膀胱炎が女性に多い理由、セックスで膀胱炎になるのか?クラビットなどの4種類の治療薬も解説

  • 作成:2017/01/16

膀胱炎は、尿道が短い女性に起きやすいことで知られています。体外の菌がさかのぼって、膀胱に到達しやすいためです。膀胱炎の治療薬は、基本的にクラビットやフロモックスという抗生物質を使います。副作用も含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

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膀胱炎の最多原因は大腸菌

目次

膀胱炎の最多原因は大腸菌

「膀胱」とは、尿を溜めておく筋肉の袋のことです。膀胱炎は、膣や肛門に存在する菌が尿道を通って膀胱内で異常に増えてしまい感染を起こしている状態です。原因となる菌で最も多いものは大腸菌で、全体の80%以上を占めます。他にも、肺炎桿菌(はいえんかんきん)、黄色ブドウ球菌、セラチア菌、腸球菌などと呼ばれる菌も原因となりえます。

膀胱を含め、人間の体の中には常に様々な細菌が入ってきていますが、通常は人間の持つ免疫力によって。これらの細菌は無力化されています。尿道も同様で、尿道に入り込んだ細菌は、体内に向かう途中で、尿と共に排出されたり、免疫細胞に殺されたりするので普通は入り込めず症状が起きません。

しかし、何らかの理由で抵抗力が落ちていたり、長時間体が冷えてしまい十分な免疫力を発揮できずにいたりすると、細菌が繁殖し、人間の持つ免疫力では対処しきれないほど広がってしまうのです。細菌の繁殖が膀胱で起こっているのが膀胱炎で、体の免疫に期待するのでなく、水分を多く摂取し細菌を尿と共に排出させたり、抗生剤を飲んで直接殺菌したりする治療が必要になってきます。

一般的な膀胱炎は細菌感染が主な原因ですが、ウィルスが原因になる「出血性膀胱炎」や明らかな感染が見つからない「間質性膀胱炎」(後述)などもあります。

セックスで膀胱炎になるのか?

セックス(性交)が原因で膀胱炎になることがあります。「急性膀胱炎(一般的に膀胱炎といわれています)」といい、腟へ付着した細菌がすぐ近くの尿道口へ付着し、尿道を通り膀胱内へ侵入することが原因で起こります。急性膀胱炎の原因となる細菌のほとんどが、大腸菌であるといわれています。大腸菌は、肛門とその周辺に存在している常在菌です。そのため、肛門から数センチしか離れていない腟そして尿道口に付着しやすくなっています。男性のペニスとその周辺、そして女性の腟とその周辺、どちらにも細菌が多く存在していますが、セックスの行為によって、更に細菌が付着し繁殖しやすく、膀胱炎になりやすい環境となっているのです。膀胱炎の症状は、セックスの数日後あるいは数週間してから出てきます。

つぎに「間質性膀胱炎」という特殊な膀胱炎もあります。「間質性膀胱炎」は通常の膀胱炎と異なり、セックスの際の性交痛があり、内視鏡で調べても異常が見られないのに尿が溜まると強い痛みを感じ、尿意切迫感といって強い尿意が感じられる、という3つの特徴をもっています。放置しておくと、痛みが広範囲(骨盤や太腿など)に広がり、腟に触れるだけでも痛みを感じてきます。膀胱や尿道そのものに病気がある可能性もありますので、通常の膀胱炎の症状が出ていなくても、性交痛があり尿意が強い場合には、泌尿科の診断を受けてください。

膀胱炎が女性に多い理由

膀胱炎は女性に多く、一生のうちに1回は経験するとも言われています。その理由は、前でも少しふれましたが、女性の方が男性に比べて尿道の長さが短く、約3cmから5cmなので、細菌が容易に膀胱の中に侵入しやすいからです。また、女性の尿道は大腸菌やその他の菌が存在する肛門、膣との距離が近いため、細菌が膀胱に入りやすく膀胱炎になりやすいと言われています。

膀胱炎は、月経、性交、妊娠、排便時の不衛生、冷えなどがきっかけとなって起こりやすく、シャワー式トイレも原因になります。排尿を我慢することも膀胱内に細菌が停滞しやすくなるため良くないと言われています。大学や会社などでトイレに行くのを後回しにしたり、がまんしてしまう女性は要注意です。

別の病気や尿路系の異常でも起こる

単純に大腸菌などの細菌が尿道を通して膀胱内で異常増殖をして膀胱炎を引き起こすだけでなく、尿路系(膀胱や尿が通る管)に異常があったり、もともと別の病気がある人は膀胱炎の症状を起こしやすいと言われています。

例えば、膀胱や尿道の結石やがんによって尿がとどこおりやすい状態や、尿道が狭くなっていて、尿の流れが悪い状態では通常より膀胱炎を発症しやすくなります。尿路に挿入される医療用カテーテルやその他の器具によって膀胱内に細菌が入りやすくなり、膀胱炎が起きる場合もあります。

病気が関係する可能性としては、糖尿病や血液疾患などの原疾患があり抵抗力が弱い人が考えられるほか、膠原病や臓器移植後に、免疫反応をおさえる「ステロイド」という薬や免疫抑制剤の内服をしている人、末期の腎不全で透析をしている人は膀胱炎を起こしやすいと考えられています。

男性の場合は精密検査のわけは?

膀胱炎はほとんどが女性で、男性が膀胱炎を起こすことは珍しいため、男性の場合には、前立腺肥大症やがんなどの異常がないか精密検査を行うことが多いです。膀胱炎は、男性がなった場合、女性よりも注意を払う必要がある病気といえます。

膀胱炎の薬 クラビット、フロモックス

膀胱炎の薬 クラビットは使う?

膀胱炎は細菌などが膀胱内に入り込んで繁殖する病気です。そのため、膀胱炎の治療には細菌を殺す「抗生物質」が使われます。膀胱炎の治療に使われる治療薬の中でもニューキノロン系の「クラビット」は死滅させることのできる細菌の種類が多く強力です。クラビットは、細菌のDNA複製を妨げることで増殖を抑えて、死滅させることで効果を発揮します。非常に様々な細菌に対して効果があるため、病院で最初に処方されることの多い治療薬です。処方箋には成分名である「レボフロキサシン水和物」と書かれていることもありますが、基本的には同じものだと思って下さい。クラビットは膀胱炎以外では、皮膚感染症や肺炎、腸炎などの感染症治療に使われています。

気になるのが副作用です。クラビットの服用による副作用は、主に発疹・蕁麻疹(じんましん)・下痢・吐き気・めまいなどですが、日光で皮膚が赤くなる「光線過敏症」を発症することもあります。内服後に体に異常を感じた場合には、薬による副作用が考えられるので使用を止めて、医師に相談して下さい。安全性の問題から、妊娠中の女性や子供に使うことは基本的にありません。腎臓病や高齢の方が使用する場合には、薬の排泄や代謝が低下しているため副作用が出やすいので注意が必要です。重篤な副作用としては、痙攣(けいれん)・アキレス腱障害・低血糖・不整脈などがあります。また鎮痛剤と併用すると痙攣を起こすなど、飲み合わせに注意しなければいけない薬剤もあるので、医師から処方された薬だけ内服するようにしましょう。

膀胱炎の薬 フロモックスは使う?

クラビットでほとんどの場合は改善することが多いですが、症状が良くならない場合には別の抗生物質を試します。病院にもよりますが、セフェム系の「フロモックス」も使われる事が多い抗生物質です。フロモックスは、細菌の表皮にあたる「細胞壁」という部分の合成を阻害するので、細胞壁を作れなくなった細菌は構造を保てなくって死滅します。メカニズムは違いますが、フロモックスもクラビット同様、比較的多くの細菌に効果があり、副作用も少なく、妊娠中の女性や子供にも比較的使いやすい抗生物質です。成分名は「セフカペンピボキシル塩酸塩」となっており、処方箋にもそちらが大きく記載されることもあります。

副作用は少ないですが、これもクラビット同様に発疹や下痢・軟便が出ることがあります。特に子供は下痢や軟便が起こりやすく、水分が失われやすいので水分補給には気をつけましょう。また、先にクラビットを使っていて効かなくなってフロモックスを使い始めたという場合には、かなり長期に渡って抗生物質を使用していることになるため、「耐性菌(薬が効かない菌)」の発現により、感染症が治りにくくなったり、別の感染症を発症する可能性があるので注意が必要です。

サワシリンを使う場合も

ニューキノロン系やセフェム系の抗生物質でも治らなかったり、アレルギーや副作用が出て使えなかったりする場合にはペニシリン系の薬を使うこともあります。特に「サワシリン」はペニシリン系治療薬としてよく使われる薬です。ただし、ペニシリン系の抗生物質は非常に古くから疲れているため、耐性をもってしまっている細菌も多く、思うように効かないこともあるので注意が必要です。副作用は抗生物質に多い下痢や発疹ですが、高齢者や長期の服用の場合、腎不全・大腸炎・血液障害・皮膚障害などが起こる場合があるので、初期症状に気をつけて下さい。

「バクタ」とはどんなもの?

また、ペニシリン系を使わない場合にはST合剤である「バクタ」などと呼ばれる薬を使うこともあります。ST合剤は「サルファ薬」と「トリメトプリム」という2つの薬の成分が含まれています。他の3種類の抗生物質とは作用の仕方が違うため、なかなか殺菌できなかった細菌を殺すことができる可能性があります。この薬は強いアレルギー反応が出ることも多く、アナフィラキシーショックなどの危険性もあります。

ここで挙げたのは比較的効果の高い一般的な抗生物質ですが、抗生物質を何種類も投与する前に膀胱炎の原因となる細菌を特定することが大事です。病院で尿を提出すれば、尿中の細菌を培養し、どの抗生物質が効くかということまで分かります。ただし、この検査は数日間から1週間かかるので、それまでに処方された抗生物質でほとんどの膀胱炎は治ります。不安があれば、医師に確認してみましょう。

膀胱炎の治療薬についてご紹介しました。膀胱炎の治療に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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