子どもの健康を守る母親ならば知っておきたい!子宮頸がんの現状とHPVワクチン再開

  • 作成:2022/04/26

HPVワクチンに関する正しい情報を提供する一般社団法人HPVについての情報を広く発信する会(通称みんパピ)を運営している、小児科医・新生児科医の今西洋介です。

今西 洋介 監修
 
今西 洋介 先生

この記事の目安時間は3分です

子どもの健康を守る母親ならば知っておきたい!子宮頸がんの現状とHPVワクチン再開

(画像素材:ピクスタ)

小児医療で注目されるニュースがありました。2021年11月12日、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの再開が決まりました。しかし、これは正確に言うと正しくない表現です。正しくはHPVワクチンの積極的勧奨を再開したです。

この言葉を初めて見られた方には非常に難しい表現と思われますが、HPVワクチンを積極的におすすめすることをやめていたけれど、再開することにしましたという意味合いになります。後述する「HPVワクチンの問題」は子育て世代の皆様にはもちろん、医療関係者の私たちにも大切なことを教えてくれました。

「マザーキラー」と呼ばれる子宮頸がんの現状

子宮頸がんは主にHPVウイルス感染を原因とした女性の子宮にできるがんですが、日本では毎年1万人が新たに子宮頸がんであると診断され、診断された患者さんの9割近くが子宮の摘出が必要になっています。

年間では3000人が亡くなり、計算すると一日あたり8人の女性が亡くなっていることになります。20-40代という働き世代や子育て世代で罹患する患者さんが大半を占めており、そのことがこの子宮頸がんを「マザーキラー」と呼ばせる理由です。

欧米諸国でのHPVワクチンの接種率が7~8割を認める中、日本のHPVワクチン接種率は1%以下です。なぜ欧米諸国と日本とでここまでのワクチン接種率の差が現れたのでしょうか。

HPVワクチン接種の積極的推奨が差し控えられた背景~世論に歪められた科学~

2000年代後半、「リボンムーブメント」のような若い女性が自分の健康を守ろうという気運が高まりました。その気運の中で2009年に2価ワクチンが承認され、2013年4月にHPVワクチンは定期接種となりました。しかし、同時期に「HPVワクチン接種後に一部の女子中学生に痺れや痛みなどの多彩な症状が現れた」という内容をマスメディアが大々的に報じました。これを受けて同年7月、厚生労働省はHPVワクチン接種の積極的勧奨を差し控える決断をしました。

その後、国内外で「多彩な症状」に関して様々な研究が行われました。有名なものとして、2015年に名古屋市立大学が万人の女性対象に行った「名古屋スタディ」があります。その結果、HPVワクチンを接種して問題となった24の症状全てが、ワクチンを打った人と打っていない人とで同じ頻度で起こっていることがわかりました。しかしこれを発表した名古屋市に抗議が殺到し、2016年には、その調査結果を撤回することになってしまったのです。それだけHPVワクチンに関する科学は発信しづらい世の中の雰囲気でした。

今こそ重要!医療従事者と一般の人々とのヘルスコミュニケーション

小児科医として勤務する中で、ほとんどの母親が上で述べたような2013年の「HPV問題」を知らないことに気づきました。つまり、あまりのHPVワクチン接種率の低さに「HPVワクチンは怖い」という母親よりも「HPVワクチンのことを知らない」母親が増えていたのです。

そうした状況を危惧して、ハーバード大学公衆衛生学の医師たちや国内の小児科医・産婦人科医合計10名で一般社団法人HPVについての情報を広く発信する会、通称みんパピを立ち上げ、ホームページで医療情報を解説し情報発信を行いました。それまでも厚生労働省や学会が出していた情報もありましたが、一般の方々にはその内容が専門的で難しく、なかなか情報が得にくいという声がありました。

そのため、私たちが啓発するなかで重要視したのは、難しい情報をなるべく簡単な言葉で伝えることです。難しい医療情報を難しく伝えることは簡単ですが、わかりやすい言葉で伝えることには技術が必要です。

人間なら誰でも健康でありたいと思うものです。健康な生活の維持を目指して、医療者と一般の方々がヘルスコミュニケーションを取っていく必要があります。

世論に歪められてしまったHPVワクチンのような例を繰り返さないためにも、医療従事者には科学的根拠(エビデンス)に基づいた情報をわかりやすい言葉で発信する力が求められています。そして、医療従事者の発信を一般の方々のほうでも上手に選択していくことが大事です。

様々な感染症が日々人々を脅かし、刻々と環境が変わっていく今、医師と一般の方々とで連携をとって、必要なときに必要な情報をお伝えできる体制を作っていくことが急務であるといえるでしょう。

小児科医/新生児科医
日本小児科学会専門医、日本周産期新生児専門医
日本小児科学会健やか親子21委員。大阪大学公衆衛生学博士課程在籍。講談社モーニング連載『コウノドリ』の漫画・ドラマの医療監修を務めた。m3(エムスリー)、Askdoctors、yahoo外部執筆者として公衆衛生学の視点から周産期医療の現状について発信。

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