まだしゃべらない、歩かない…うちの子の発達、大丈夫? 保護者の心配に、小児科医が「真っ先に疑う」意外なポイント

  • 作成:2022/09/25

AskDoctorsでは、子どもの病気やケアで親が悩みがちなポイントについて、小児科医の森戸やすみ先生に解説していただきます。連載第11回は「発達の遅れが気になる」がテーマ。「他の子に比べるとうちの子は…」と不安になっているママたちへ、森戸先生のアドバイスをお届けします。

森戸 やすみ 監修
どうかん山こどもクリニック 
森戸 やすみ 先生

この記事の目安時間は3分です

まだしゃべらない、歩かない…うちの子の発達、大丈夫? 保護者の心配に、小児科医が「真っ先に疑う」意外なポイント

言葉が遅いと思ったら、実は「聞こえ」が原因のことも

1歳前後になると、乳幼児健診やクリニックの外来で、「子どもが言葉を話しません」「言葉が出ないのは発達障害でしょうか?」などと不安を訴える保護者が増え始めます。なかなか言葉が出てこない子どもの保護者は、月齢の近い子どもが上手に話していたりするととても気になるもの。最近はSNSで他の子どもの様子を見ることができるので、よけい心配になってしまうのかもしれません

では、通常いつごろから話し始めるのでしょうか。日本でよく使われる「遠城寺式乳幼児分析発達検査」によると、1歳で意味のある言葉を1つ、1歳半で3つ言えることを指標としています。あくまでも目安と考えてください。

なかなか言葉が出てこないときに私たち小児科医が一番に疑うのは、「うまく聞こえていないかもしれない」ということ。落ち着きがなく、いうことを聞かないと思われていた子どもが、実は難聴気味で十分に聞こえていなかったというケースはよくあります。
新生児は全員、生後間もなく聴覚スクリーニングを行いますが、それをパスしていてもあとから聞こえなくなることもあります。例えば、妊娠中にお母さんがサイトメガロウイルスに感染していると、生まれたばかりは大丈夫でも進行性に聞こえなくなることがあります。

また、滲出性中耳炎のように痛みがなく、聞こえだけが悪くなるケースも。おたふく風邪の後遺症で片耳だけ難聴になると、逆側は聞こえていて本人はあまり自覚がないので、周囲に訴えることはあまりありません。子どもによっては「聞こえていないと怒られるかな…」などと気にして、聞こえてないことをごまかすこともあります。

ですから、言葉が遅い、あまりにも言うことを聞かないと思ったら、「耳が聞こえているかどうか」を確かめることが大事です。後ろから手を叩くとか、声をかけるとか、子どもから姿が見えない状態で音を出し、反応をみてみましょう。まったく反応しないなど「なにかおかしい」と感じたら、すぐに耳鼻咽喉科医を受診してください。

発達障害は、3歳を過ぎなければ診断できないことが多い

一方、聴覚には問題がないのになかなか言葉が出てこない場合は、発達になんらかの問題がある可能性が考えられます。例えば「表出性言語発達遅延」といって、人の話は理解しているのに言葉が出にくい場合があります。でも、2歳を過ぎた頃から急に喋り出すのが特徴で、その後の言語発達に影響はありません。

そのほかに発達障害で言葉が遅れていることもありますが、かなり重いケースを除き、1~2歳で診断をつけるのは難しいとされています。たとえば、落ち気がなく動き回る子どもが病的な多動なのか、ただ元気な子なのかは、3歳を過ぎなければ診断がつかない場合が多いのです。遅れが気になるときは、地域の保健センターや小児科医に相談をしてみましょう。

標準値の範囲内で成長していれば気にしない

「体が小さい」「やせている」といった体型を気にする保護者も少なくありません。逆に「大きい」や「太っている」と心配する方もいます。体型は一目でわかる上に、ほかのお子さんとも比べやすいので、不安になりますよね。
そんなときはまず、母子手帳に載っている「乳幼児身体発育曲線(成長曲線)」を確認してみましょう。これは同じ年齢、性別の子の身長や体重のデータを集めて割り出した標準値の範囲をグラフ化したもの。標準値の範囲(=帯部分)には、各月齢・年齢の94%の子どもが入るように示されています。グラフ上にご自分のお子さんの数値を記録してみて、正常範囲の帯に入っていれば、気にすることはありません。

なお、もともと小さく生まれた子は1年ほどで同じ月齢の子に追いつきますが、それでも小さめでも普通のこと。無理やり飲ませたり食べさせたりするのはよくありません。なかなか正常範囲に達しない場合には成長にかかわる病気の可能性を考えて、ホルモン検査をすることもあります。

ハイハイをせずに歩くようになっても大丈夫

歩き始める時期も、保護者の大きな関心事の一つ。先ほどお話しした母子健康手帳の身体発育曲線の右下部には「首すわり」「寝返り」「ひとり歩き」などができるようになる時期が、矢印とともに書いてあります。
歩き始めが遅いと判断する目安は1歳半。一方、ハイハイは時期もスタイルもバリエーションが大きいものです。後ろにばかり進む、高這いでなく摺り這いしかしないというケースは珍しくありません。ハイハイをせずにいきなり立つようになる子どももいます。

保護者からは「ハイハイをさせないと将来、運動機能に影響がありますか?」「腹這いを練習させた方がいいでしょうか?」などと質問されることもありますが、あまり心配はいりません。神経と筋肉の連携が発達してきたら自然にいろいろなことができるようになるので、練習させる必要はないのです。

1歳半と3歳の乳幼児健診は必ず受診を

母子健康手帳には、「バイバイ、コンニチハなどの身振りをしますか」「自分の名前が言えますか」といった月齢ごとの発達状況が記載され、保護者が記録するようになっています。それを発達の目安にするといいでしょう。ただ個人差もあるので、お子さんなりにできることが増え、体も大きくなっているなら気にせず、ゆったり構えてください。
また、発達を評価する上で大事な月齢には、各自治体が乳幼児健診を実施しています。とくに全自治体が行う1歳6カ月と3歳児健診は必ず受け、心配があれば当日小児科医や保健師に相談してみましょう。

1971年、東京生まれ。小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都内のどうかん山こどもクリニックに勤務。『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』(内外出版社)、『小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK』(内外出版社)など著書多数。二児の母。

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