自分らしい生き方をするためには、「軽度認知症」は薬だけに頼らず、生活の中でコントロールする

  • 作成:2021/11/13

認知症は、発症してからの期間が非常に長い病気です。そのため、認知症との付き合い方は認知症のステージによって異なっていきます。今回は、比較的軽度の認知症で、困った問題行動などが無い方を想定して、認知症を抱える上での生活の送り方についてお話いたします。

この記事の目安時間は3分です

自分らしい生き方をするためには、「軽度認知症」は薬だけに頼らず、生活の中でコントロールする

軽度の認知症は、サポートを得ながらやれることは自分でやる

認知症と診断されても、急に生活が変わるわけではありません。普段の生活では、今まで1人でできていたことは、継続して構いません。多くの認知症の方は、新しいことを覚えることが難しくなりますが、習慣になっている行動は比較的維持されます。少し時間がかかるかもしれませんが、むしろ継続したほうがよいのです。

ただ、多少の見守りは必要です。あまりに時間がかかったり、見守り自体を拒否したりするという時は、危ないことはやめることを検討します。たとえば、お鍋を焦がしてしまう場合は、少なくとも1人での料理は避けたほうが良いでしょう。自動車の運転は、他人が援助できないですし、事故が起きてからでは遅いので、認知症の診断がついたら、免許の返納をしてください。

人との交流、適度な運動、足腰を鍛えることで認知機能を保つ

認知症に良いこととしては、脳のトレーニングやパズルなど、何をしても良いですが、継続してできることが大切です。本人の人生や性格を反映しているもの、もともとの趣味と関連した内容を継続するものが良いでしょう。
また、家に閉じこもって孤独になることや、運動不足、睡眠不足や寝すぎなどで生活リズムが崩れることは、良くありません。できるだけ外出して、人と会い、足腰を鍛えて、生活リズムを整えておくことが大事です。家族だけで抱え込まずに、介護保険制度を利用して、ケアマネジャーさんと相談し、デイサービスや運動リハビリを導入するも良い方法です。サービスを導入して毎週決まった曜日、時間に日課を入れることで、生活のメリハリもつきやすいですし、継続もしやすいでしょう。

可能であれば、旅行や、家族で集まるなど、思い出をたくさん作ると良いでしょう。会話の中で昔の経験を語ることは、回想法とも言われ認知症のリハビリに良いと言われています。また、若い世代への知識・経験の受け渡しというのは、高齢期における大切な役割とも言われています。

このような認知症に対する薬以外の対応のことを「非薬物療法」と言います。

認知症の進行を遅らせる薬は副作用を理解して適切に使う

アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症には、進行を遅らせる薬があります。認知症を治すことや、進行を止めることはできませんが、適切な時期に薬を開始することで、機能が比較的保たれている時間を確保することができます。ご家族にとっても、今後の準備をしていく大事な時間になります。

認知症と診断されたら、医師から薬が処方され、副作用がない限りは原則としてずっと飲み続けることになります。「アセチルコリンエステラーゼ阻害薬」と言われる種類の薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)は、嘔気(吐き気)、ふらつきなどの副作用を起こすことがあります。「グルタミン酸受容体阻害薬」のメマンチンは、めまいなどの副作用を起こすことあります。

医師の指示通り少量から始めることで、多くの副作用は出現しにくくなります。何らかの副作用があったときは、我慢せずに医師とよく相談して継続か中止を検討してください。ちなみに認知症になる前に、これらの薬を飲んでも、効果は乏しいと言われています。また、いつまで飲むかは悩ましい問題ですが、目安として末期という時期では、中止の判断も検討されます。

高血圧、糖尿病などの生活習慣病の治療も認知症に対して重要と言われていますので、医師とよく相談してください。ただし薬の種類が多くなると、認知機能に影響したり、転倒のリスクになったり、思わぬ副反応につながることもあります。

ここまで解説してきましたが、認知症は薬物療法よりも、生活に直結する非薬物療法が大事であると私は考えています。認知症であっても、本人らしい生活、人生をどのように維持しようか、という視点で生活を考えることが大切なのです。

まとめ

② 認知症になっても、その人らしい生活を維持することを考える。
②1人でできないことは、やめることを検討する。
③ 孤独を避けて、運動、外出、生活リズムを維持する。
④ 思い出を作り、知識や経験を共有する
⑤薬は、進行を遅らせる効果があるが、確保した時間で何をするかを考える。

千葉 悠平

精神科医 医学博士
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医 指導医、日本認知症学会専門医 指導医、積愛会横浜舞岡病院 医師
YUAD 代表

認知症の早期診断、画像診断、バイオマーカーなど、認知症について総合的に臨床・研究を行っている。

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