チームの生産性をあげるなら、「心理的安全性」を見直そう

  • 作成:2022/09/13

社員のモチベーションの低下に悩む経営者の方は多く、メンタルケアは仕事に直結する問題です。この問題を解決するには、コミュニケーションの改善が必要となってきます。 チーム運営におけるマネジメントには、このコミュニケーションの改善問題がつきものです。 そこで今回、AskDoctorsでは、産業医の平野井啓一先生に、「現役産業医の成功マネジメント」というタイトルでセミナーにご登壇いただきました。 働く方の健康に対して医学的なアプローチだけではなく、コミュニケーションの改善問題など、非常に多方面からマネジメント問題について切り込んで深掘りした内容になっております。 そのセミナーの模様を全3回に分けた本シリーズ第2回は、心理的安全性についてお伝えします。

平野井 啓一 監修
株式会社メディカル・マジック・ジャパン、平野井労働衛生コンサルタント事務所 代表取締役 / 産業医
平野井 啓一 先生

この記事の目安時間は3分です

チームの生産性をあげるなら、「心理的安全性」を見直そう

心理的安全性とは

心理的安全性という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態が、心理的安全性が高い状態です。

社員が意見を言ったときに、その意見を許容してもらえる、認めてくれる、またはその意見に対して否定ではなくしっかりと対応してくれる。発言した人が不利にならないという安全性が担保されている職場は、心理的安全性が高い職場となります。

この心理的安全性というのは、組織運営で今注目されている考え方です。心理的安全性が高いことによって、組織の生産性はあがり、逆に低いとメンタル不調者が増えて生産性が下がると言われています。

職場の心理的安全性が低くなると?

職場の心理的安全性が低くなると、その組織の生産性は落ちてしまいます。それはなぜでしょうか?

自分が意見を言ったことで責められたり否定されたり、もしくはひどい場合はパワハラやいじめにあうということが出てきた場合、対人関係のリスクがあがっている状態といえます。

対人関係のリスクがあがると、仕事に行くだけでも胃が痛くなる、仕事に行く前の日は眠れないというような状態に陥りやすくなる傾向があります。

これは心理的安全性が低い状態です。

意見を言いにくい職場、つまり心理的安全性の低い状態での若者はどうなっていくかというと、どんどん消極的な対応をとるようになります。積極的に動いてくれる人が少なくなるということは、当然生産性も低くなり、メンタル不調者が増えたり、離職率もあがっていきます。

例えば老舗のお店の後継者問題も、実はこの心理的安全性が関わっているのです。

後継していくお弟子さんたちがどんどん辞めてしまうという話がありました。

昔からあるものを守っていかなければいけないので、どうしても指導が厳しくなってしまい、指導する側が怒鳴っている話も珍しくありません。

細かく注意もされるし、一生懸命作ってもなかなかお客さんの前にはださせてもらえなかったり、お弟子さんにとっては辛い状況が続きます。

指導とはいえ自分のやったことが全て否定されてしまうと、やはり心理的安全性が低い状態になってしまい、最後は辞めてしまうのです。

ではどんな指導をすれば、心理的安全性は高くなるのでしょうか。

心理的安全性を高めるには

出来てないことだけを指摘していくと、相手は取り組んでいること全て否定された気持ちになります。

指導する前に少しできていることを伝え、その後に直してほしい改善点を伝えてみましょう。

「ここの仕上がりは綺麗だね」と褒めてから、「完成までの時間がもう少し早くなればいいかな」というような指導をすることで、出来ていることが認められていると相手に伝わります。

これを繰り返していくことで心理的安全性が高くなり、結果的に離職率も低くなっていきます。

心理的安全性は、普段から見張られているか、それとも見守られているか、どっちに感じているかによって変わってくるのです。

例えば、Aさんが仕事を一生懸命頑張ってやっていることに対して、上司が何も言わないとします。

上司の方からすると、その仕事に問題がないから何も言っていないだけですが、何も言わないことが、実はAさんの不安を助長させている可能性があるのです。

何も言わないというのは、組織心理学では「暗黙の叱責」とも言われています。

Aさんは、自分のやっていることが合っているのか分からない、、自分の頑張りを見てもらえているのか不安という気持ちになってしまう可能性があります。

自分の頑張りを見てもらえていないと感じた場合、「認めてもらえないなら、こんなに頑張らなくてもいいのかな」と積極性がさがり、マイナスを産んでいくことに繋がるのです。

心理的安全性を高めるには、「できていることも、ちゃんと伝えてあげる」ということが大事になってきます。

できて当たり前ではなく、認めてあげるということが大切です。

行動是正と行動強化

行動是正というのは、マイナス面を一緒に考えて直していくことです。

一方、行動強化は既に出来ている良いところをさらに伸ばすためにはどうしたらよいか、もしくはそれをシェアしていくためにはどうしたらいいかを考えていくことです。

これは、マイナスをゼロに、プラスはさらに伸ばしていくというコミュニケーション設計になります。

行動是正と行動強化を取り入れることができれば、一方的に否定されてしまうような指導がなくなり、指導を受ける側も指摘を次に活かしていこうというプラスの気持ちが強くなり、現状をより良くするための会話も増えます。

認めていくことが心理的安全性を高める一歩(まとめ)

できているところや頑張っているところを認めてから指摘をしていく。こうしたコミュニケーション設計を組むことで、コミュニケーションが円滑になり、心理的安全性が高い環境になっていきます。

心理的安全性を高めていくことで、離職率が減り、積極的に動く社員が増え、最終的には会社の利益にも繋がっていきます。

株式会社メディカル・マジック・ジャパン 代表取締役
平野井労働衛生コンサルタント事務所 代表

日本産業衛生学会指導医/社会医学系指導医労働衛生コンサルタント(一社)/日本アンガーマネジメント協会ファシリテーター/叱り方トレーナー/ハラスメント防止アドバイザー(一社)/日本ほめる達人協会特別認定講師温泉ソムリエ/SBS東芝ロジスティックス株式会社本社統括産業医

上記ほか、アマゾンジャパン、損保ジャパン等約20社の嘱託産業医を務める。また実践的なパワハラ対策として、感情のコントロール手法としてのアンガーマネジメント研修や褒める管理職研修と数多く開催。

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