五月病対策は「4月から」コロナ禍を乗り切るには

  • 作成:2021/04/22

4月は暖かく過ごしやすくなる一方で、仕事やプライベートに変化が多く、ストレスを感じやすい時期でもあります。そこで今回は精神科医、産業医の経験を持つ堤多可弘氏が、変化の多い4月に気をつけるべき点や乗り切るためのコツ、さらには家族や身近な人をサポートする方法まで解説します。

この記事の目安時間は6分です

五月病対策は「4月から」コロナ禍を乗り切るには

1.4月は五月病の準備期間?

いわゆる「五月病」とは、新年度開始による環境変化などで疲れが溜まり、5月くらいから気分や体調が優れなくなってしまう状態のことです。人間は環境変化によって大なり小なりストレスを受けますが、最初の頃は緊張の糸が張り詰めていて、あまり自覚することはありません。しかし、だんだん疲れが蓄積し、メンタル不調などに陥ってしまう方もいます。

実際に私が診療した事例をご紹介します(個人が特定できないように一部改変しています)。

例1

30代のAさんは大企業に新卒で入社し、地方の工場で10年勤続していました。会社に将来を期待され、4月から東京の本社勤務を命じられました。本人も張り切っていましたが、工場と本社とでは仕事の内容も人間関係も全く異なり、なかなか業務に慣れませんでした。また、新型コロナの影響で懇親会などもなく、孤独感を抱いていました。初めての東京生活にもうまく馴染むことができません。5月頃から気持ちが落ち込みがちになり、仕事への意欲も低下、夜も眠れない日々を過ごしていました。いよいよ限界を感じた6月、メンタルクリニックを受診すると、「うつ病」と診断され休職することになってしまいました。

私の経験上、ストレスを感じる環境に1~2ヵ月ほど身を置くと、色々な症状が出てくることが多いように思います。このAさんのようにメンタルクリニックを受診される方も5~6月あたりに多い印象があり、お話を聞くと「ストレスの始まりは4月頃だった」ということがよくあります。環境の変化が大きい4月は、うまく適応できないとストレスが溜まりやすく、五月病につながってしまいます。まさに4月は五月病の準備期間なのです。

2.4月ストレスの“正体”とは

前述の通り、人は環境変化によって大なり小なりストレスを感じます。ここで覚えておきたいポイントは、自分にとって嫌な変化だけではなく、喜ばしい変化、望んでいた変化も、実はストレスの原因になることです。では、具体的にどのような環境変化がストレスになるのでしょうか? ストレスの正体を解説していきましょう。

〈4月によくある環境変化〉

○仕事関係

  • 人事異動に伴う業務や責任の変化
  • 仕事仲間の異動や退職
  • 新入社員の存在

○プライベート

  • 子どもの進学、卒業
  • 引っ越し

など

さらにコロナ禍特有の現象として、テレワークが続いていたり、歓送迎会などが行えなかったりして、人間関係の構築に時間がかかる問題もあります。スムーズに人間関係が構築できるか否かは、新しい環境に適応する上で重要なファクターの1つですから、決して無視できません。先ほどのAさんの例でも、なかなか職場の人間関係に馴染めない様子がうかがえました。人間関係がうまく構築できないと、ちょっとした相談や雑談などができずに、ストレスを溜め込んでしまいます。

Aさんの例は仕事関係の環境変化が中心でしたが、今度はプライベートの変化が大きかった例です。

例2

30代のBさんは、4月に長男が小学校に進学、次男が幼稚園に入園。新年度の準備の慌ただしさが落ち着いたのも束の間、保護者会やPTA活動などのラッシュが始まりました。新しく知り合った保護者たちとの付き合いが増え、前より忙しくなりました。もともと多趣味なBさんですが、趣味を楽しんだり友人と会ったりする時間を持てない日々が続きました。

4~5月の時点で何となくしんどさは感じていたものの、あまり深刻には捉えていませんでした。しかし、夏頃から食欲が落ち、夜も眠れなくなり、ものごとを楽しめなくなっていきました。秋頃になって、かかりつけの内科医に相談をしたところ、専門科への受診を勧められ、メンタルクリニックを受診しました。メンタルクリニックでは漢方薬中心の治療とカウンセリングを受け、徐々に元気を取り戻していきました。

Bさんもまた、4月の急激な環境変化にストレスを感じた典型的なパターンです。新年度の準備、保護者会やPTA活動などの忙しさに加えて、人間関係の変化にもストレスを感じていました。

3.環境変化を乗り越える「3つのコツ」

では、このようにメンタル不調を招きやすい4月を、どのように乗り越えたらいいのでしょうか? それには、次のように「3つのコツ」があります。

①コントロール感を持つ

②コンフォートゾーン(快適な居場所)を維持する

③セルフモニタリングをする

一つ一つ解説していきますね。

①コントロール感を持つ

4月はとても多くの変化が否応なく訪れます。すべて同時に対応しようとすると、時としてエネルギー切れを起こしてしまいます。そこで、意識的に「コントロール感」を持つようにしましょう。コントロール感とは、“自分でものごとを決めている”という感覚のことです。環境変化に流されないためには、このコントロール感が非常に大切です。

コントロール感を持つには、2つのテクニックが役立ちます。1つは、「自分カレンダー」を作ること。もう1つは「3段リスト」の活用です。

まずは「自分カレンダー」について説明します。

読者のみなさんは、スマホやスケジュール帳に仕事や重要な予定などを記入していると思います。何でもない余暇や、休む時間までは記入しない人が多いことでしょう。でも、「自分カレンダー」では、あえて余暇や休む時間も「予定」として記入していきます。あらかじめ自分の時間を確保することで、無理なくコントロール可能なスケジューリングができるようになります。

もし、余暇や休む時間がなかなか取れないとしたら、すでに仕事や予定がキャパシティオーバーを起こしている証拠です。その場合は、次の「3段リスト」を作ってスケジュールを再調整しましょう。

「3段リスト」は、タスク管理方法の一つです。いわゆるTo Doリストとは違って、タスクを次の3段階のリストに分けていきます。

「To Do」……絶対にやらなければいけないこと

「To Wish」……やれたらいいなということ

「Not to Do」……思い切ってやらないこと

例えば、外せない子どもの学校行事などは「To Do」です。

 「To Wish」は、もう少し優先順位が落ちることが該当します。例えば、換気扇の大掃除や庭の草むしりなど、後回しにできるけれどやれたらいいなというものを書いていきます。

「Not to Do」は、自分の負担になりそうで、制限した方がいいようなこと。毎日、夕ご飯を作ることを「Not to Do」として、週に1回はデリバリーを利用するなど、他の対応策がとれるタスクは、思い切って減らしてみて下さい。

こうすることで一定のコントロール感を持つことができ、少しずつ環境変化に適応するための余力が生まれます。変化は変化として受け入れて、コントロールしながら徐々に慣れていく、これが1つ目のコツです。

②コンフォートゾーンを維持する

環境が大きく変化しても、以前からの人間関係や趣味など、自分にとって快適な居場所はあるはずです。それを「コンフォートゾーン」と呼びます。新しい環境で頑張るだけでなく、これまでのコンフォートゾーンも維持しながら、 徐々に慣れていくことを心がけましょう。

前出のAさんのように異動があった場合でも、以前の部署の同僚や、引っ越し前の友人と定期的に交流を持ち、心を安定させていくことがとても大事です。

③セルフモニタリングをする

「セルフモニタリング」とは、自分の活動や心身の健康状態を客観的に振り返ることです。日々の活動が自分のキャパシティ内に収まっているかどうか、心や体が不調のサインを出していないかに気づくために行います。

活動がキャパシティ内に収まっているかどうかは、①で紹介した自分カレンダーを見返すことで判断できます。では、心や体の不調のサインは、どのように見ていくといいでしょうか? ストレスが大きくかかると、心身に様々な症状が出てきます。その全てをモニタリングするのは大変なので、“食う・寝る・遊ぶ”が問題なくできているかどうかに着目して下さい。

「食う」に関しては、食欲減退や過食になっていないか。また、甘いものや辛いもの、ジャンクフードの食べすぎ、お酒の飲みすぎも、心身の不調の表れかもしれません。次の「寝る」は、睡眠時間がしっかり確保できているか、寝つきが悪くなったり、途中で何度も目が覚めたりしていないかなどを確認します。「遊ぶ」については、趣味などができているかどうか、好きなものを楽しいと感じられるかなどをモニタリングします。

これらに異常を感じる場合は、改めて自分のスケジュールやコンフォートゾーンを見直しましょう。それでも問題が解決しない場合は、専門家などに相談することをお勧めします。

4.家族や身近な人が心配な時は?

最後に、家族や身近な人に心配な様子がある時の対処法をご説明します。どことなく元気がない、食欲がなさそう、夜に何度も起きている、表情が暗いなどの変化があった場合、まずは「心配していること」を伝えて下さい。すぐに病気だと決めつけずに、詳しい様子を聞いてみましょう。自分たちで何とかなりそうであれば、一緒に解決策を考える。難しそうと感じた時は、迷わず専門家に相談して下さい。かかりつけの医師や、会社の産業医、保健師などが相談に乗ってくれるかもしれません。また、Ask Doctors(アスクドクターズ)のように、気軽に専門家に相談できるリソースも積極的に活用してはいかがでしょうか。

まとめ

以上、変化の多い4月のストレスと、それを乗り越えるコツについてご説明しました。3つのコツは4月だけでなく、普段の生活でも活用できる方法なので、ぜひ試してみて下さい。みなさんの日々の生活にあたって参考になれば幸いです。

 

堤多可弘(つつみ・たかひろ)

VISION PARTNERメンタルクリニック四谷 副院長 / 精神科医・産業医

弘前大学医学部卒業後、東京女子医科大学精神科で助教、非常勤講師を歴任。 現在はVISION PARTNERメンタルクリニック四谷の副院長とスタートアップ企業の取締役を務めるとともに、首都圏及び青森県の企業や行政機関の産業医を10か所以上担当。 ブログや著作、研修などを通じて、メンタルヘルスや健康経営、産業保健の情報発信も行っている。 共著に「企業はメンタルヘルスとどう向き合うか―経営戦略としての産業医 」(祥伝社新書)がある。

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