糖尿病による足の壊疽、壊死の原因、治療、フットケアによる予防

  • 作成:2016/05/30

糖尿病では、体の免疫機能が低下しているために、足の組織が壊死を起こして、「壊疽」と呼ばれる状態となることがあります。どのような原因で起こるのかや、治療、壊疽を防ぐためのフットケアの方法を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

この記事の目安時間は3分です

糖尿病で足が壊死する?

糖尿病では感染症にかかりやすい?

人間の体は、常に外部からの細菌やウィルスの侵入に対して戦っています。これを「感染防御機構」または「免疫」と呼びますが、糖尿病では高血糖や血流障害により免疫が正常に反応できずに感染しやすい状態になっています。通常、体内にウィルスや細菌が入り込むと「好中球」という白血球の成分の1つが取り込んで殺します。しかし、糖尿病で高血糖の状態だと、この好中球の機能が低下しており感染症にかかりやすくなります。

また、人は一度感染した病原菌を記憶し、次の感染時にはすぐに反応できるように抗体を作って備える免疫機能がありますが、糖尿病ではこの免疫反応も低下していることが分かっています。

糖尿病では血管障害を起こすことにより様々な合併症を引き起こしますが、この血管障害は感染症に対しても不利です。高血糖により細い血管の血液の流れが悪くなっているため、酸素や栄養が十分に届かず、細胞の働きの低下を引き起こすだけでなく、白血球の感染部位への到着が遅いので、感染への反応が健常者より遅くなります。感染症に対し抗生物質を投与しても、血流が悪いため、感染部へなかなか到達せず改善にも時間がかかると言われています。

このように糖尿病では抵抗力が落ちているため、尿路感染症、肺炎、結核、胆のう炎、皮膚感染症、足病変など様々な感染症を引き起こす可能性があります。また健常者よりも回復が遅く、悪化しやすいため注意が必要です。

糖尿病の怖い合併症、足の壊死とは?しやすい理由は?

身体の一部への血流が悪くなると、その部位の細胞が死滅し、壊死を起こします。その壊死した部分が腐敗した状態を壊疽と呼びます。厚生労働省の国民健康・栄養調査によると糖尿病患者の約1%が壊疽を起こすことが分かっています。 糖尿病から壊疽に至る要因は3つあると言われています。それは神経障害、血行障害、免疫力の低下です。糖尿病性神経障害は、糖尿病の合併症として比較的早期に起こりますが、痛みやしびれだけでなく、進行すると痛みや熱さなどを感じなくなります。神経障害によって、足にできた靴ずれによる傷やタコ、イボなどに気づくのが遅れて悪化し壊疽になることがあります。また動脈硬化による血行障害により壊死を起こし、酸素や栄養も届きにくいため、傷が化膿しやすく壊疽になる可能性があります。また細菌やウィルスなどと戦う白血球の機能低下や免疫反応の低下のため、感染が悪化しやすく壊疽に陥りやすいと言われています。

足の壊死が起きた時の治療法

足の壊死が起きた場合の治療法は、壊死した組織を外科的に除去するデブリードマンという方法があります。感染がある場合は抗菌薬を投与し洗浄を繰り返し、新しい組織ができるのを待ちます。感染がない場合には抗菌薬は投与せず、洗浄で経過をみます。壊疽が重度で、感染により全身へ細菌が回り命の危険がある時には足を切断することもあります。ただし重度の血流障害がある場合には、カテーテル治療によって狭くなった部分の血管を風船で広げたり、自分の血管を移植し血行を再建するバイパス手術を行います。血行障害を残したままでは、再度壊死を起こす可能性があるからです。

他には医療用ウジを患部に置いて壊死組織を吸収し、新しい組織の再生を促す「マゴット・セラピー」や自己骨髄細胞移植による血管新生治療などの新しい治療法を試みている施設もあります。

足の壊死を予防するために

足の壊死を予防するためには日々のフットケアが大切と言われています。フットケアとは、足に小さな傷、靴ずれ、タコ、イボなどがないか確認することと、爪や足の皮膚のケアの仕方などが含まれます。具体的には、以下のような方法が考えられます。

・毎日足をよく観察する
・毎日足を洗い清潔に保つ
・風呂の湯でやけどをしないように40℃以下に設定する
・こたつや電気カーペットなどのやけどの原因になる電化製品を避ける
・裸足で歩かない
・タコやウオノメは病院で処置する
・爪の変形に気を付けて切る時には少しずつ一直線に切って後はヤスリで削る
・視力障害がある場合には家族に爪を切ってもらう
・足に合った靴をはく
・足に傷ができたら消毒して早めに病院を受診する

糖尿病で起きる足の壊死についてご紹介しました。糖尿病にかかってさまざまな症状が起きないか不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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