「症状がないから放置」は危険 数年後に待ち受けるリスク

  • 作成:2025/06/02

健康診断等で尿酸値が高いという結果が出ても、症状がないからと放置されている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、尿酸値が7.0mg/dLを越える状態が続くと、突然、痛風発作という、歩くこともままならないほど激しい関節の痛みが起こる危険性が高まります。本記事では、尿酸とはどういうものなのかや、尿酸値が高い状態が続くと体の中で何が起こるのかについて紹介いたします。

末松 哲郎 監修
末松内科循環器科医院 院長
末松 哲郎 先生

この記事の目安時間は6分です

数年後に待ち受けるリスク

尿酸値が「7.0 mg/dL」を超えるとどうなる?

健康診断の結果などで、「尿酸値(血清尿酸値)」という項目をご覧になられたことはないでしょうか。尿酸値は、血液中の「尿酸」の濃度を表すものですが、「尿酸」と聞いて、すぐにピンと来る人は少ないかもしれません。

尿酸は細胞の核にある「プリン体」という物質が体内で分解、代謝された際にできる老廃物です。どんな人の体内にも存在し、血液に溶けて運ばれ、尿や便と一緒に排泄されます。尿酸の原料になるプリン体を過剰に摂取したり、体内で尿酸が過剰に作られ過ぎたり、尿酸がうまく排泄されなかったりすると、尿酸値が高くなります。通常7.0 mg/dLを越えると、尿酸が血液の中に溶けきれなくなって結晶化し、尿酸一ナトリウム血症=いわゆる「尿酸結晶」ができます。この尿酸値が7.0 mg/dLを超えた状態を「高尿酸血症」と言います。

尿酸値が高いだけでは、自覚症状はありません。しかし、高尿酸血症が長く続くと、尿酸結晶が関節などにたまっていきます。関節にたまった尿酸結晶が運動などをきっかけにはがれ落ちたり、尿酸値が急激に上昇して尿酸結晶が新たに生じたりすると、それを白血球が異物とみなして攻撃し、炎症が起こります。すると、突然関節が腫れて激しく痛む「痛風発作」が起こります。痛風発作の痛みは発症後24時間以内が最も強く、2〜3日かけて軽快してゆくことが多いのですが、1週間が経過してもなお痛みが残る場合もあります。

痛風発作が起こる部位は足の親指のつけ根がもっとも多く、ほかに足関節、足の甲、アキレス腱の周辺、膝関節、手関節などでも起こります。

痛風結節、尿路結石、慢性腎臓病…痛風発作だけではない高尿酸血症の影響

高尿酸血症によって起こるのは痛風発作だけではありません。痛風発作がおさまっても治療をせずに尿酸値が高いままの状態が続くと、痛風発作の再発を繰り返すだけでなく、10年ほどたつと尿酸結晶がたまってコブのように腫れる「痛風結節」ができることもあります。

痛風結節は、関節腔、腱組織、耳軟骨、腎臓などにもできることがあります。一般的に皮下に痛風結節ができただけでは痛みはないものの、進行すると炎症を起こして痛みを感じることもあります。関節に痛風結節ができたまま放置すると、変形性関節症を引き起こす可能性があります。

腎臓に尿酸結晶がたまったり痛風結節ができたりすると、腎機能が低下して慢性腎臓病(CKD)を合併するリスクが高まります。CKDになると尿酸を排出しにくくなり、ますます腎臓に尿酸結晶がたまりやすくなるという悪循環に陥ってしまいます。
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さらに、腎臓を含めて尿管、膀胱、尿道といった尿の通り道(尿路)に尿酸結晶がたまると、結晶が石のように固まって「尿路結石」になることがあります。この結石が尿管などの狭い部分に嵌頓(かんとん:はさまって管を詰めてしまうこと)すると、突然の激痛に見舞われます。場合によっては水腎症や複雑性尿路感染症、急性腎不全などのより重篤な病態に陥ってしまうこともあります。

症状がなくても放置は危険。命に関わる合併症も

高尿酸血症は、一般的に痛風発作が起こるまで自覚症状を伴いません。そのため、健康診断等で、高尿酸血症が見つかっても放置する方も多いかもしれません。

しかし、高尿酸血症は自然に改善することは稀で、痛風発作は突然起こります。痛風発作のリスクは尿酸値が高いほど高まります。台湾のコホート研究では、5年以内に痛風発作を起こす人は血清尿酸値7.0~7.9mg/dLで10.8%、8.0~8.9mg/dLで27.7%、9.0mg/dL以上になると61.1%と報告されています。(J Rheumatol. 2000;27:1501-1505.)

また、高尿酸血症の人は高血圧や糖尿病、脂質異常症、肥満などの生活習慣病を合併しやすいこともわかっています。これらの生活習慣病も高尿酸血症と同様、自覚症状が乏しいので放置されがちですが、やがて動脈硬化を引き起こし、突然、狭心症や心筋梗塞といった心血管疾患、脳出血や脳梗塞などの脳血管疾患につながり、ときには命に関わることもあります。

高尿酸血症は、自覚症状で把握できないからこそ、健康診断等で尿酸値が7.0mg/dLを超えていることがわかった場合は「高尿酸血症だと把握できてよかった」と思い、医師に相談することをおすすめします。薬物治療が開始されるか否かは病態により様々ですが、少なくとも医師のもとで生活指導を受ける必要があります。

非常に重要なポイントとして、女性の場合には血清尿酸値が7.0mg/dL以下であっても、血清尿酸値の上昇とともに生活習慣病のリスクが高くなります。高血圧・虚血性心疾患・糖尿病・メタボリックシンドロームなどの基礎疾患が存在する場合には早期からの治療介入を要する場合があるので、該当される方はお早目の相談をおすすめします。

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