尿酸は、プリン体という物質が体内で代謝されてできる老廃物です。

プリン体には、体内で自然にできる「内因性プリン体」と、食品から摂取する「外因性プリン体」があり、前者が80%程度、後者が20%程度といわれています。

内因性プリン体は、遺伝子をつくるDNAや、その情報を伝えるRNAといった物質が分解されることで生じます。

外因性プリン体は、レバーや魚の干物などに多く含まれています。

健康な人の体では、1日に約700mgの尿酸が作られ、ほぼ同じ量が尿や便として体外に排泄されます。

その結果、体内には常に一定量の尿酸が保たれており、成人男性で約1200mg、女性では約600mgとされています。

尿酸には、体内の細胞を守る抗酸化作用があるともいわれていますが、過剰になると関節や腎臓などに悪影響を及ぼすため、適切にコントロールすることが大切です。

痛風発作の痛みはとにかく激しいことで知られ、“風が吹いても痛む”ことから「痛風」という名称がつけられたという説があります。

典型的には夜中、足の親指のつけ根などの関節が突然腫れて熱をもち、ズキズキと痛み始めます。

寝ていても目を覚ますほどの痛みで、「息をするのもつらい」「どこかにぶつけて骨折したのだろうか」と思う人もいるほどです。

時には発熱や悪寒、だるさが伴う人もいます。

治療をせずにいると痛みは2～3日続き、靴を履くことさえ困難になる場合があります。

その後、痛みは1～2週間で消えていきますが、適切な治療をしなければ再発を繰り返すことがあります。

尿酸値が上がる原因は「遺伝的要因」と「環境要因」に大別されます。

遺伝的要因はさらに2つのタイプに分けられます。

1. 1.非常にまれで、尿酸値に強い影響を及ぼす遺伝子変異
2. 2.頻度は高いが、尿酸値への影響が小さい遺伝子変異

このうち①は尿酸を作りすぎたり、うまく排泄できなかったりするなど大きな影響を与えますが、ほとんどの人は該当しません。

②は尿酸を排泄する腎臓や消化管のはたらきに影響を及ぼすとされています。

尿酸値を上昇させる影響は限定的ですが、比較的よく見られる遺伝的要因です。

環境要因は、日々の食事や飲酒、運動など日常習慣です。プリン体の多い食品やアルコール飲料の摂取が多かったり、日常的に激しい運動をしていたりすると尿酸値が上がりやすくなります。

これらとは別に、腎機能が低下していると尿酸の排泄がうまくいかなくなるほか、血液の病気やがん、一部の薬の副作用で尿酸値が上がることもあります。

高尿酸血症ただ一つだけで、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管病のリスクが上昇するとは考えられていません。

しかし、高尿酸血症とメタボリックシンドローム(肥満、高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病)は高率に合併することが知られています。

それら生活習慣病を合併した結果、重大な心血管病を起こすリスクが上昇します。

つまり、生活習慣病を有する患者さんは高尿酸血症にも注意を要する必要があります。

また、女性(特に閉経後)は尿酸値が基準値以下であったとしても生活習慣病を合併すると心血管病のリスクがより上昇しやすいためさらなる注意が必要です。

内科（一般内科、腎臓内科、循環器内科など）を受診するとよいでしょう。

日本痛風・尿酸核酸学会では、痛風や高尿酸血症の専門知識を持った「痛風医」を認定しており、同学会のホームページに痛風医のリストが掲載されているため、参考にされるのもいいでしょう（https://www.tukaku.jp/society/list.html）。

ただ、高尿酸血症の治療は長期にわたり、定期的な通院が必要になるため、自宅から通いやすい医療機関を選ぶことが大切です。

現在、痛風の治療で通院している患者数は約130万人で、そのうち95％は男性です（※）。

痛風患者に男性が圧倒的に多い理由は、ホルモンにあります。

女性ホルモン（エストロゲン）は、腎臓で尿酸を出し入れするタンパク質（トランスポーター）に影響を与え、尿酸の排泄を促す作用を持っています。

そのため、女性は尿酸値が低く、高尿酸血症になりにくいと考えられています。

ただ、女性も痛風と無縁というわけではありません。

閉経を迎えると女性ホルモンが減少し、尿酸値が上がりやすくなるので、食事や飲酒などの生活習慣には注意が必要です。

※厚生労働省 令和4年国民生活基礎調査より
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/06.pdf