花粉症の最新治療!手術と抗体治療ってどんな治療?
- 作成:2025/02/26
花粉症の対症療法やアレルゲン免疫療法はわかったけれど、今まさに症状が改善しないで困っている人もいるのではないでしょうか? 今回は、そうした場合にも効果が期待できる最新の花粉症対策、「花粉症手術」と「抗体治療」についてご紹介します。
この記事の目安時間は6分です

花粉症手術について
症状が重く、薬でもコントロールしきれない場合は、手術という選択肢があります。鼻詰まりに関わる「下甲介(かこうかい)粘膜」や、鼻水とくしゃみの原因である「後鼻神経」の反応などを抑えるための手術です。
どの手術を行うかは症状と重症度などによって医師が判断します。
耳鼻咽喉科、もしくは頭頸部外科で相談しましょう。
スギ花粉症の場合は、花粉が飛散する前の10月~1月ごろが手術に適していると言われています。
花粉症手術のメリット・デメリット
手術の効果は個人差があります。
メリット・デメリットを知ったうえで実施を検討することをおすすめします。
また、手術をしていったんは花粉症の症状が治まっても、再発する可能性があることは知っておくとよいでしょう。
【花粉症手術のメリット】
- 内服薬では効果の出にくい重症例に対しても効果が期待できる
- 薬を飲まずに、もしくは少ない量で花粉症時期を過ごせる可能性がある
- 手術の内容によっては入院せず、日帰りできることもある
【花粉症手術のデメリット】
- アレルギーを根本的に治療するものではない
- 鼻の症状にしか効果がない
- 鼻の形状によって効果に個人差がある
- 手術による効果が短く、再発することもある
花粉症にはどんな手術をする?
花粉症の鼻の手術は大きく分けて3つあります。
鼻粘膜変性手術(レーザー手術)
下甲介粘膜焼灼術(アルゴンガス凝固術・レーザー手術)といい、炭酸ガスレーザーなどを使って鼻の中の粘膜を浅く焼く方法です。
鼻づまりに対して最も一般的に行われます。
花粉に反応しやすい粘膜を焼き、花粉に対して反応を起こしにくくします。粘膜が縮小することで鼻腔の空間が増え、鼻の通りがよくなる(鼻詰まりが減る)効果もあります。
入院せずに日帰りで終えられる医療機関も少なくありません。ただ、効果がいつまでも続くわけではなく、数年で元の状態に戻る人もいます。
後鼻神経切断術
鼻水がひどい場合や、レーザー治療が効かなかった場合に行われる新しい手術です。
鼻水を出す神経とくしゃみを出す神経を、内視鏡を使って切断することで症状を軽くする効果が見込めます。
従来の神経切断手術よりも体への負担が少なく、高い効果が期待できるとされています。
この手術は入院が必要です。
鼻腔形態改善手術
主に鼻の構造を原因として、鼻づまりなどの症状があり、通常の治療では治らない場合に行う手術です。
この手術には「鼻中隔矯正術」と「粘膜下下鼻甲介骨手術」があります。
鼻中隔矯正術は、鼻の中を左右に隔てている「鼻中隔」が曲がっていることで症状がある場合に、手術で最小限の骨を切除することで改善を図ります。粘膜下下鼻甲介骨切除術は、鼻の中の「下鼻甲介」にある骨を切除することで、鼻の通りを良くします。
基本は入院が必要ですが、日帰り手術が可能な場合もあります。
合併症はあるの?
治療当日から2~3日は鼻の粘膜が腫れて一時的に鼻づまりや鼻水の悪化、軽い出血などが起こることがあります。
かさぶたができることがありますが、無理に取ると出血する可能性があるのでかさぶたは取らないようにしましょう。
術後2~3日は長風呂、飲酒、激しい運動を避けたほうが良いとされています。
重い花粉症の人向けの「抗体療法」とは?
手術以外に、抗体療法による新しい治療も注目されています。
従来の薬は科学的に合成されたものですが、抗体療法で使う薬は体内のタンパク質を応用して作られた「生物学的製剤」です。花粉症の治療では、アレルギー反応を引き起こす物質「IgE」に対抗する「抗IgE抗体」というたんぱく質を薬にした「抗IgE抗体製剤」を使います。抗IgE抗体製剤はIgEに結合し、IgEがアレルギー反応を起こそうとするはたらきを阻みます。その結果、くしゃみや鼻水、目のかゆみといった症状が抑えられるのです。
抗IgE抗体製剤は注射によって投与します。
時間をかけてアレルギー症状を根本的に改善するアレルゲン免疫療法と異なり、抗体療法は対症療法です。
また、抗体療法はだれでも受けられるものではありません。
通常の花粉症の治療法では十分な効果が得られない重症、または最重症の人に限った治療法です。
【治療対象】
- 12歳以上
- 体重が20kg~150kg
- スギ花粉症の重症・または最重症
- 内服や点鼻薬の治療を1週間以上行っても効果がなかった場合
- スギ花粉抗原の特異的IgE抗体がクラス3以上
- 血液中の総IgE値が30~1500IU/mlの範囲
抗体療法のメリット・デメリット
【メリット】
- これまでの治療法が効かなかった人への治療効果
- 1回の注射で効果が約1カ月持続するため、薬を投与する頻度が少なくてよい
【デメリット】
- 薬の価格が高い
- 治療開始のために通院が必要
抗体療法の治療内容
2週間または4週間ごとに医療機関で皮下注射をします。
体重や血液検査の結果によって、1回あたりの投与量や投与間隔が異なります。
投与の時期は、スギ花粉が飛散している2月~5月、特に花粉症症状が出始めた頃に開始するのが望ましいとされています。
副作用は?
注射を打った部位に腫れや発赤、かゆみが出る可能性があります。
人によってはめまいや疲労、失神、眠気が現れるため、自動車の運転や機械操作を行う場合は注意が必要です。
また、寄生虫感染に対する防衛機能があるIgEの働きを抑制するので、寄生虫感染のリスクが高い地域へ旅行する場合には主治医に相談することがすすめられています。
注射を打ったあと、気管支のけいれんや失神、全身のかゆみなどが現れた場合は、アナフィラキシーの可能性があります。
医師や看護師の指示に従って対応してください。
自費診療はおすすめできる?
さて、ここまで紹介してきた治療法のほかに、自費診療(自由診療)で行われている花粉症の治療もあります。例えば、 ステロイドなど免疫抑制剤の注射が挙げられます。
なぜこれらが自費診療なのかというと、花粉症に対する効果を国が認めていないからです。
特にステロイドの筋肉注射は副作用が強く、注意が必要です。
保険診療と自由診療は原則として併用することができません。
自由診療の内容によっては非常に高額になる場合もあります。 もし興味がある場合には、どういった注意点があるのか、金額はいくらになるのかといったことを医師に確認する必要があります。
参考文献:
日本耳鼻咽頭科頭頸部外科学会 花粉症重症化ゼロ作戦
日本耳鼻咽頭科頭頸部外科学会 花粉症の治療法最前線
ノバルティスファーマ 患者さん向けお薬情報
日本アレルギー学会 アレルギー総合診療のための分子標的治療の手引き
オマリズマブ最適使用推進ガイドライン(季節性アレルギー性鼻炎)
関連するQ&A
関連する記事
このトピック・症状に関連する、実際の医師相談事例はこちら
病気・症状名から記事を探す
- あ行
- か行
- さ行
-
- 災害
- 再放送
- 子宮外妊娠
- 子宮筋腫
- 子宮頸がん
- 子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん
- 子宮頸がん検診・検査
- 子宮頸がんの症状
- 子宮頸がんのリスク・予防
- 子宮内膜症
- 脂肪肝
- 手術
- 出産後の症状・悩み
- 出産準備・入院
- 食事・授乳・ミルク
- 食欲
- 心臓病
- 自閉症
- 女性
- 自律神経失調症
- 腎炎・腎盂炎
- じんましん(蕁麻疹)
- 膵臓がん
- 睡眠
- 髄膜炎
- 頭痛薬、副作用
- 性器の異常・痛み
- 性器ヘルペス
- 性交痛
- 成長(身長・体重など)
- 性病検査
- 性欲
- 生理痛(生理・月経の痛み)
- 生理と薬(ピルなど)
- 生理不順・遅れ(月経不順)
- 摂食障害
- 切迫早産
- 切迫流産
- セミナー・動画
- 前立腺
- その他
- その他アルコール・薬物依存の悩み
- その他胃の症状・悩み
- その他うつの病気・症状
- その他エイズ・HIVの悩み
- その他肝臓の病気
- その他外傷・怪我・やけどの悩み
- その他心の病気の悩み
- その他子宮頸がんの悩み
- その他子宮体がんの悩み
- その他子宮の病気・症状
- その他出産に関する悩み
- その他腫瘍の悩み
- その他消化器の症状・悩み
- その他腎臓の病気・症状
- その他生理の悩み・症状
- その他臓器の病気・症状
- その他皮膚の病気・症状
- その他卵巣がんの悩み
- その他卵巣の病気
- その他流産の症状・悩み
- た行
- な行
- は行
- ま行
- や行
- ら行
協力医師紹介
アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。
記事・セミナーの協力医師
-
白月 遼 先生
患者目線のクリニック
-
森戸 やすみ 先生
どうかん山こどもクリニック
-
法村 尚子 先生
高松赤十字病院
-
横山 啓太郎 先生
慈恵医大晴海トリトンクリニック
-
堤 多可弘 先生
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷
-
平野井 啓一 先生
株式会社メディカル・マジック・ジャパン、平野井労働衛生コンサルタント事務所
Q&Aの協力医師
内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。