【症状】認知症で見られる具体的な症状は?

  • 作成:2022/11/25

認知症では、人それぞれさまざまな症状が現れます。本記事では、認知症になった際に現れる、主な症状を具体例と合わせてご紹介します。

石飛信 監修
医療法人 全人会 仁恵病院 副院長
石飛信 先生

この記事の目安時間は6分です

認知症の主な症状

認知症では、人それぞれさまざまな症状が現れます。これは、脳のどの部位に機能不全が起きたかによってどのような認知機能が障害されるかが変わることや、こうした認知機能低下がどのような身体的・心理的な影響を与えるかも個々人で異なるからです。認知症の症状を大きく分類すると、記憶力や理解・判断力の低下といった「中核症状」と、中核症状をベースに身体的・心理的・環境的要因の影響を受けて出現する「行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)」の2つに大別できます1)

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■ 中核症状

中核症状は、脳萎縮の起きる部位や認知症のタイプにより個々で異なりますが、主な認知機能障害は8つに大別されます1)

1.注意力・集中力を維持することができない(全般性注意障害)
例)これまでは得意だった料理で失敗することが増えてきた
例)自動車の運転ミスが増えて、車に「こすり傷」が多くなってきた

2.仕事や家事の“段取り”ができず、うまく物事を進められない(遂行機能障害)
例)これまでは簡単にできていた、夕食の「献立」がうまく考えられなくなってきた
例)これまでは簡単に操作できていた、テレビ番組の録画に手こずるようになってきた

3.自分の体験した出来事そのものを忘れてしまっている(記憶障害)
例)遠い親戚の人の「名前」でなく、その人と「面識があること」そのものを忘れている
例)旅行で行った観光地の「名前」でなく、その場所に「行った体験」そのものを忘れている

4.読み書きができなくなったり、文字を書けなくなったりする(失語)
例)新聞を読めなくなった、読むのが大変になってきた
例)自分で書いたメモが読めない

5.計算ができなくなる(失算)
例)レジで財布から「何円を出せば良い」のか計算できない
例)バスの運賃を支払うのに、どの小銭をどれだけ出せばよいのかわからない

6.よく知っている場所で迷子になる、時計を読めなくなる(視空間認知障害)
例)近所の行き慣れたスーパーへ買い物に行こうとして、迷子になる(地誌的失見当識)
例)家の壁などに、存在しないはずの“虫”が見える(幻視)

7.スムーズに体を動かすことができず、使い慣れているはずの道具を使えなくなる(失行)
例)「ハサミ」をどうやって使えば良いのかわからなくなる
例)今まで使っていた「電子レンジ」が使えなくなる

8.相手の表情を読み取ったり、周囲の状況を踏まえたりすることができず、節度ある社会的行動ができなくなる(社会的認知の障害)
例)台風が来ているのに、おかまいなしにいつも通りの散歩へ行こうとする
例)映画館で大声で電話をし始めるなど、これまでは絶対にやらなかったような行動が増えてきた(脱抑制)

こうした中核症状が現れると、家事や仕事を以前のようにこなせず、一人で安全に生活を送ることができなくなる等、日常生活に大きな影響が生じます。認知症が進行すると、これらの症状の深刻度は、しだいに増していきます。
その一方で、認知症患者さんは自分の認知機能の低下を自覚できないことが多いです。そのため、認知症の診断時には、患者さん本人だけでなく、家族や介護者にも問診を行い、該当する症状がないかを確認します。

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■ 行動・心理症状(BPSD)

行動・心理的症状は、認知症の中核症状を基盤に、身体的・心理的・環境的な影響を受けて現れる症状です。現れ方は人によってさまざまですが、一般的によくある症状としては、以下のようなものがあります1)

1.怒りっぽくなる、些細なことで腹を立てる
例)食事の際、お箸の位置がいつもと少し違っただけで物凄く怒り始める
例)買い物の際、自分の買いたいものが品切れしているだけで物凄く怒り始める

2.気力や意欲が低下する
例)好きだった相撲中継に、全く興味を示さなくなった
例)好きだった本を、全く読まなくなった

3.感情が不安定になり、強い不安を感じる
例)貯金があるか不安になって、貯金通帳を毎日のように確認している
例)家の戸締りが不安になって、不必要なほどたくさん鍵をつけようとしている

4.自分の持ち物が見つからないと、誰かに盗まれたと決めつける
例)ハンコが見つからないので、「出入りしている看護師さんが盗ったに違いない」と決めつけて怒っている
例)以前に自分が処分した車なのに、家にないので「誰かに盗られた」と勘違いして大慌てしている

たとえば中核症状によって家族を認識できなくなってしまうと、その人にとっては“自分に会いに来てくれる家族がいない”ことになり、強い不安や孤独を感じることになります。あるいは、印鑑をどこに収納したのかわからなくなり、どれだけ探しても見つからないときに、“見知らぬ人”が家の中にいたら、「盗まれた」と疑うのも無理はありません。このように、行動・心理的症状は、いずれも中核症状をベースにして起こることがほとんどで、認知症の周辺症状ともいわれます。

1) 日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」

2003年福井大学医学部卒。福井大学神経科精神科助教を経て、2013年国立精神・神経医療研究センター 思春期精神保健研究室長。2023年より仁恵病院副院長。現在、主に精神科救急医療に従事。専門は児童精神医学。児童のメンタルヘルス向上を目的とした「かかりつけ医等発達障害対応力向上研修」、「児童思春期の精神疾患薬物療法ガイドライン作成」に責任者として携わった。日本精神神経学会専門医・指導医、精神保健指定医、日本児童青年精神医学会認定医、子どものこころ専門医、日本臨床精神神経薬理学会専門医、日本医師会認定産業医、医学博士。

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