「職場の先輩の声を聞くと吐き気」と悩む女性に精神科医が助言。正常な反応だが、時に誤作動を起こして…

  • 作成:2022/02/10

AskDoctorsに寄せられたお悩みをマンガで紹介し、医師からの回答を紹介する本シリーズ。今回ご紹介するのは、職場の先輩に対して拒絶反応が出てしまうという相談です。

堤 多可弘 監修
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷  副院長/精神科医・産業医
堤 多可弘 先生

この記事の目安時間は3分です

「職場の先輩の声を聞くと吐き気」と悩む女性に精神科医が助言。正常な反応だが、時に誤作動を起こして… 「職場の先輩の声を聞くと吐き気」と悩む女性に精神科医が助言。正常な反応だが、時に誤作動を起こして…

【今回のお悩み】
職場の特定の先輩に対して、身体が勝手に防衛反応というか拒絶反応をしてしまいます。
その人は当初からあまりいい噂がなく、「前に勤めていた人がその人が原因で鬱になって辞めた」などと聞かされていました。
人の噂や偏見で決めつけるのは良くないと思って聞き流していたのですが、やはりよくネチネチ言われました。それなのに本人は口だけで仕事をしていない、ミスが多い、業務をわかっていない、それが全て私に回ってくる、とストレスや不信感が募りました。

いつ何を言われるかという思いから、必要以上に関わらないといった態度に出てしまうようになりました。態度に出すのは絶対に良くない、普通に他の人と同じように接しないと、と思っても、無意識に関わりを拒絶してしまいます。先輩のことを考えただけで吐き気がして気持ち悪くなり、先輩人の名前を見たり遠くで話す声を聞いたりしただけでかなりの嫌悪感を抱きます。頭ではわかっていても身体が勝手に拒絶してしまうんです。

このような症状で当てはまりそうな病気はありますか? 受診するほどではないのでしょうか。(30代・女性)

医師の回答

拒絶反応は、交感神経がもたらす「防衛本能」

ご質問ありがとうございます。ある先輩=特定の状況に対してだけ拒絶反応が出てしまうのですね。こういったことは動物の本能から説明ができます 。

人間も含め動物には自律神経というものがあります。その名の通り、本人の意思に関係なく自律して働く神経です。その自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があります。

副交感神経は主にリラックスしているときに働きます。
一方、交感神経は【闘争か逃走】の神経とも言われ、活動をするとき、特に身の危険や恐怖を感じたときなどに強く働きます。

これは人間がまだ大自然の中でマンモスを追いかけていた、あるいは天敵に狙われていたころの名残です。マンモスを見つけたときは、狩りをするために闘争の準備を体が始めます。一方で天敵に狙われたときは、生き延びるために逃走の準備をします。この体の準備を司るのが交感神経です。

交感神経が強く働くと、いろいろなことが起きます。
心臓がバクバク、身体がこわばり、消化管の動きが鈍くなります(身の危険を感じているときは、食べ物を消化している場合ではないので)。

相談者さんは、この先輩に恐怖心を持っておられるのだと思います。その結果、交感神経が強く働き「身体の拒絶反応」が出ているものと思います。

交感神経が過剰になると、パニック症やうつ病に…

こういった「身体の拒絶反応」自体は動物として自然なことです。しかし、交感神経が強く働くことが過剰になると、やがてオーバーヒートしてしまいます。
オーバーヒートすると、何でもないときにも交感神経が誤作動を起こしてしまうようになります。ひどくなると過呼吸などを繰り返すパニック症等になりえます。

また、交感神経が常に活動してしまうと気が休まらず、不眠や気持ちの落ち込み等が起きてしまいます。これがひどくなるといわゆる「うつ状態」となってしまいます。

また、特定の状況に顕著な恐怖や不安を覚える疾患に「限局性恐怖症」というものがあります。

さまざまな症状に対してはお薬の治療などが有効な場合があります。
また、そもそもの原因である先輩との「付き合い方・距離の置き方」も重要になると思います。

そういった治療や「付き合い方・距離の置き方」のアドバイスのために医療機関を受診されることは有効だと思いますので、ぜひご検討ください。

弘前大学医学部卒業後、東京女子医科大学精神科で助教、非常勤講師を歴任。 現在はVISION PARTNERメンタルクリニック四谷の副院長とスタートアップへのアドバイザー業務を務めるとともに、企業や行政機関の産業医を10か所以上担当。ブログや著作、研修などを通じて、メンタルヘルスや健康経営、産業保健の情報発信も行っている。 共著に「企業はメンタルヘルスとどう向き合うか―経営戦略としての産業医 」(祥伝社新書)がある。

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