花粉症の根本治療ができる!アレルゲン免疫療法とは?
- 作成:2025/02/26
花粉症シーズンを毎年憂鬱な気分で迎えており、薬を使って乗り切るしかないと考えている人も多いのではないでしょうか。 そんな花粉症を根本から治療できる可能性があるアレルゲン免疫療法という治療法についてご紹介します。
この記事の目安時間は6分です

アレルゲン免疫療法とは?
アレルゲン免疫療法とは、アレルギー疾患の原因となるアレルゲン(花粉症なら花粉のこと)がわずかに含まれる薬を体内に入れることで、アレルギー反応をやわらげる治療方法のことです。
普段、花粉症で処方される薬は、花粉症自体を治しているわけではなく、辛い症状をその時だけ抑える「対症療法」として使われています。
それに対し、「アレルゲン免疫療法」は根本的に花粉症を治すことが期待できる治療法です。
対症療法で症状が抑えられない人や、副作用が強く出る人などはアレルゲン免疫療法が適しているかもしれません。
アレルゲンを体内に入れる免疫療法自体は、実は100年以上の歴史があります。
従来は注射による投与しかありませんでしたが、今は舌下に投与するタイプ( 舌下錠剤)もできたため自宅でも治療できるようになりました。
舌下錠剤は、スギ花粉とダニによるアレルギーが保険適応となっています。
アレルゲン免疫療法のメリットとデメリット
メリット
- 対症療法で改善しなかった人にも 効果が期待できる
- 治療を終了した後も効果が持続し、対症療法の薬を減らすことが期待できる
- 鼻症状、眼症状など一部の症状だけでなく全身の症状が緩和される
- 花粉による小児アレルギー性鼻炎患者の場合は、その後の喘息発症の頻度が少なくなる可能性がある
デメリット
- 他の治療に比べて投与する部位(舌下なら口、喉、腹部、皮下なら注射部位)の痛みや違和感といった副作用が現れやすい
- アレルギー領域の専門的な知識、経験を持つ医師に実施が限られており、治療が受けられる医療機関が限られている
- 治療後すぐに効果がある治療ではない
- 治療期間が3年以上と長期間になることが多い
- 稀にアナフィラキシーが起こる可能性がある
免疫療法(アレルゲン免疫療法)の種類について
アレルゲン免疫療法には、舌下免疫療法と皮下免疫療法の2種類があります。
舌下免疫療法
花粉症の原因となる物質(スギ花粉症の場合はスギ花粉の成分)が入った薬を舌の下から取り入れ、毎日少しずつ体に慣れさせていく治療方法です。
徐々に花粉でアレルギー反応が起こりにくくなっていきます。
舌の下から取り込まれるので、 体に薬が吸収されるときにも花粉症の症状は現れにくいとされています。
最近の研究では、この治療を3年間続けると、2年間は花粉症の症状を抑えられるくらいの効果が得られる人が8割程度とされています。
また、5歳以上の子どもに関しても有効性が確認されています。5歳以上で舌の下に錠剤を1分間置き続けることができる場合は、子どもでもアレルゲン免疫療法を受けることができます。
治療の流れ
問診と血液検査、または皮膚テストでアレルギーの原因を確認します。
治療は1日1回舌下に薬剤を1~2分置いた後に飲み込みます。
初めて内服する際は副作用の確認のために医療機関で行いますが、次の日からは自宅で内服を行い、徐々に薬剤を増量していきます。
治療は2年以上、3~5年が推奨されます。
薬を飲む前後2時間は激しい運動やお風呂、飲酒は避ける必要があります。
妊娠中の安全性は確認されていません。治療によるメリットが危険性を上回ると医師が判断した場合のみ、慎重に治療を行います。
皮下免疫療法
アレルギーの原因となる物質が入った薬を錠剤ではなく皮下注射で取り入れ、少しずつ身体に慣れさせていく治療方法です。
効果が高い治療ですが、舌下免疫療法と比べてアナフィラキシーという副作用が現れやすいと言われています。
スギ花粉では、7割程度の人に効果が現れたと報告されています。
効果が現れた人のうち、3年以上治療を続けた人の 8割~9割は、治療終了後4~5年が経過しても治療の効果が続いているそうです。
自宅で皮下注射はできないため、1カ月に1~数回程度、 医療機関に通院する必要があります。
もし治療の途中で妊娠をしても、治療時期によっては治療を継続できることが分かっています。
治療の流れ
血液検査や皮内テストでアレルギーの原因を確かめた後、薄く希釈したエキスを少量から注射します。
最初は週1回から行って、少しずつ量を増やし、濃度を高くしていきます。
治療に効果のある濃度になったら注射の間隔を開けて、2週に1回に、そして最終的には月1回に継続していきます。
効果が出るまでに約3カ月かかります。
効果を維持するためには最低2年、可能であれば3年以上続ける必要があるとされています。
治療対象
アレルギーの診断が正確にされ、症状も現れている場合が治療の対象となります。
特に、花粉症症状によって生活に支障が出ており、根本的に花粉症をなくしたいと思っている人は一度医療機関に相談してみてもよいかもしれません。
なお下記に該当する場合は、対象外となりますのでご注意ください。
- 重い気管支喘息を持っている方
- 治療開始時に妊娠中、授乳中の方
- がんや自己免疫疾患などの治療中の方
実施の時期
アレルゲン免疫療法はいつでも始められるわけではなく、花粉症のシーズンが終わり、症状も少し落ち着いた6月以降に始められます。効果が少しずつ出るのに3カ月はかかるため、次の花粉症シーズンに向けて前年のうちに開始するといいでしょう。
アレルゲン免疫療法の治療期間の長さを聞くと驚くかもしれません。
しかし、年単位で正しく治療が継続されると、アレルギー体質を改善し、治療終了後も長く症状をおさえる等、大きな効果が発揮されると考えられています。
花粉症が自然に治ることはほとんどないため、症状が重い人などは治療方法の1つとして知っておくと良いでしょう。
スギ花粉の舌下免疫療法は、6月から開始できる医療機関が多いです。
次のシーズンに向けて相談してみてくださいね。
参考文献:
花粉症環境保健マニュアル2022
日本アレルギー学会スギ花粉症におけるアレルゲン免疫療法の手引き
アレルギーポータル
アレルギー性鼻炎ガイド2021年版
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