いざという時のために“防災を持ち歩く”を習慣に 一人にひとつの「防災ポーチ」

  • 作成:2022/06/27

今年に入り、東北や関東、九州地方、北陸地方などの地震速報を頻繁に目にするようになり、これまで以上に地震や災害に対する備えが身近なものとなってきました。 地震はいつ何時にやってくるか予想できません。飲料水や食料の備蓄はしていたとしても、もし出先で大規模な地震にあった場合、どうしたらよいのでしょうか。そこで今回は、出先で困らない防災対策を Dr.ソナエル氏にうかがいました。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

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いざという時のために“防災を持ち歩く”を習慣に 一人にひとつの「防災ポーチ」

災害が発生するのは自宅にいる時とは限らない

2011年3月11日の東日本大震災から11年が経過し、震災の追悼式典も徐々に縮小傾向となっています。しかし直近の約数カ月を振り返ってみても、下記のように大規模の地震が6回も発生しています。

  • 1月4日:父島近海を震源とする最大震度5強
  • 1月22日:宮崎県東部沖(日向灘を震源)の最大震度5強
  • 3月16日:福島県沖を震源とする最大震度6強
  • 3月18日:岩手県沖を震源とする最大震度5強
  • 4月19日:福島県中通りを震源とする最大震度5弱
  • 5月22日:茨城県沖を震源とする最大震度5弱

そのため防災について意識をしたり、自宅に食料や水などの備蓄を行う方は増えていらっしゃると思います。しかし、災害は自宅にいるときに発生するとは限りません。とりわけ発生予知が困難な地震においては、仕事先、通勤途中、外出先で被災する可能性が十分にあり、自宅以外でも常に防災を意識しなければなりません。
大都市で大きな地震が発生した場合、電車や交通機関がマヒして「帰宅困難者」となり、3日間程度は職場や商業施設などで待機しなくてはならない場合もあります。
そんな時に身を守ってくれるものが「防災ポーチ」です。

一人ひとつずつ持ち歩くべき「防災ポーチ」

「防災ポーチ」とは、緊急時に使用する必要最低限の防災グッズを入れたポーチのことです。Every Day Carry(EDC)と呼ばれることもあります。

防災の備えは3段階に分けて考えます。
まず、外出先で被災した時のための「0次の備え」、自宅から緊急避難するための「1次の備え」、自宅を離れて長期的に避難生活を送る「2次の備え」です。
つまり、防災ポーチは「0次の備え」となり、よくある非常用持ち出し袋(防災リュック)は「1次〜2次の備え」となります。そのため防災ポーチは一家にひとつではなく、一人ひとりがカバンに入れておくべき備えです。

防災ポーチの中に入れておきたいもの

防災ポーチに備えるおすすめのグッズを紹介します。

  • 防災ポーチ本体
  • LEDライト
  • ホイッスル
  • 保温用アルミブランケット
  • 除菌シート
  • ティッシュ
  • ハンカチ(またはバンダナ)
  • 救急セット(絆創膏など)
  • マスク
  • 携帯トイレ
  • 口腔ケアグッズ(歯磨きシートや携帯用マウスウォッシュなど)
  • グローブ(または軍手)
  • レインコート
  • 現金(千円札と小銭)
  • 携帯ラジオ
  • 乾電池式モバイルバッテリー
  • 家族の連絡先などを書いたメモ
  • 家族の写真
  • ちょっとした食料(飴やようかんなど)

本当に必要な防災グッズは人によって異なるため、これらをベースとして自分に必要なグッズを取捨選択します。たとえば、小さな子どもを連れて外出することが多い場合はオムツやお菓子を入れておく必要がありますし、女性なら生理用品、コンタクトレンズを使用するなら予備のコンタクトレンズ、病気で薬を飲んでいる方は予備の薬などを入れるようにします。
逆に、普段からバックに入れて持ち歩いているものは省くということもできます。

防災ポーチをどうそなえるか

ネットショップなどで見かける市販の防災ポーチは、いろいろな防災グッズがまとめて入っており多種多様です。例えば、無印良品は防災用品に力を入れていて、日ごろの生活でも使えて災害時にも役立つものがそろっています。特に「いつものもしも持ち出しセット」のように、必要最小限のグッズが網羅された完成形のポーチは、これから購入を検討している方にも参考になると思います。

しかし完成されたものは、あまり中身を確認せずに買ってしまうと、それだけで満足してしまう場合もあります。買いっぱなしにするのではなく、中身を確認し、自分にとって足りないものを足したり、定期的に中身を見直したり、使ったものは補充するということが重要です。

また、実は防災ポーチの中身は、ほとんどが100円ショップで手に入るものです。防災を意識するきっかけとしても、ご自身で必要なものを吟味し、コストを抑えながらそなえて、防災ポーチを作ってみてはいかがでしょうか。

防災ポーチの重さの目安

防災ポーチは非常用持ち出し袋とは異なり、毎日カバンなどに入れて持ち運ぶものになります。あまり重いと、そもそも持ち歩くのが億劫になってしまい、本末転倒です。ですので、コンパクトで重くならないようにグッズを厳選するのがおすすめです。

また、必要なものをあれこれそなえていくと当然重くなりますし、軽くしようとすると何かを削らなければなりません。そのバランスが難しいところではあります。私の場合、軽さよりも防災用品の充実を優先しているため、約1700gとかなり重量級の防災ポーチを持ち歩いていますが、一般的には重さは500mlのペットボトル1本分以内、つまり500g以内におさめるのが目安となります。

とにかく軽く、コンパクトに備えたいというミニマリストの方々は、以下の最低限、重要度が高い、または命を守ってくれるグッズだけでも備えておきましょう。

  • 防災ポーチ本体(ファスナー付きの密閉用ビニール袋で代用可能)
  • LEDライト
  • ホイッスル
  • 携帯トイレ
  • 保温用アルミブランケット
  • ハンカチまたはバンダナ

明かりがなければ暗闇で動くこともできませんし、閉じ込められた場合に声を出し続けて助けを呼ぶことは難しいためホイッスルは必須です。トイレを我慢することは難しく、低体温は命に関わります。ハンカチやバンダナはけがをした場合に固定や傷当てとして使用したり、火災時は口と鼻に当てて煙を防ぐこともできます。

防災ポーチだけでなく、家族内でいざという時の行動を決めておく

防災ポーチは自らの命を守ってくれる重要なグッズです。しかし、災害時は自分だけでなく家族の安否も心配しなくてはなりません。外出先で被災し、交通機関がマヒして帰宅困難者となる可能性もあります。

災害が発生した時の行動や連絡手段(災害用伝言ダイヤル 171、携帯電話伝言板サービス、LINEなどのSNS)、落ち着いたあとの家族の集合場所など、常日頃から防災家族会議で災害をシミュレーションしておくことが大切です。その上で防災ポーチを持ち歩き、防災を身につけることが非常に重要と言えます。

消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、総合内科専門医

神奈川県生まれ。現在は関東で内科医として勤務。
長男誕生をきっかけに家族を守るということに直面し、防災に目覚める。知識を得ていくにつれ防災にのめり込み、現在では防災好きが高じてInstagramやTwitterで防災対策を発信している。
認定特定非営利活動法人 日本防災士機構認証 防災士。

Twitter:@Bousai_love_Dr
Instagram:bousai_daisuki_doctor
ウェブサイト「Dr.ソナエル@内科の防災図書館」

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