「後悔しない生き方」のために、精神科医が実践する「2つのルール」

  • 作成:2021/12/25

AskDoctorsに寄せられたお悩みをマンガで紹介し、医師からの回答を紹介する本シリーズ。今回ご紹介するのは、「後悔しない生き方」について考える男性のご相談です。

堤 多可弘 監修
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷  副院長/精神科医・産業医
堤 多可弘 先生

この記事の目安時間は3分です

「後悔しない生き方」のために、精神科医が実践する「2つのルール」 「後悔しない生き方」のために、精神科医が実践する「2つのルール」

【今回のお悩み】
直接、病気の相談ではないのですが、先生方は患者さんの死に直面する事もあるかと思います。 後悔しない人生を送るために、先生方はどんなことに気をつけていらっしゃいますか? 先生のご回答を参考にして、いつ死んでもいいように後悔のない人生を送りたいと思っておりますのでご回答宜しくお願いします。(30代・男性)

医師の回答

やりたいことの達成、やり残しのない人生は望ましいが…

【はじめに】
ご質問ありがとうございます。非常に深いテーマですね。
私自身も模索しながら人生を送っているのですが、私なりの考えをお答えしたいと思います 。

私が考える後悔のない人生は、
「やりたいことが何か達成できた」「やり残しを残さなかった」と思える人生です。

ところが、普通に考えるとこれがとても難しいものだとわかります。

なぜなら人はいつ死ぬかわからないですし、例え死ぬ時がわかっていてもその時点で何かを達成出来ているとは限らず。道半ばのことが多いでしょう。おそらく私もそうです。

また、「あれもやりたかった、これもやりたかった」とやり残したことで未練を残すことも当然あるでしょう。

そこで私は、”2つのことを信じておくと、少なくとも後悔の心配をせず勇気を持って生きることができる”と考えています。

(1)自分は大きなストーリーの中を生きている
(2)目の前のことをやっていれば必ず何かにつながる

例え達成できなくても、誰かに影響を与え、続いていく

ひとつずつ解説していきます。

【1 自分は大きなストーリーの中を生きている】

何か達成しようと思っていたのに道半ばになってしまっても、大きなストーリーの中を生きているような感覚を持っていると、後悔の心配が減るはずです。

あなたに明確な達成したいことがあれば、それをだれかが引き継いでくれたり、取り組みそのものが誰かに影響を与え、受け継がれていくと考えるのです。

例えば、アメリカで人種差別に立ち向かったキング牧師は道半ばで倒れてしまいましたが、今でも彼のスピーチは多くの人の心を動かし、差別是正に向かう人々の背中を押しています。もし、自分の取り組みが失敗してしまってもそれは無意味ではありません。失敗は成功の母といわれるように、その取り組み自体が達成への大事なヒントになるはずです。

こう考えられるようになるには、”自分のやっていることをちょっと大きな枠で考える”のがよいと思います。別の言い方をすると”自分のやっていることに一歩進んだ意味づけをしてみる”とも言えるかもしれません。

会社に勤めていたら、”その会社がある町・国・世界や環境・未来に、会社や仕事を通してどんな貢献をしてるか”と考えるのです。缶コーヒーCMのコピーにあるように、”世界は誰かの仕事でできている”と考えて、自分の仕事が他の誰か、あるいは未来の誰かのためになるとイメージするのです。

一方で、人生で何かを達成しようとか、大きな目標を考えようというのは難しいかもしれません。また、目標に突き進むあまり何かやり残してしまうのでは? と不安になるかもしれません。
それに対しては2つ目の考え方を持っておくといいと思います。

「無駄なことでは?」と考える必要はない

【2 目の前のことをやっていれば必ず何かにつながる】

Apple の共同設立者スティーブ・ジョブズは「Connecting the dots」という有名なスピーチを残しています。まずこちらをご紹介します。

「点と点のつながりは予測できません。 あとで振り返って、点のつながりに気付くのです。今やっていることがどこかにつながると信じてください。その点がどこかにつながると信じていれば、他の人と違う道を歩いていても自信を持って歩き通せるからです。それが人生に違いをもたらします」(※1)

※『名言のクスリ箱 心が折れそうなときに力をくれる言葉200」(大山くまお著、SB新書)より

あのスティーブ・ジョブズでさえ、目の前でやっていることが何に繋がるかは予想がしきれないと言っています。一方で、必ず何かにつながるから信じてやり通そうと彼は言っています。

さまざまな経験や知識が、思いがけないところで役に立ったり、組み合わさったりすることで新しい発想に行きついた経験は誰もが持ってるのではないでしょうか? 今やっていることが「何か役に立つのだろうか?」とか「無駄にはなったりしないだろうか」とは考えなくていいということです。

もしあなたが、今少しでもやりたいことがあるならばぜひ取り組んでみて下さい。
必ず何かにつながっていくはずですし後悔はしなくなるはずです。

人生を難しく考えすぎないシンプルさ

【まとめ】

少しはイメージを持っていただけたでしょうか?
とても簡単にまとめてしまうと
「自分のやっていることに一歩進んで意味づけしてみて」
「やってみたいと思うことを思いきってやってみる」
こうなると思います。

もちろん、人生の考え方は様々ですから、これが絶対的な答えではないと思います。
また、今回は一旦病気などとは切り離したお話をしました。
もしあなたの心身の調子が悪く、辛い気持ちが強ければこういったことを考えるのは少ししんどいかもしれません。そういう時は無理をせずちょっと休憩したり、医療機関で相談したりするといいと思います。

最後に、もう一つだけある言葉を紹介します。
『スラムダンク』や『バガボンド』などで知られる漫画家の井上雄彦さんが、100年以上にわたって建設が続くサグラダ・ファミリアと、そこで働く職人さんを見たときの言葉です。

「出会った職人たちには、ことを離しく考え過ぎないシンプルさがあった。そこが印象に残った。この仕事の意味、世の中に与える影響、哲学等、考えはあるのかもしれないがそこにはまり込んだりはしていない。そもそも言葉になっていない。
全体のうちの一部分であり、それを全うすること。それでいっさい過不足はないという姿勢。
あれこれ何にでもなろうとしていない。自分であること。
自分であるとは、全体のうちの一部分たる自分の、その全部を全うすること。
与えられた役割を全うすること。
ガウディから与えられた役割。
それはきっと神から与えられた役割。
『この仕事の意味』とかを考える必要はさしあたってないってことだ。

(中略)

ただ全うする。没頭する。楽しむ。シンプルに、好きなことに打ち込むことで十分。
目の事の仕事に自分を捧げる。自分の持ち場で全力を尽くす。そこまででいいんじゃないか。
その先はなるようになる。そうできているんだろう。」

※『pepita~井上雄彦 meets ガウディ』(井上雄彦著、日経BP)より

弘前大学医学部卒業後、東京女子医科大学精神科で助教、非常勤講師を歴任。 現在はVISION PARTNERメンタルクリニック四谷の副院長とスタートアップへのアドバイザー業務を務めるとともに、企業や行政機関の産業医を10か所以上担当。ブログや著作、研修などを通じて、メンタルヘルスや健康経営、産業保健の情報発信も行っている。 共著に「企業はメンタルヘルスとどう向き合うか―経営戦略としての産業医 」(祥伝社新書)がある。

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