「更年期=生理が楽になる」とは限らない! 出血が増え、生理痛が増す人も。その原因と治療を婦人科医が解説。
- 作成:2022/03/30
更年期とは「閉経前の5年間と閉経後の5年間をあわせた10年間」のことを言います。この期間に女性ホルモンが不安定になって起こる更年期症状は、ほてり、イライラ、気分の落ち込み、肩こりや頭痛、だるさ、不眠などがよく知られます。更年期症状で生理痛というイメージはあまりないかもしれませんが、実は更年期になっても生理痛が軽くなるとは限りません。それはなぜか、婦人科医が解説します。
この記事の目安時間は3分です
更年期に生理の出血が増え、生理痛がひどくなる人もいる
女性ホルモンは常に一定の濃度ではなく、排卵や生理を起こすために1ヶ月の間で大きく変動します。この変動が規則正しく起こるため、毎月生理が起こるのです。個人差はありますが、だいたい45歳前後からこのホルモンの変動が不安定になることがあり、排卵が遅れたり起こらないこともあります。排卵が起こらなければ生理がなかなか来ないこともあります。排卵がなく生理もない状態が続くと、子宮内膜が少しずつ剥がれてしまい少量の出血がダラダラと続くことがあります。更年期においては生理が不順になりやすく、生理以外での出血の頻度が多くなるのはこのためです。
前述の通り、更年期は閉経の前後5年間を指しますが、生理痛や生理の出血量が必ずしも改善するとは限りません。閉経に向けて生理の量が徐々に少なくなる方は確かにおられます。生理の量が減ると生理痛も軽くなることが多いため、更年期になって生理痛が軽くなる可能性はあります。しかし、生理の量が徐々に増える方もまたおられます。生理の量が増えると生理痛も強くなることもあります。
更年期の女性で、特に異常はないのに生理痛がひどくなったり生理の量が増えたりする場合もありますが、子宮筋腫や子宮内膜症などが原因のこともあります。放置すればさらに症状がひどくなることもありますので、婦人科で診察を受けたほうがいいでしょう。
更年期症状の治療薬は、生理痛にあまり効かない
他の年代と同じように、更年期の女性も生理痛にはまず鎮痛剤を使います。鎮痛剤を内服しても効果がないのであれば、ピルや黄体ホルモン製剤を使います。ただし、40歳以上はピル(低用量ピル、低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤)の内服によって血栓症や脳梗塞などのリスクが上昇するため、注意が必要です。高血圧や肥満などがあればさらにリスクは上昇します。そういった方は血栓症や脳梗塞などのリスクがない黄体ホルモン製剤の内服や、子宮内に留置するミレーナ(子宮内黄体ホルモン放出システム)を使うこともあります。
更年期症状の治療にも女性ホルモンの薬を使いますが、生理痛に対してはあまり効果がありません。更年期症状もあり生理痛も強い方は、その症状に合わせて治療法を選択する必要があります。
閉経後の出血、腹痛は原因がさまざま。癌や肉腫の場合も
閉経というと「生理が起こらなくなること」と認識されている方は多いと思いますが、正確には「1年以上生理がない状態が続いた場合に、最後の生理があった時点」が閉経と定義されます。日本人の平均閉経年齢は50歳くらいですが、40歳代前半で閉経する方もいれば、50歳代後半まで生理がある方もいて、かなり個人差があります。
また、閉経後に出血する方もおられ、その多くは腟炎による出血です。女性ホルモンの分泌が低下すると腟の中が乾燥し、炎症が起こって出血することがあります。この場合は、腟の中に女性ホルモンの錠剤を1週間から2週間入れることにより改善します。
稀ではありますが子宮に癌ができて出血することがあります。子宮にできる癌は子宮頸癌と子宮体癌がありますが、どちらも出血が主な症状であり、初期に痛みがでることはほとんどありません。子宮頸癌のがん検診は健康診断でも行われていますが、子宮体癌の検査は通常、健康診断では行われていません。閉経後に出血がある場合には、早めに婦人科を受診して検査を受けるようにしてください。
下腹部に痛みが出たら、早めに婦人科を受診
やや大きな子宮筋腫がある方は、閉経後に子宮筋腫の部分に痛みを感じることがあります。子宮に流れる血液の量が低下することで起こると考えられています。また、子宮の癌や子宮肉腫という悪性の腫瘍ができることで痛みが出たり、卵巣に癌ができて下腹部に痛みが出たりすることもあります。
もちろん腸や他の臓器の痛みかもしれませんが、超音波(エコー)検査を行うことで癌などの可能性がないかどうかすぐに診察できますので、早めに婦人科を受診するようにしてください。
更年期になれば生理痛は必ずしも軽くなるとも限らず、さらにひどくなることもあります。なかには子宮筋腫や子宮内膜症などの病気が原因の場合もあり、手術が必要となることもあります。年齢に関係なく生理痛が強ければ治療が必要であり、年齢や症状によって治療法は違います。我慢せずに婦人科を受診し相談してみてください。
婦人科医・医学博士
滋賀医科大学医学部医学科卒業。滋賀医科大学附属病院にて初期臨床研修を修了後、滋賀医科大学産科学婦人科学講座に入局。関連病院で研鑽を積みつつ、大学院にて子宮内膜症・子宮腺筋症の研究を行い医学博士号取得。現在は大阪駅に程近い茶屋町レディースクリニックにて生理痛や生理に伴う症状で困っている多くの患者の診療にあたっている。
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