男性にこそ知って欲しい、生理前のイライラ、眠気、腹痛などを招く「月経前症候群(PMS)」

  • 作成:2022/01/23

生理の前にイライラしたり気分が落ち込むことはありませんか? 生理が始まると症状がおさまる場合は「月経前症候群」(PMS)かもしれません。PMSの症状は、イライラや気分の落ち込み以外にも、吐き気や頭痛、腹痛、腰痛など様々です。自覚がないだけで実はPMSの症状がある女性もけっこう多いとか。今回はPMSの原因や症状、治療方法について婦人科医が解説します。

山中 章義 監修
茶屋町レディースクリニック 副院長
山中 章義 先生

この記事の目安時間は3分です

男性にこそ知って欲しい、生理前のイライラ、眠気、腹痛などを招く「月経前症候群(PMS)」

そのイライラは、月経前症候群(PMS)かも?

月経前症候群(PMS)とは、「月経前の3~10日の間に続く精神的あるいは身体症状で、月経発来とともに減退ないし消失するものをいう」と定義されています。つまり生理前に症状が出現し、生理が始まると症状が消えるものです。精神的な症状としては、生理前になると怒りっぽくなったり、落ち込みやすくなったり、理由もなく急に泣きたくなったりすることもあります。精神症状がある場合は特に「月経前不快気分障害(PMDD)」と呼ばれます。

PMSの原因はまだはっきりとは解明されていませんが、女性ホルモンの変動が影響していると考えられています。排卵から生理前にかけての時期は、卵巣から分泌される女性ホルモンが急激に増加します。その後、女性ホルモンが急激に低下することによって生理が起こります。この女性ホルモンの急激な変化によってPMSは引き起こされると考えられています。
また、女性ホルモンの急激な変化は脳内の神経伝達物質に影響し、PMDDのような精神症状を引き起こすとも言われています。ただし、女性ホルモンの急激な変化は誰もが起こる現象ですので、PMSには別の様々な要因も関係しているのではないかと考えられています。

精神面・身体面のダブルで症状が生じることも

PMSの症状はとてもたくさんありますが、症状やその程度にはかなり個人差があります。例えば、次のようなものです。

〈精神的な症状〉
情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害など

〈身体的な症状〉
腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張り、食欲不振・過食、めまい、倦怠感など

どれか一つだけ症状がでる場合もあれば、いくつも症状がでることもあります。また、どのような症状だとしても、生理前に症状があり、生理始まるか終わる頃に症状が消える場合はPMSの可能性が高いです。生理が終わっても症状が続く場合はPMSではなく他に原因がある可能性も考えられます。

対策は生活習慣の改善と、漢方薬やピル

PMSは女性ホルモンの急激な変化が原因と考えられているので、その変化を穏やかにしてあげれば症状は改善します。

まずは普段からバランスのいい食事を摂取し、適度な運動と適度な睡眠を心がけることです。ストレスや不規則な生活を送ることが原因でホルモンバランスは崩れやすくなり、PMSの症状がひどくなりやすいのです。

食事や生活習慣を改善しても症状が続く場合は、漢方薬やピルの服用が必要となります。漢方薬はPMSで起こるイライラや気分の落ち込み、頭痛やむくみなど様々な症状に効果があります。ただし、ホルモン分泌に直接作用するわけではないので、あくまで症状を緩和する目的で使用します。漢方薬でも症状が改善されなければピルを内服することになります。

ピルを内服すると排卵が起こらなくなります。PMSは排卵から生理開始までの急激なホルモンの変動によって起こるとされているため、排卵を抑制することで女性ホルモンの急激な変化も抑えられます。ピルは避妊のイメージが強いのですが、PMSや生理痛、月経不順に対しても効果があります。

男性がPMSを知るために、職場研修を開いても◎

さて、男性は女性のように月単位で急激なホルモンの変動は起こりませんし、生理痛やPMSのような周期的に訪れる不調もありません。女性に生理痛があることは知っていても、PMSという病態を知っている男性はほとんどいません。そのため、女性がイライラしたり気分が落ち込んだりしていても、その人の性格だと思い込んでしまうこともあるでしょう。場合によってはパートナーとの関係が悪くなったり、職場の同僚との関係にも影響が出るかもしれません。

男性側にもPMSという病態があることを理解してもらうことは必要です。PMSの症状が強いときはどうしてほしいかなど、普段から話し合っておくのもいいでしょう。女性から男性の同僚にPMSの話をするのは少しハードルが高いかもしれませんので、生理痛やPMSに関する職場研修を開いて、男性にも参加してもらうのもいいかもしれません。

PMSはちょっとした軽い症状から勉強や仕事、人間関係に影響を及ぼすほどの強い症状まで様々です。生理前はいつものことだからと諦めずに、一度婦人科で相談してみてください。PMSの症状がなくなれば人生が変わるかもしれません。

婦人科医・医学博士
滋賀医科大学医学部医学科卒業。滋賀医科大学附属病院にて初期臨床研修を修了後、滋賀医科大学産科学婦人科学講座に入局。関連病院で研鑽を積みつつ、大学院にて子宮内膜症・子宮腺筋症の研究を行い医学博士号取得。現在は大阪駅に程近い茶屋町レディースクリニックにて生理痛や生理に伴う症状で困っている多くの患者の診療にあたっている。

症状や健康のお悩みについて
医師に直接相談できます

  • 24時間受付
  • 医師回答率99%以上

病気・症状名から記事を探す

その他
あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行

協力医師紹介

アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。

記事・セミナーの協力医師

Q&Aの協力医師

内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。

Q&A協力医師一覧へ

今すぐ医師に相談できます

  • 最短5分で回答

  • 平均5人が回答

  • 50以上の診療科の医師