だれもが1~2つは抱えている?ストレス増幅装置「べき」の呪いを解く方法を、精神科医が語る

  • 作成:2022/07/09

新型コロナの感染拡大によってリモートワークが普及するなど、変化のスピードがますます速くなる今日。ちょっとしたことで動じないメンタルや、たとえ凹んだとしてもしなやかに立ち直る「レジリエンス」は、以前より増して重要になっています。そこで、産業医・精神科医の堤多可弘先生を講師に招き、「『動じないメンタル』の保ち方セミナー」を開催しました。当日の様子を5回シリーズでお届けします。第2回は、ストレス増幅装置である「べき」の呪いを解く方法についてご紹介します。

堤多可弘 監修
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷  副院長/精神科医・産業医
堤多可弘 先生

この記事の目安時間は6分です

ABC理論とは?出来事が結果を生んでいるわけではない

今回からレジリエンスを高めるための具体的な方法についてお話しします。世の中からストレスがなくなることはないので、どんな事態になってもストレスを小さく受け止めるにはどうしたらいいか、その対処法をお伝えできたらと思います。

身の回りに何かの出来事が起きると、私たちは何らかの感情が芽生え、一つの行動へと帰結していきます。例えば、以下のような流れです。
(1)上司に怒られて不安になり、それを挽回するために仕事で徹夜した。
(2)犬がいた。かわいいと思って頭をなでた。

ただ、こうした出来事が直接、行動に結び付いているわけではありません。私たちは、出来事が起きた後に、反射的に何らかのとらえ方、考え方というものを間に挟んでから一つの行動を起こしています。

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これは【出来事=Activating events】を【どのように受け取るか(思考・信念・考え方)=Belief】によって【結果(感情・行動)=Consequences】が決まるという考え方のことで、この頭文字をとって「ABC理論」(※)といわれます。
このことをしっかり押さえておいてください。ここに意識的になるかどうかで受け取るストレスの量は随分と変わってくるからです。

この受け取り方によって、結果(感情・行動)は変わってきます。一つの事例として、“会社の廊下で仲良しの先輩に挨拶したが、先輩は軽く会釈しただけですぐに立ち去ってしまった”というケースを考えてみましょう。
これに対していろいろな受け取り方ができますが、ある人は「何か自分が先輩に粗相したかもしれない」と不安な気持ちになるでしょう。その一方で、「先輩とはいえ挨拶すべきだ」と怒りを感じたり、「先輩はお疲れかな。後で差し入れでもしようかな」と思ったりする人もいるかもしれません。

このように同じ出来事でも、受け取り方一つでその結果は大きく変わることをご理解いただけるのではないでしょうか。つまり出来事はコントロールできないが、受け取り方はコントロールできるということです。自分が普段どのように物事の受け取り方をしているか自覚的になることで、ストレスを減らすことは可能だといえるでしょう。

※参考文献…『現実は厳しい でも幸せにはなれる』(文響社)アルバート・エリス(著) 齊藤勇(訳)

「~すべき思考」が危険な理由とは

前述した物事の【受け取り方(思考・信念・考え方)=Belief】は人それぞれに癖があって、以下のように10種類ぐらいあるといわれています。 だれもが1~2つは抱えている?ストレス増幅装置「べき」の呪いを解く方法を、精神科医が語る

このうち「全か無かの思考」とは、物事を白か黒かどちらかで考える癖で、例えば、「売り上げが前期より増えたけど、目標を下回っていたから今年は全然できてない」と決めつけるといった傾向のことです。

ここで列記した癖の中で、丸で囲っている「〜すべき思考」に注目していきたいと思います。その理由は、この「〜すべき思考」は取扱注意といえるような強力なもので、誰もが心の中に必ず1個や2個持っているからです。具体的には「仕事は完璧にやるべきだ」「上司は常に部下を気遣うべきだ」「成績は常に一番になるべきだ」「家族を優先すべきだ」「彼氏・彼女を優先すべきだ」などですが、心当たりはあるのではないでしょうか。

この「〜すべき思考」がなぜ取り扱い注意なのかというと、「〜すべき」と言った後に必ず誓約(約束)を設けてしまうからです。これこそが「べきの呪い」というもので、例えば、「成績は一番にならなくてはいけない」「絶対志望校に合格しなくてはならない」と思ったら、その後に「そうでないと意味がない」と自分で決めつけてしまうケースが多いことがあると思います。

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「絶対遅刻しちゃいけない」→そうしなければ、学生失格。
「育児は完璧にこなすべき」→そうでないと親失格。
このように「〜すべき思考」は、制約(縛り)と誓約(約束)の両面を持っていてその結果として大きなストレスを生み出してしまうのです。

もちろん、これは悪い面だけではありません。このおかげで成長が促されることもあるのですが、この「〜すべき思考」に縛られすぎると、その呪いが強すぎて精神的につらくなってしまうのです。
例えば、体調を崩す企業の管理職の方からは、大体この辺のセリフが出てきます。
「仕事は完璧にやるべき、営業成績は一番であるべき。そうでないとやる意味ないじゃないですか」
「上司は常に部下を気遣うべき。それなのに配慮が足りずに部下を追い詰めてしまった自分は上司失格だと思う」

確かにそういう面もあるかもしれませんが、そもそも常に完璧、一番であり続けるためには、過度のストレスを強いられるのは明らかです。そこで、ぜひやってほしいのは、自分の中にこうした「〜すべき思考」を見つけたら、「本当にそう?」と疑問を投げかけること。そうやって「べきの呪い」を緩めてやってほしいのです。

対策として「3段リスト」を作ろう

この「べきの呪い」をさらに緩める方法として、「3段リスト」を作ることをおすすめします。それは、私たち現代人が日々やらなくてはいけないタスクを以下の3つに分けていくのです。

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まず日々やらなくてはと決めていることでも、できればやった方がいいものや、やらなくても何とかなるものは「To Wish」のリストに入れてください。例えば、窓拭きは寝不足になってまでやることでしょうか。時間的に余裕があるときにやることでいいはずなのでTo Wishのリストに入れるといった具合です。

次に「Not To Do」のリストですが、ここが非常に大事です。例えば、毎日手料理すると決めていたことがストレスになっていたら、To Doのリストから外して週1回は弁当を買うようにする。また、仕事のメールはすぐ返信することを決めていて、それがストレスだったら、夜8時以降はメール返さないなど部分的にNot To Doにすることも可能だと思います。

忙しいはずなのに、どこか余裕があるように見える人は、Not To Doリストの作り方がうまいことが多く、やらないことをしっかり決めています。8時以降メール返信についても、そうしないと周りからダメな奴だと思われると決めつけていたらこれこそ「〜べきの呪い」です。夜メール返信をしなくても仕事ができる人は多くいるのでご安心ください。

VISION PARTNERメンタルクリニック四谷 副院長/精神科医・産業医
弘前大学医学部卒業後、東京女子医科大学精神科で助教、非常勤講師を歴任。 現在はVISION PARTNERメンタルクリニック四谷の副院長とスタートアップへのアドバイザー業務を務めるとともに、企業や行政機関の産業医を10か所以上担当。ブログや著作、研修などを通じて、メンタルヘルスや健康経営、産業保健の情報発信も行っている。 共著に「企業はメンタルヘルスとどう向き合うか―経営戦略としての産業医 」(祥伝社新書)がある。

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