蜂窩織炎の原因、完治・再発可能性、予防方法 他人に感染する?水虫やリハビリも原因に?

  • 作成:2016/09/16

蜂窩織炎(ほうかしきえん)とは、細菌が原因となって、皮膚に生じる比較的重い炎症のことで、リハビリなどが原因となることがあります。原因となる菌は、身近なもので、なんらかの理由で、皮膚組織の中に侵入して、抑えることができなくなり発症します。完治や再発可能性、予防方法を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

この記事の目安時間は6分です

蜂窩織炎の原因は何?

目次

蜂窩織炎とは?「蜂巣炎」「フレグモーネ」と同じ?

皮膚は、上層の「表皮(ひょうひ)」と下層の「真皮(しんぴ)」からできています。皮膚の下には、皮下脂肪などから成る「皮下組織」があり、筋肉や骨はさらにその下にあります。

「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」とは、皮下組織における細菌の感染症のことで、「蜂巣炎(ほうそうせん)」「フレグモーネ」とも呼ばれています。

なお、皮膚の細菌感染症で「丹毒(たんどく)」という病気がありますが、これは、蜂窩織炎よりも皮膚の表面に近い部分の細菌感染症で、皮膚の「真皮」部分への細菌の感染に限定された感染症を指します。

実際の蜂窩織炎では、皮下組織のすぐ上にある真皮の深層にも感染が及んでいますから、蜂窩織炎と丹毒の症状は似ている時もあり、見ただけで区別するのは難しいことがあります。

蜂窩織炎の原因は菌?水虫やリハビリが契機になる?子供の場合何か特徴がある?

皮膚にはある程度、免疫機能(体に入った菌などと戦って排除する機能)がありますが、ヒトの皮膚の表面は決して無菌状態ではなく、健康な皮膚にも常在菌が存在しています。小さな傷ができている状態では、傷から栄養分がしみ出ていますから、細菌にとっては絶好のすみかとなり、常在菌だけではなく、蜂窩織炎を引き起こすような病原菌も定着するようになります。とはいえ、普段は免疫の働きで、細菌の増殖は抑えられており、化膿しない状態が保たれています。

蜂窩織炎は、多くの場合、皮膚の細かい傷から細菌が皮下組織に侵入して生じます。水虫で皮膚に水疱(水ぶくれ)ができて浸出液が出ていたり、リハビリで皮膚が擦れて傷となったり、長く歩いて靴擦れができたりすると、その傷に蜂窩織炎を起こす細菌が付着しているだけではなく、細菌が皮下組織に侵入する経路が開いている状態になっています。結果として、蜂窩織炎を発症する危険性は高まります。

「黄色ブドウ球菌」や「溶血性連鎖球菌」が主な蜂窩織炎の原因菌となりますが、小児では「インフルエンザ菌」「肺炎球菌」などが原因となることもあります。

なお、「インフルエンザ菌」は冬季に流行するインフルエンザの原因のウイルスとは、全く別のものですから、混同しないようにしてください。

蜂窩織炎は他人に感染する?しない?

蜂窩織炎は細菌による病気ですが、他人に感染する病気ということではありません。蜂窩織炎の原因となる「黄色ブドウ球菌」「溶血性連鎖球菌」「インフルエンザ菌」などの細菌は、皮膚の小さな傷に定着していたり、健康なヒトの喉や鼻の穴の中に潜んでいたりしています。これらの細菌は、元々ほとんど病変(病気による物理的な変化)を作らない形で、ヒトと共存しているのです。そのような菌が皮膚の表面の微細な傷から皮下組織に侵入しても、通常は体の免疫の働きで死滅してしまいます。ところが、たまたま何らかの理由で、皮下組織に侵入した細菌の増殖をうまく抑えることのできなかった時に、蜂窩織炎が発症するのです。

つまり、蜂窩織炎は他人からうつったりすることや、他人にうつすことを心配する必要のない病気です。むしろ、発症した本人の皮膚や免疫の状態に何か問題がなかったかということを考える必要がある病気なのです。

蜂窩織炎は完治する?しない?

蜂窩織炎は細菌が入ったために起こる疾患ですから、全ての抗生物質が無効の細菌によって発生したというまれなケースを除けば、有効な抗生物質を使うことにより完治します。

通常は、細菌培養を初診時に行って検査することになりますが、どの抗生物質が有効であるかは検査結果が出るまでは確定しません。当然ながら蜂窩織炎の治療開始時点では、その情報はありませんから、おそらく効くであろうと考える抗生物質を用いて治療を開始することになります。

4日から5日経過を見て改善が無いようなら、薬剤を変更して治療を継続していくことになりますが、細菌培養検査の結果が出た時点で最適な抗生物質を選択することになります。

なお、抗生物質による治療は、完治するまで継続する方が良いとされています。少し良くなった時点で、治療をやめてしまうと、蜂窩織炎は再発しやすく、これが抗生物質の効かない菌が発生する原因になるとされています。

蜂窩織炎は再発しやすい?

蜂窩織炎の症状は目で見えるので、良くなってきたことは誰にでもはっきりと分かります。かなり良くなった時には治療を打ち切りたくなるものですが、症状が完全に良くなっていないのに治療を中止してしまうと、患部のどこかに残っていた細菌が再増殖して、蜂窩織炎が再発することもあります。

また蜂窩織炎は皮膚の眼に見えないような小さな傷から細菌が侵入して、その増殖を免疫の力で押さえつけることができなかった時に発症します。特定の部分の皮膚の状態が悪いと、その部分から細菌が繰り返して侵入することで、蜂窩織炎が再発してしまうことがあります。

従って、以下のような方は蜂窩織炎を再発しやすいと言えます。

・慢性的に足の指の間がふやけているなど特定の部位の皮膚の状態が悪い方
・リンパ浮腫(リンパ液が皮下組織に貯まって腫れている状態)があって、局所的に免疫が落ちている方
・糖尿病などの免疫力が低下する疾患のある方
・副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤などの白血球の働きを抑える薬の投薬を受けている方

蜂窩織炎の予防方法

蜂窩織炎は皮膚の眼に見えないような小さな傷から細菌が侵入して、その増殖を免疫の力で押さえつけることができなかった時に発症します。したがって、皮膚に傷がつかないようにケアしておくことと、免疫力の低下を防ぐことが、蜂窩織炎の予防となります。

特に足のトラブルから蜂窩織炎となることが多いので、水虫や足の蒸れで足の指の間がふやけている方は、皮膚科を受診することをお勧めします。水虫かどうかは簡単な検査で確定します。「水虫だ」と自己判断して、むやみに水虫の薬を塗ってかぶれてしまって皮膚の状態が悪化すれば、かえって蜂窩織炎となる危険性も高くなってしまいます。普段から入浴後には足の指の間を乾いたタオルで拭いて乾燥させておくこと、指を一本ずつ包むタイプの靴下を着用することは、足のトラブルの予防となります。

また陥入爪(爪が周囲の肉に食い込んで、炎症を起こした状態)から細菌感染を起こすと足の蜂窩織炎となることがありますから、爪は正しく切るようにしましょう。足の指の爪の端を短く切って丸い形にしていると陥入爪になりやすいので注意してください。足の爪の端を、皮膚の先端から少し出るところまで伸ばして、爪を四角い形にしておくのが良いです

リンパ浮腫(リンパ液が皮下組織に貯まって腫れている状態)があると、その部分の免疫力が落ちてしまうことがわかっています。マッサージや運動はリンパ浮腫の改善に効果があります。下肢にリンパ浮腫がある方は、寝るときに足枕などを使って下肢を少し高くしておくとリンパ浮腫を改善することができます。リンパ浮腫には弾力ストッキングも効果がありますが、不向きな方もありますから装着の適否については担当医に相談してください。

糖尿病など免疫力が低下する疾患のある方は、疾患をきっちり管理して良いコントロールとしておくことが、蜂窩織炎の予防に役立ちます。

自己免疫疾患などの治療のために副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤などの白血球の働きを抑える薬の投与を受けている方では、蜂窩織炎が発症しやすくなっています。毎日皮膚をよく観察して、傷ができていたりや赤みが出ているなどの異常があれがば早めに受診しておくようにしましょう。

子供の蜂窩織炎の予防方法

小児では、成人より免疫力が弱いです。そのため子供は、犬や猫と遊んでいるうちに軽く指などをかまれて、犬や猫の口の中にいる常在菌である「パスツレラ菌」という菌が皮膚の中に入って、蜂窩織炎を起こすことがあります。小児では皮膚の小さな傷であってもきっちりとケアをして、赤く腫れてくるようなら早めに受診するようにしましょう。



【蜂窩織炎関連の他の記事】


蜂窩織炎の原因や予防方法などについてご紹介しました。皮膚の異常に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

症状や健康のお悩みについて
医師に直接相談できます

  • 24時間受付
  • 医師回答率99%以上

病気・症状名から記事を探す

その他
あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行

協力医師紹介

アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、31万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。

記事・セミナーの協力医師

Q&Aの協力医師

内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。

Q&A協力医師一覧へ

今すぐ医師に相談できます

  • 最短5分で回答

  • 平均5人が回答

  • 50以上の診療科の医師