良性腫瘍とは?悪性腫瘍との違いは?転移・再発・悪性化する?原因、できる部位、手術の必要性なども解説
- 作成:2016/06/30
良性腫瘍とは、「悪性腫瘍」(いわゆる癌)などに対して、増殖が遅い、もしくは止まってしまうのが特徴です。癌に比べると、安全性が高いわけですが、手術が必要になる場合もあります。原因やできる場所などを含めてい、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です

良性腫瘍とは?悪性腫瘍とはどう違う?
良性腫瘍の主な原因
良性腫瘍はどこでもできる?痛みがある?
良性腫瘍なのに手術が必要になる理由
脳にできたら、摘出が必要だが
良性腫瘍は転移する?再発する?
良性腫瘍が悪性化することがある?
良性腫瘍とは?悪性腫瘍とはどう違う?
私たちの体にはたくさんの細胞がありますが、全ての細胞はお互いに調和を保つように制御されています。「腫瘍」とは細胞の一部がその制御からはずれてしまい、分裂や増殖を勝手に繰り返し、過剰に発育して「こぶ」のような塊(かたまり)になったものです。周りの細胞からはずれて、あたかも違う生物が成長してきたようにもみえることから「新生物」とよばれることもあります。
腫瘍の中でも「悪性腫瘍」とは、いわゆる「がん」や「肉腫」のことです。もともと自身に備わっている細胞が、なんらかのきっかけで生体の制御からはずれて増殖をはじめた結果、体の他の組織や細胞を傷つけてしまうというものです。悪性腫瘍は増殖速度が速く、また増殖を止めようとしません。それだけでなく遠くの臓器にまで移動して、そこでも増殖を繰り返します。悪性腫瘍はこのように、たいへん攻撃的な性質を持つ腫瘍です。
これに対し「良性腫瘍」は、過剰に発育したこぶはできるものの、比較的成長が遅く、また成長が止まってしまうこともあります。この段階で発見して取り除くことができれば、それ以上、他の細胞や臓器を傷つけることもありません。単に腫瘍といった場合には良性腫瘍を指すこともあります。
良性腫瘍の主な原因
腫瘍のできる原因はいくつかあります。悪性であっても、良性であっても、基本的な腫瘍形成のメカニズムは同じで、なんらかのきっかけで、細胞分裂に関する制御が効かなくなって増殖を繰り返すことが原因です。
細胞分裂に関する制御は遺伝子に組み込まれています。これらの遺伝子に傷がつくと、細胞分裂のプログラムに支障が出ます。遺伝子に傷がつく要因は様々で、たとえば「発がん物質」とよばれる化学物質もその一つです。他にも体内で絶えず発生している「活性酸素」がうまく除去されなかった場合には、遺伝子を傷つける可能性があります。また太陽からの紫外線が、皮膚の遺伝子の損傷を招くことがあります。
これらの原因によってできた遺伝子の傷は、たいていの場合には、体がもっている「修復機構」によって自然に修復されます。しかし、遺伝子が、修復ができないほどの損傷を受けた場合や、修復システムから逃れた細胞があると、勝手な増殖を繰り返し腫瘍形成のもとになります。
良性腫瘍はどこでもできる?痛みがある?
良性腫瘍ができやすい場所として、脳にある「脳下垂体」があげられます。また喉のところにある「甲状腺」も、良性の腫瘍ができやすい場所です。女性でよく見られるのが乳腺や卵巣、子宮などにできる腫瘍です。たとえば乳がん検診などでみつかる「線維腺腫」という乳腺のしこりは、良性腫瘍です。「子宮筋腫」は30歳代から40歳代の女性に多く見られる良性腫瘍で、子宮の筋肉にこぶができます。子宮筋腫はほとんどの場合症状が出ませんが、生理に伴って下腹部に痛みを感じたり、腰痛や頭痛が出たりすることもあります。子宮筋腫のできる場所によっては不妊症の原因になることもあります。
腫瘍は体の表面にできることもあります。肩や背中、おしりなどの脂肪細胞が異常に増殖して「脂肪腫(しぼうしゅ)」というこぶをつくることがあります。これも良性腫瘍です。脂肪腫は一つだけでなく、たくさん表れることもあります。男性より女性に多く、とくに痛みを感じることはありません。
また骨の「骨芽細胞」とよばれる細胞が勝手に増殖してしまうと「骨腫」というこぶを作ります。
このように腫瘍ができる場所は様々で、まったく症状がない場合もあれば、場所によっては痛みを生じて生活に支障をきたす場合もあります。
良性腫瘍なのに手術が必要になる理由
良性の腫瘍であっても、場所や大きさによっては手術が必要になることもあります。
皮膚の脂肪に出来る「脂肪腫」は悪性化することはまれで治療する必要もありませんが,人から目につきやすかったり、気になる場合は切除してしまったり、脂肪吸引によって除去してしまったりします。
乳腺にできる「線維腺腫」や、子宮にできる「子宮筋腫」も成長がすすまなければ、摘出せずに様子を見ます。しかし妊娠を希望していたり、症状がひどい場合には摘出を行うこともあります。
脳にできたら、摘出が必要だが
脳にできる良性腫瘍は、他の場所にできるものとは異なり、大きくなると命にかかわることもあります。代表的なのは「髄膜腫」(ずいまくしゅ)です。髄膜腫は脳をおおっている「髄膜」の中の「クモ膜」という細胞にできる良性の腫瘍です。髄膜のあるところならどこでも発生する可能性があり、40歳代以上の女性に多く見られます。脳のどこに発生したかによって症状が異なり、たとえば「円蓋部」(えんがいぶ)とよばれる脳の上方にできると、腕の運動麻痺や「失語症」を起こす場合もあります。また脳の内部「鞍結節部」(あんけっせつぶ)という部分にできると、視力に障害をきたすことがあります。
髄膜腫はまわりの細胞との境界が明瞭なため、全て手術で、摘出することが可能ですし、影響を考えると摘出をするのがよいといえます。小さな腫瘍の場合は放射線で処置することもありますが、発生する場所によっては摘出が困難な場合もあります。
良性腫瘍は転移する?再発する?
良性腫瘍は周りを取り囲む細胞や臓器との境界がはっきりとしていて、こぶ自体が膜に包まれていることもあります。そのため、良性腫瘍は周りの細胞に入り込んだり、他の臓器に移動したりすることもありません。とくに支障のない場合は切除する必要もありませんが、摘出後もまれに再発する可能性はあります。
良性腫瘍が悪性化することがある?
良性腫瘍が悪性腫瘍へ「がん化」する場合も、まれにあります。胃の粘膜上皮にできる「胃腺腫」は良性の腫瘍ですが、大きくなって2センチを超えると悪性腫瘍に変わることがあります。また脳の「髄膜腫」もまれにですが、悪性化することがあります。体に腫瘍などが見られたり、検査で見つかったりした場合は、良性かどうかをしっかり診断してもらい、処置について医師らと話合うようにしましょう。放置は危険です。
良性腫瘍についてご紹介しました。体にできたこぶなどの異変に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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