(ラムゼイ)ハント症候群の原因、症状、治療、予防 後遺症が残る?診療科や発症の契機も解説

  • 作成:2016/07/29

ラムゼイハント症候群(ハント症候群、耳性帯状疱疹とも)は、顔面まひや内耳の神経症状を特徴とする病気です。原因は、よく知られた水疱瘡と同じウイルスですが、後遺症が残る確率が低くありません。症状、診断、治療、予防方法を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

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(ラムゼイ)ハント症候群の症状とは?
ラムゼイハント症候群の原因は水疱瘡と同じ?
ラムゼイハント症候群が発症する契機とは?
ラムゼイハント症候群の症状
何科を受診すればよいか?
ラムゼイハント症候群の診断とは?
ラムゼイハント症候群の治療はどんなもの?
ラムゼイハント症候群の再発可能性
ラムゼイハント症候群の予防方法は?再発する?

ラムゼイハント症候群の原因は水疱瘡と同じ?

「ラムゼイハント症候群」とは、「ハント症候群」あるいは「耳性帯状疱疹(じせいたいじょうほうしん)」とも呼ばれていますが、帯状疱疹にともなって「顔面神経麻痺」と、めまいや難聴などの「内耳神経症状」が現れる病気です。ラムゼイハント症候群は「水疱・帯状疱疹ウイルス(Varicella Zoster Virus:VZV)」が原因となります。

初めてVZVに感染すると、「水ぼうそう」を発症します。水ぼうそうにかかると、体が抗体(体に入ったウイルスなどと戦う武器のようなもの)を作ってウイルスを抑えて、水ぼうそうは治ります。しかしその時にウイルスは膝神経節、前庭神経節、頸髄神経節、脊髄神経、坐骨神経などに侵入して、一生涯にわたって体内に潜伏するようになります。VZVが神経節に潜んで活動をしていない間は、全く症状のない状態となります。

しかし、疲れたり体調が悪くなったりした時に、VZVは再び活動を開始して、潜んでいたところから神経を伝わって皮膚に出てきて水疱を作ります。これが「帯状疱疹」という疾患です。神経を伝わって出てくる神経を痛める性質があって、顔面神経と内耳神経が傷んだ場合には、顔面神経麻痺とめまい、難聴、耳鳴が起こります。これがラムゼイハント症候群です。

ラムゼイハント症候群が発症する契機とは?

ラムゼイハント症候群は、水ぼうそう感染後に神経節に潜んでいたVZVが、何らかのきっかけで活動を再開することにより、顔面神経と内耳神経に損傷が生じて発症することがわかっています。ラムゼイハント症候群を発症するきっかけは、過労、加齢、ストレス、外傷、過度の日焼け、病気(風邪、糖尿病の悪化など)などで免疫力が低下することです。免疫力が低下すると、潜んでいたVZVが活動をはじめ、皮膚に帯状疱疹を作ります。その時に顔面神経と内耳神経を痛めるとラムゼイハント症候群となります。帯状疱疹については、https://www.askdoctors.jp/articles/taxonomy/835/list/1で解説しています。

ラムゼイハント症候群の症状

ラムゼイハント症候群では、通常片方の耳と顔面や舌に帯状疱疹の赤みや水疱(水ぶくれ)が生じて、痛みが出てきます。皮膚症状の他にラムゼイハント症候群では「顔面神経麻痺」というものが起こり、顔面の片側のみが急に動かなくなり表情がゆがんだようになります。片方の目が閉じられなくなったり、口の閉鎖が困難になって、会話や飲食物の摂食に問題が生じたりします。

ラムゼイハント症候群ではもう一つ「内耳神経症状」というものが起こり、目まい、難聴、耳鳴り、めまい、耳の痛みが現れます。顔面神経麻痺が先に現れるか、あるいは内耳神経症状が先に現れるかは、人によって様々で、必ずしもすべての症状が出てくるとは限りません。

何科を受診すればよいか?

ラムゼイハント症候群が疑われる場合、まず顔面に水疱や赤みが出たら皮膚科を、難聴やめまい、耳鳴りなどの症状が出たら耳鼻咽喉科を、受診するのが良いでしょう。異変を感じた際の症状(目まいがひどい、頭部の痛みがひどいなど)によっては脳外科や内科なども視野にいれる場合もあります。ただし、治療開始が遅れないためにも、迷ったら皮膚科あるいは耳鼻咽喉科をまず受診しましょう。

 

ラムゼイハント症候群の診断とは?

頭頸部の帯状疱疹がラムゼイハント症候群となってしまう率は6.8%とされていますが、特に耳介(耳の周辺部)に帯状疱疹が生じた例では、ラムゼイハント症候群となる率が高いとされています。顔面の帯状疱疹、顔面神経麻痺、めまいや難聴、耳鳴などの内耳神経症状がそろって現れると、ラムゼイハント症候群の診断は容易です。しかし、顔面神経麻痺がなかなか出ない方、耳ではなく口の中だけに皮膚症状が出る方などの場合は、診断がつきにくい場合もあります。

また特に原因がないのに顔面神経麻痺だけが生じてしまう病気を「ベル麻痺」と呼んでいますが、比較的治りやすく約1カ月から2カ月で治り、麻痺が残るといった後遺症が比較的少ないといわれています。一方、ラムゼイハント症候群は、麻痺が持続することがあり早期治療が大切です。

ラムゼイハント症候群の治療はどんなもの?

ラムゼイハント症候群の治療には、VZVの増殖を抑える目的で抗ウイルス薬(アシクロビル、パラシクロビルなど)が、神経を守る目的で副腎皮質ステロイド薬(プレドニゾロンなど)が点滴注射あるいは内服薬(飲み薬)で使用されます。ただし、抗ウイルス薬は発症して間もない早期段階のみに効果を発揮します。

治療の経過の目安として、症状が軽度の場合は約1カ月から2カ月で治ります。しかし、症状が重度の場合は治癒率が約50%から60%と治療成績が比較的悪く、麻痺が残ったり、まぶたと口が同時に動く「病的共同運動」、ひきつれ、といった後遺症を残す場合が多くみられています。顔の表情が崩れたままになってしまうことや痛みが取れないままになってしまうこともあります。また、目まいが改善しても聴力障害が残る場合もあります。

ラムゼイハント症候群は治療開始が遅れると約50%から60%の人で後遺症が残る可能性があるため、ラムゼイハント症候群かもしれないあるいは急に顔面に異変を感じたら、すぐに病院を受診することが肝心です。放置は厳禁です。

ラムゼイハント症候群の再発可能性

ラムゼイハント症候群は基本的には再発しません。ラムゼイハント症候群は水疱瘡にかかった際にできた免疫が、長い年月を経て、弱まってしまったことが原因で発症したものです。ラムゼイハント症候群を発症した時には、そのことで再び水ぼうそうのウイルスに対する免疫が強くなって、次に同じウイルスに悩まされる確率は、相当低くなります。

ラムゼイハント症候群の予防方法は?再発する?

ラムゼイハント症候群を予防することは可能です。ラムゼイハント症候群の発症原因ウィルスがVZVであることから、同じウィルスによって発症する水ぼうそうのワクチン接種が有効な予防対策といわれています。また、すでに過去に水ぼうそうを発症した人は、体内にVZVが眠って残っています。ラムゼイハント症候群はそのVZVが再び活性化して発症しますが、そのきっかけとなる要因(ストレスや病気など免疫力が低下しているときにVZVは暴れ出します)をできるだけ排除するよう日ごろから体力をつけるなどして、健康管理に十分注意することです。

水ぼうそうのワクチン接種は生後1歳から可能です。2014年10月から水ぼうそうのワクチンは定期予防接種(2回接種)となり、1歳から3歳になるまで(対象年齢)無料で受けられますので、小さなお子さんをお持ちのご家庭は(他のワクチンとの同時接種も可能)忘れずに水ぼうそうのワクチンを接種してください。

またワクチン効果の持続の目安は約20年間(海外では約10年間)とされています。成人になってからの予防接種(有料)も可能ですので、妊娠を希望している方(妊婦の方は受けられません)、接種記録があいまいな方、そして高齢の方など、ラムゼイハント症候群だけではなく帯状疱疹の予防対策として水ぼうそうのワクチン接種を考えてみてもよいでしょう。

ラムゼイハント症候群についてご紹介しました。顔面のマヒなど不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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