「この生理痛は病気レベル?」生理の辛さを“スコア化”すれば、婦人科受診の目安がわかる!

  • 作成:2021/09/02

生理痛はとても個人差があり、ほとんど痛くないという方から痛くて1日中寝込んでしまう方まで様々です。他人と比べることは難しく、毎月やってくる生理痛は当たり前のことであり、我慢するもの。そう思っていませんか? どの程度なら病的なのか、どれくらい痛くなれば受診したほうがいいのか、婦人科医の立場から皆さんにお伝えしたいと思います。

山中 章義 監修
茶屋町レディースクリニック 副院長
山中 章義 先生

この記事の目安時間は3分です

「この生理痛は病気レベル?」生理の辛さを“スコア化”すれば、婦人科受診の目安がわかる!

1) どのくらいのレベルから月経困難症なのか

毎月やってくる生理のことを医学的には「月経」といい、生理痛のことを「月経痛」と呼びます。月経痛は大なり小なり誰でも起こるため、痛みがあるからといって必ずしも異常とは言えません。

月経痛が強い場合、私たち婦人科医師は「月経困難症」という言葉を使います。この月経困難症の定義は、“月経期間中に月経に随伴して起こる病的症状”となっています。この定義には、どのくらい痛みがあれば月経困難症になるかという明確な基準はありません。痛みの感じ方は人それぞれであり、同じ痛みであってもそれほど気にならない人もいれば、痛くて耐えられないという人もいて、どこからが病的かというラインを引くのはなかなか難しいのです。

1つの基準としては、月経困難症スコアというものがあります。これは月経痛の程度と鎮痛薬(痛み止め)の使用頻度を点数化して月経困難症を客観的に評価できるようにしたものであり、3点以上であれば婦人科での診察や治療が必要としています。

月経困難症スコア

「この生理痛は病気レベル?」生理の辛さを“スコア化”すれば、婦人科受診の目安がわかる!

3点未満であれば婦人科を受診する必要がないというわけではありません。症状が強くなくても不快な症状であれば、それは月経困難症といっていいと思います。迷わず婦人科で相談してください。

2) 生理痛の原因は2タイプ。婦人科に相談しよう

生理痛が強くなる原因には(A)病気が原因となるものと、(B)何も異常はないが生理痛が強くなるもの、この2つのタイプに分けられます。

(A)病気が原因となるもの
生理痛が強くなる病気として子宮筋腫や子宮内膜症、子宮腺筋症という病気があります。それぞれの病気について詳しくはまた別の機会に説明しますが、どの病気も婦人科に受診をして診察しないと診断できないため、生理痛が強い場合は早めに受診をしてください。

(B)何も異常はないが生理痛が強くなるもの
子宮筋腫や子宮内膜症などの病気がなくても生理痛が強くなることがあります。前回の「生理痛、毎月こんなに辛いのは私だけ?」でも説明しましたが、生理痛は子宮内膜から放出されるプロスタグランジンが子宮を収縮させることにより起こります。プロスタグランジンの放出量は個人差があるため、放出される量が少なければ痛みはそれほど強くなりません。プロスタグランジンが多く放出されれば子宮は強く収縮し、痛みは強くなります。

3) 婦人科を受診したら、どんな検査をするの?

婦人科を受診した場合、どのような検査があるかも気になるところですよね。患者さんの症状や、性体験の有無などに応じて、以下の検査を行うことが一般的です。

〇 問診
診察の前に詳しくお話を伺います。いつ頃から痛みが強くなったのか、鎮痛薬はどれくらい飲むか、生理は順調か、生理の量は多くないか等、診断の手がかりとなる情報がないか探します。待ち時間の間に問診票に記入してもらい、診察室で医師からさらに詳しく病状を聞くことが多いです。

〇 内診
医師が手袋をつけて腟から指を入れて、もう片方の手でお腹を少し押さえながら子宮や卵巣の状態を調べます。腟の奥の壁が硬く触れたり、痛みがあるようであれば子宮内膜症という病気が疑われる場合があります。性行為の経験がない方には腟からの診察は行わないことが多いです。

〇 超音波検査
超音波検査はリアルタイムで子宮や卵巣の状態を知ることができ、子宮筋腫や卵巣腫瘍など多くの病気を診断することができます。超音波検査は臓器に近ければ近いほどよく見えるため、性行為の経験がある方であれば腟の中に「プローブ」と呼ばれる細い棒状の器械を挿入し、子宮や卵巣を検査します(経腟超音波検査)。

性行為の経験がない方は、腟からの診察はせずにお腹の上からプローブを当てる(経腹超音波検査)か、肛門からプローブを入れる(経直腸超音波検査)検査をすることになります。卵巣は通常子宮の背中側に位置していますので、経腹超音波検査では子宮が邪魔となり卵巣を正確に評価できないこともあるため、当院では性行為の経験がない方には経直腸超音波検査をお勧めしています。

〇 MRI検査
超音波検査だけでは診断が難しい場合や、悪性(がん)の可能性がないかどうかを詳しく調べるためにMRI検査を行うことがあります。
MRI検査は磁気の力を利用して身体の臓器や血管を撮影する検査です。子宮や卵巣が腫れていれば正確なサイズが測定でき、卵巣腫瘍であれば中に溜まっている液体が水なのか血液なのか、脂肪なのかまで詳細に調べることができます。婦人科を受診した方が全員受ける検査ではありませんが、場合によりMRI検査をお勧めすることがあります。

生理痛は他人と比べることが難しいため、受診するべきか悩む方も多いのではないでしょうか。生理痛に関して婦人科を受診する基準なんてありません。貴方にとって日常生活に支障が出る場合や、生理痛が不快と思えばそれだけで治療の対象になります。生理痛でお困りのことがあれば、遠慮なく婦人科を受診し相談してください。

婦人科医・医学博士
滋賀医科大学医学部医学科卒業。滋賀医科大学附属病院にて初期臨床研修を修了後、滋賀医科大学産科学婦人科学講座に入局。関連病院で研鑽を積みつつ、大学院にて子宮内膜症・子宮腺筋症の研究を行い医学博士号取得。現在は大阪駅に程近い茶屋町レディースクリニックにて生理痛や生理に伴う症状で困っている多くの患者の診療にあたっている。

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