家族が認知症と診断されたら-やっておくこと/接し方/注意点

  • 作成:2022/11/11

認知症は、家族の生活に大きな影響を与えます。ご家族が、認知症や軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:以下MCI)と診断された場合、どのようなことを行えばいいのでしょうか。 本記事ではMCIのうちにやっておくことや、MCIおよび認知症患者さんへの接し方などを、筆者の体験を交えてご紹介します。

石飛信 監修
ありまこうげんホスピタル 診療部長
石飛信 先生

この記事の目安時間は6分です

家族が認知症と診断されたら-やっておくこと/接し方/注意点

MCIとわかったら

MCIは、早期に適切な対策を講じることで、症状の進行を遅らせたり、緩和できたりする可能性があります。以下は、有効とされる対策の例です1)2)

MCIの症状緩和・進行抑制の対策例

  • 食事に気をつける(バランスよく、高カロリー・高脂肪食を控える。青魚やポリフエノールを含む食品をとる、など)
  • 適度な運動(ウォーキングなどの有酸素運動、週に3回ほどの軽い運動)
  • 認知機能を高めるトレーニング(新聞や本を読む、楽器などの演奏、ゲームなど娯楽を楽しむ)

このほか、料理をすることもよいといわれています。料理は、メニューの構成、材料の購入、段取りなど、頭の中で組み立てる作業も必要になるからです。

また、MCIと診断された場合、認知症へ進行することも考え、その先の方策を練っておくことも、患者さん、家族(介護者)双方にとって大切です。

認知症への進行を見越した方策

■ 資産管理
まだ、認知機能低下がそこまで進行しておらず、判断能力がしっかりしているうちに遺言状の作成などを家族で協議する。家族がいない場合は成年後見人を選択することを早めに検討する。
※家庭裁判所が本人や家族の求めに応じて選任するもので、弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門職に資産管理を依頼できる。

筆者の場合、母がまだ判断能力に大きな問題がなく、自筆で意思表示を記せるMCIのうちに、寝たきりになった時にどのような医療を受けたいのかを含め、遺言状を作成しました。

■ 自宅のリフォームなど
転倒による骨折を機に、急激に認知症が進むことが多いので、転倒防止のために手すりをつけたり、バリアフリー化を行ったりする。徘徊防止のため鍵を高いところにつけるなど。

筆者は、母がベッドから転落して骨折した翌日、すぐに手すりをつけました。
手すりは介護保険を利用することで月額180円程度でレンタルできました。ケアマネジャーから紹介された、福祉用具・介護用品・住宅改修の事業者からレンタルしたのですが、同事業者では、手すりばかりでなく、車椅子やスロープ、介護ベッドなどのレンタルのほか、介護に伴う改修もしてくれます。何かレンタルしたい場合、家を改修したい場合には、まず、担当のケアマネジャーに相談することをおすすめします。

■ 危険なものの排除
石油ストーブからエアコンなど火のない暖房器具へ変更する。コンロは数分でガスが止まるものを導入なするなど。

筆者は、母が消えたばかりの石油ストーブの天板に手をつけ、火傷したことをきっかけに、家から火の出るものを排除しました。また、台所のガスコンロも、使わないように言っても使ってしまうので、時間が経つと自動消化するものに変更しました。

認知症の患者さんへの接し方

MCIのうちは、それほど他者に向けて不快な気分にさせる言動はないものです。しかし、認知症に進行してくると、普通では理解できないことをしたり、何度も同じことを言ったり、暴言を吐いたりと、一緒に暮らしていると家族がイライラすることも多くなるかもしれません。介護はいつ終わるとも言えませんから、疲れきってしまう前に、ケアマネジャーに相談して、デイサービスや宿泊サービスなどを利用するのもよいでしょう。

筆者も最初は母を叱ってばかりいました。しかし、叱ることにも疲れ、ストレスも溜まるので、ある時から、叱る前に母がやってしまいそうなことに備えるようにしました。
たとえば、母は不安神経症の傾向もあるため、気になったらコンセントをすべて抜いていました。そのたびに「抜いてはダメ」と言っていましたが、どうしてもコンセントを抜かれたくない仕事部屋には、鍵をつけました。これで私も母も多少のストレスの軽減ができました。

認知症患者で気をつけたいケガのこと

認知症患者で気をつけたいものの一つに「ケガ」があります。認知機能低下のため、廊下の段差などへの注意が散漫になりやすく、転倒して頭部打撲や大腿骨骨折を引き起こしやすくなります。これらの外傷は、認知症を加速度的に進行させてしまったり、身体機能を急激に落としてしまったりする要因になってしまいます。
認知症患者の場合、どこで、どのようにケガをしたのかを覚えていないことが多く、症状をうまく伝えることもできないため、傷とは違うところが痛いと言うこともあります。また、痛みに鈍感であることもたびたびあり、骨折に長らく本人や周囲も気づかないことがあります。あるベテランのケアマネジャーは、「大腿骨が骨折していても歩けていることもあった」と言っていました。

筆者の母も、足の小指の基節骨を骨折した際、普通に歩けており、頑なに受診を拒否したため、骨折がわかるまでに1週間かかりました。医師からは「若い人なら痛くて歩けない」と言われました。病院への行き渋りも、認知症の方には多いようです。

認知症の介護にあたられている方へ

認知症のタイプは人それぞれです。怒りっぽくなる人もいれば、徘徊が目立つ人も、無気力になる人もいます。その人なりに、きっと何か理由があるのでしょう。しかし、残念ながらそれを正確に推しはかることはとても難しいと思います。

以前は、私も「どうして? 何でわからないの?」と考える毎日を送っていました。それはきっと、自分の中の親としてのあの毅然とした姿を忘れられないからだと思います。しかし、私も通院を共にする中で、穏やかで幸せそうならそれでいい、とやっと思えるようになりました。そう思えるようになるまで10年もの月日がかかってしまいました。

最後に、介護は一人では限界があります。どこまで続くかわからない道でもあります。誰かを頼ることも時には必要だということを忘れないでいただければと思います。まずは、地域の相談窓口に行き、担当のケアマネジャーを紹介していただくことも大切です。

1) 精神科・内科油山病院
2) Midtown Clinic

2003年福井大学医学部卒。福井大学神経科精神科助教を経て、2013年国立精神・神経医療研究センター 思春期精神保健研究室長。2020年よりありまこうげんホスピタル診療部長。現在、主に精神科救急医療に従事。専門は児童精神医学。児童のメンタルヘルス向上を目的とした「かかりつけ医等発達障害対応力向上研修」、「児童思春期の精神疾患薬物療法ガイドライン作成」に責任者として携わった。日本精神神経学会専門医・指導医、精神保健指定医、日本児童青年精神医学会認定医、子どものこころ専門医、日本臨床精神神経薬理学会専門医、日本医師会認定産業医、医学博士。

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