激痛で救急搬送される人も…「生理痛はガマンするもの」は大きな誤解

  • 作成:2021/08/17

生理痛がひどくて動けない、痛み止めを飲んでなんとか動けたけれど仕事や家事が思うようにできない、生理痛がつらくて生理が来るのが怖い……。このように困っている方は多いのではないでしょうか。一般的に、「生理痛はガマンするもの」と思われがちですが、そんなことはありません。この連載では、生理痛の仕組みから適切な対処法まで、産婦人科医が医学的に解説します。第1回目は、生理が起こる基本的な仕組みからお伝えしましょう。

この記事の目安時間は3分です

激痛で救急搬送される人も…「生理痛はガマンするもの」は大きな誤解

1)おさらい~生理が起こる仕組み

一般的に生理と言われていますが、医学的には「月経」と言います。月経とは「約1ヶ月の間隔で起こり、限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期的出血」と定義されています。子宮内膜とは子宮の内側を裏打ちしている膜のことで、妊娠するために非常に重要な役割を持っています。妊娠するためには子宮内膜が厚くなる必要がありますが、妊娠が成立しなければ厚くなった子宮内膜は一旦剥がれます。この時に剥がれた子宮内膜と共に血液が排出されるために月経(生理)が起こるのです。そしてこの現象が毎月起こるため、月経(生理)は毎月やってくるのです。

ちなみに月経があるのは、サル類や一部のコウモリとネズミ、そしてヒト(人間)だけなんです。他の動物は繁殖期だけ子宮が妊娠できる状態になります。寒い冬やエサの少ない時期に赤ちゃんが産まれてしまうと育てられなくなる可能性があるからです。また、月経があれば血液の臭いで天敵に見つかりやすくなるので、ヒト(人間)のように月経という出血が起こる動物は少ないのです。ヒト(人間)には天敵というものが存在しないため、毎月子宮の中で妊娠の準備が行われています。そのため月経が毎月起こるのです。

2)生理に痛みは必要?

月経(生理)が起こる仕組みはご理解していただけたかと思いますが、なぜわざわざ毎回痛くなる必要があるのでしょうか。
生理痛は医学的には「月経痛」と言います。先ほど説明したように、月経の時に子宮内膜が剥がれて出血が起こります。この時に子宮内膜から「プロスタグランジン」という物質が放出されます。プロスタグランジンという物質は、子宮をぎゅっと締める(収縮させる)作用があります。子宮が収縮することにより子宮の中に溜まっている血液や子宮内膜が速やかに排出されます。いつまでも子宮の中に血液が溜まっていると妊娠しにくい状態となってしまうため、子宮が自ら収縮して子宮の中をきれいにする作用が働きます。ただし、この子宮が収縮する時に痛みを感じてしまうのです。
一方で、プロスタグランジンという物質は、痛みの原因となる物質でもあります。ケガをすると痛みを感じますが、これは損傷した細胞からプロスタグランジンが放出されるためです。子宮が収縮し痛みを感じると同時に、プロスタグランジン自体によっても痛みが引き起こされるのです。

生理痛がまったくないという方もいれば、痛くて動けなくなる方もいます。この違いはいったいどういうことなのでしょうか。月経の時に放出されるプロスタグランジンの量には個人差があります。生理痛が強い方は放出されるプロスタグランジンの量が多いことが分かっています。子宮が収縮する程度や痛みの感じ方には個人差がありますが、プロスタグランジンの放出量が多ければ過度に痛みが強くなってしまうのです。
なお、生理痛がひどくなる病気もありますので、生理痛がひどい方が全て体質的なものとは言えません。生理痛がひどい方は一度婦人科で診察を受けることをお勧めします。

3)社会全体で生理痛への理解を深めてほしい

生理痛の痛みの程度は、人によって本当に差があります。
全く生理痛がない方、ちょっと痛くなるけど痛み止めは飲まなくても大丈夫な方、痛み止めを飲んでなんとか動けるようになる方、痛み止めを飲んでも1日中寝込まないといけない方、痛みが強すぎて救急車を呼んで病院に運ばれる方も中にはおられます。生理痛がそれほど強くない方からすると、生理痛がひどくて学校や仕事を休むなんて……と思うかもしれませんが、痛くて動けない方も実際にはおられるのです。

生理痛に対する社会全体の理解不足も問題です。
日本には「生理休暇」というものが労働基準法の中に定められています。この制度は「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」としています。つまり、生理痛がひどい場合は仕事を休んでもいいと法律で決められているのです。しかしながら、2015年の厚生労働省の調査では、生理休暇を取得した人は女性従業員のうちわずか0.9%しかいませんでした。しかもこの生理休暇は多くの企業が無給扱いであり、生理痛がひどくて仕事を休む人のほとんどは生理休暇ではなく有給休暇として申請しています。

まだまだ男性の社員が多い日本の企業において、わざわざ生理休暇として申請しにくいという問題もありますし、そもそも生理休暇を知らないという方も多いのではないでしょうか。最近では生理休暇の充実を図り、さらに男性社員も対象とした生理への理解を深める研修を行う企業も出てきていますが、まだまだ社会全体として生理痛への理解は十分とは言えません。
中学校や高校での性教育において、男子生徒にも生理や生理痛についての知識をしっかりと知ってもらうことも必要ではないかと思います。

今回は生理や生理痛が起こる仕組みについて解説しました。生理痛はあって当たり前、我慢するのが当たり前と思っている方も多いかと思いますが、生理痛をガマンしても良いことは何もありません。痛ければ痛み止めを飲んだ方がいいですし、それでも痛みがあるようならピルや子宮内リングなどで改善する方法もあります。もしかしたら子宮筋腫や子宮内膜症といった病気が隠れているかもしれません。生理痛で困っている方は一度婦人科を受診し医師に相談してみてください。

山中 章義(やまなか・あきよし)/婦人科医・医学博士
茶屋町レディースクリニック副院長
滋賀医科大学医学部医学科卒業。滋賀医科大学附属病院にて初期臨床研修を修了後、滋賀医科大学産科学婦人科学講座に入局。関連病院で研鑽を積みつつ、大学院にて子宮内膜症・子宮腺筋症の研究を行い医学博士号取得。現在は大阪駅に程近い茶屋町レディースクリニックにて生理痛や生理に伴う症状で困っている多くの患者の診療にあたっている。

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