動喫煙はできるだけ避けましょう。

運動

特に閉経後の女性では、運動を行うことにより乳がんのリスクが低くなることはほぼ確実です。適度な運動は、肥満や生活習慣病の予防にもなります。

ストレス

ストレスと乳がん発症リスクとの関係については興味深いところですが、はっきりとした関係は認められていません。性格と乳がん発症リスクとの間にも関連はないとされています。

以上のことにより、乳がんのリスクを抑えるためには、適度な運動とバランスの取れた食事で肥満を避け、健康的な生活を送ることが大切と言えます。また、飲酒はほどほどにするなど、生活習慣病をはじめ様々な病気を予防する習慣と乳がん予防は同じと言えます。

ただし、食事や生活面でいくら気を付けていても、完全な予防は不可能です。乳がんは自己触診でも発見できる場合がありますが、自分で触って見つかるがんはすでに大きくなっていることが多いので、やはり、定期的に乳がん検診を受けることが一番大切と言えるでしょう。

遺伝性乳がんの「予防的乳房切除」が保険適用に

乳がんのうち、遺伝によるものは5~10%と言われています。つまり、90%以上は遺伝と関係のない乳がんです。女優のアンジェリーナ・ジョリーさんは、遺伝子検査で乳がんになりやすい体質とわかり、2013年にがんになっていない乳房を切除(予防的乳房切除)、2015年には卵巣を摘出し、話題になりました。
BRCA1、BRCA2という遺伝子に変異があると、変異がない人に比べ、乳がん発症リスクが6~12倍になると言われています。この変異は2分の1の確率で親から子に受け継がれます。変異があるかどうかの検査は血液検査でできますが、日本で保険適応となるのは主に以下の要件を満たした時です。

  • 45歳以下で乳がんを発症した
  • 60歳以下のトリプルネガティブ乳がん
  • 2個以上の乳がん発症
  • 第3度近親者内に乳がんまたは卵巣がん発症者が1名以上いる
  • 男性乳がんである

近年、予防的乳房切除は保険適応になりましたが、実施している施設は限られており、どこでも受けられるわけではありません。ただ、がんになっていない乳房を切除するということには抵抗がある方も多いと思います。遺伝子変異が見つかった方は、年齢に関係なく若い時から定期的に乳がん検診をするのが望ましいでしょう。

※参考文献:日本乳癌学会「乳癌診療ガイドライン」、「患者さんのための乳癌診療ガイドライン」

香川大学医学部医学科卒業。乳腺専門医・指導医、甲状腺専門医、内分泌外科専門医、外科専門医等の資格を持つ。医学博士。患者さんの立場に立ち、一人一人に合った治療を提供できるよう心掛けている。プライベートでは1児の母。

症状や健康のお悩みについて
医師に直接相談できます

  • 24時間受付
  • 医師回答率98%以上

病気・症状名から記事を探す

その他
あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行

協力医師紹介

アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、31万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。

記事・セミナーの協力医師

Q&Aの協力医師

内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。

Q&A協力医師一覧へ

今すぐ医師に相談できます

  • 最短5分で回答

  • 平均5人が回答

  • 50以上の診療科の医師