20代からも起こる「老化現象」 コロナ禍は生活習慣を見直す絶好のチャンス
- 作成:2021/12/30
ピンピンコロリで100年を生きるためには、リアリティを持って健康を考え、マネジメントすることが重要です。ただ、健康というのは身近でありすぎるため、なかなか日常の中で意識することは多くないのではないでしょうか。健康とは何か、なぜ大切なのか、行動変容外来で診療を行う横山啓太郎先生に伺いました。
この記事の目安時間は3分です
健康を考えるとき、切り離せない老化現象
「最近お酒が弱くなった」、「徹夜すると次の日にさしつかえる」と年を感じるのはよくあることです。それが直接「健康」につながるとは誰も思っていませんが、これらは“老化”のひとつで、外的な刺激から対応できなくなるためと考えられます。
たとえば、アルコールという外的な刺激に対応できなくなった肝臓は弱り酒が弱くなる、これは早ければ20代から起こっていることです。同様に、食べた糖が処理できなくなって糖尿病に、脂が処理できなくなるから脂質異常症に、塩が処理できなくなるから高血圧になるわけです。
まだ若いころには、外的刺激に対応できるのですが、年齢を重ねていくにつれ、機能も脆弱になり、処理しきれなくなります。これが老化です。
これらの症状に対して、血糖降下剤や高血圧の薬などで数値だけよくしても、実際に体が老化しているのですから根本的に解決していることにはなりません。だからと言ってもちろん薬を飲まなくていい、というわけではありません。
たとえば築50年の家で建物が壊れ雨漏りした場合、根本解決には屋根を修理しますが、雨で床が腐らないようにとりあえずバケツで雨を受けます。同様に病気に対しても、根本原因となっている生活習慣を変えて解決を図りつつ、薬で養生するということです。
自分の体について、具体的に健康とは何かと考えたとき、薬を飲んでいるだけではなく、どう対処したら根本解決につながるかを、実践することが大切です。
人間にとって大切な財産、「健康」を意識する
人間の大切な財産のなかに、先にあげた健康があります。そしてこのほかに、「お金」と「人間関係」の2つ、合わせて3つの財産があります。この3つの財産は、年代によって興味や順位が変わっていきます。
若いうちは圧倒的にお金が大切だと思っています。今の小・中学生は、本当に100歳まで生きると言われているので、お金を100年の間持ち続けるにはどうしたらいいか、すでに子どものうちから考えているのです。
次に40歳前後から60歳くらいの人が一番に考えることは人間関係です。ちょうど中間管理職くらいのころで、人間関係を構築したいと飲みに誘うのです。しかし、若い人たちは人間関係よりお金に興味があるため、飲みに行くなんて時間の無駄と思っています。ここにジェネレーションギャップが生じるのです。
やっと60歳くらいになると健康へと興味が移っていきます。以前は60歳定年が多かったのですが、平均寿命も延びていることや人手不足などもあり、60歳定年はもはやなくなりつつあります。加えて、老後2000万円問題も浮上し、何歳まで働くのか、働けるのかは大きな問題です。なぜなら、病気にかかってしまっては、お金という財産がなくなってしまい、100歳まで不自由なく暮らせなくなってしまうから。ここでやっと健康の重要さが身にしみるのです。
「生活習慣を変える」はハードルが高い
習慣が壊れることは、人間にとって最大の不幸です。失業するとか恋人と別れるとか、親と死別するとか、子どもが病気になるとか、そういったいつもある習慣が壊れることが不幸なのです。ですから人間は本能的に習慣が壊れることを考えないようにしています。
このため生活習慣を変えないようにします。だから、糖尿病や高血圧症など、生活習慣病と言われる病気は改善するのが難しく、三日坊主で終わることが多いのです。
この“生活習慣を変えない”という人間の本能に近い部分をいかに変えていくか、ということが健康には重要です。
生活習慣を変えるためには何かのきっかけが必要です。奇しくもこの2年あまり、新型コロナウイルスにより世界中で生活習慣が大きく変わりました。リモートワークの推奨や3密が呼びかけられ、以前はマスクをする日本人を笑っていた外国人が、きちんとマスクを付けるようにもなりました。
この生活習慣の変化をウィズコロナ(コロナと共に)として考え方を変えるか、アフターコロナ(コロナは終わった)として元に戻るのかは自分次第です。ウィズコロナは病院任せにせず、自分の健康は自分で守る社会です。前項で述べた3つの財産を考えれば、自ずと答えは出てきますね。
これは、健康を資産としたときにあげられる4つのアセット、「マインド」、「運動」、「栄養」、「睡眠」のうちの最大のマインドチェンジのチャンスです。
1958年生まれ。1985年東京慈恵会医科大学医学部卒業。国立病院医療センターで内科研修後、東京慈恵会医科大学第二内科、虎の門病院腎センター勤務を経て、東京慈恵会医科大学内科学講座(腎臓・高血圧内科)講師、准教授、教授。2016年、大学病院として日本初の「行動変容外来」を開設、診療医長に。2019年には寝たきりのリスクを減らす新型人間ドック「ライフデザインドック」を慈恵医大晴海トリトンクリニックにてスタートさせた。日本内科学会認定医・総合内科専門医、日本腎臓学会認定専門医、日本透析医学会指導医。主な研究分野は、慢性腎臓病の進展制御と合併症研究、Ca制御機構に関する研究、血管石灰化研究、生活習慣病行動変容。2021年から東京慈恵会医科大学 大学院 健康科学教授。
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