乳腺症の原因と予防方法 20代でも?食事や妊娠経験と発症の関係は?

  • 作成:2016/10/04

乳腺症の原因としては、ホルモンが指摘されています。予防方法として完全なものはありませんが、なりやすいタイプのある人はわかっています。発症する年齢や、食事・妊娠経験との関係を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

近藤恒正 監修
落合病院 副院長
近藤恒正 先生

この記事の目安時間は3分です

乳腺症は20代でもなる?

乳腺症は病気?原因はどんなもの?

「乳腺症」とは、乳房内の乳腺組織が長い期間かけて、増殖と萎縮を繰り返すことで、増殖した部分と、萎縮し線維化(せんいか)した部分が、互いに混在し、大小さまざまな大きさの硬結(こうけつ、かたくなること)ができ、それらを指で触ることができるようになったものです。このような現象は、生理的な変化と捉えられ、正常な乳腺組織から少し逸脱した程度の状態であると考えられているため、乳腺症は病気としては扱われていません。

乳腺症の原因は、卵巣での女性ホルモン(特に「エストロゲン」)分泌の周期的変化(生理)に対し、乳腺が同調できなくなるためといわれています。これがはっきりとした原因と断定されてはいませんが、エストロゲン(卵胞ホルモン)の過剰分泌、つまり女性ホルモン分泌のアンバランスが乳腺症の原因と考えられています。

よく起きる年齢も30代から40代と加齢に伴い多くなっており、また、妊娠や出産や授乳経験が少ない方もなりやすい傾向にあることが、乳腺症の発症には加齢や女性ホルモン分泌のアンバランスが深く関係しているという説を支える1つの証拠となっています。

女性ホルモンは、卵巣から分泌されている「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2種類ですが、エストロゲンは乳管などを増やし、プロゲステロンは腺房(せんぼう、さいぼうのかたまり)を増やす役割を担っています。

女性ホルモンは卵巣だけではなく、乳腺にも作用しているため、乳腺症と月経周期は大変深く関係していることもわかっています。

乳腺症と食事は関係がある?

乳腺症と食事メニューとの直接の因果関係はありませんが、カフェインと脂肪を過剰摂取すると、乳房の痛みが悪化するといわれています。

「脂肪」には動物性脂肪なども含まれていますので、ミルクなどの乳製品そしてお肉などの脂肪もこれに該当します。カフェインは、お茶、コーヒー、紅茶、ココアなどが代表的ですが、生理前や生理中の乳房の痛みがひどい場合は、これらの食品は適度な摂取に抑えておくとよいでしょう。

乳腺症は20代でもなる?妊娠経験と関係がある?

乳腺症の好発年齢は、30代から40代です。閉経して卵巣機能が低下すると、乳腺症の症状も自然に消滅していきます。ところが、20代でも乳腺症になる人もいます。それは、乳腺症には女性ホルモン分泌のアンバランスが関係しているためです。

実は、「乳腺症はこういうもの」とひとくくりにすることはできません。それは、乳腺症が病気ではなく、生理的な変化や現象として、捉えられているためです。乳腺症の主な症状として「乳房の痛み」「しこり」「乳房の張り」「乳頭からの分泌物」があげられていますが、実際には年代によっても現れる症状が多少異なっています。

まず「乳房の痛み」については、10代から40代まで幅広い年代の女性の中で、約70%以上が一生に一度は経験するといわれていますが、生理の周期にあわせて現れる乳房の痛みも乳腺症の一部です。また「のう胞」といって、乳腺組織の一部が袋状になり、袋の中に水がたまった状態も、乳腺症の一部とされます。のう胞は、しこりとして触って感じられるようになりますが、閉経すると自然に消滅します。

また、良性のしこりとしては20代から40代で多く起こる「線維腺腫(せんいせんしゅ)」もあります。線維腺腫は、平均2センチから3センチのコロコロとしたしこりが乳房にできます。乳房発達過程における乳腺の異常とされていて、女性ホルモン分泌に関係しています。年齢経過に伴い、しこりは自然に消滅するため、特に治療の必要はありません。

このように、乳腺症は女性ホルモンの変化による生理的な変化や現象と位置付けられていますので、ホルモンのバランスが崩れてしまった場合そしてエストロゲン分泌量が過剰になる生理前などでは20代であっても乳腺症になります。

乳腺症と妊娠経験の関係は?

妊娠経験と乳腺症との関係はどうなっているのでしょうか。乳腺症は、妊娠中断、妊娠中絶、流産を繰り返してきた人、出産回数が少ない人、授乳経験がない人、授乳期間が短かった人などがなりやすいといわれています。つまり、エストロゲン分泌優位期間が長い人のほうが良く起きる傾向にあるようです。

ただ、「妊娠や出産を経験していないために乳腺症になる」と断定されているわけではありません。

乳腺症の予防方法

乳腺症は病気ではありませんので、予防対策として明確な指導方法は発表されていませんが、乳腺症が出やすいタイプは、以下の通りとされています。

・妊娠中断、妊娠中絶、流産を繰り返してきた人
・出産回数が少ない人
・授乳経験がない人
・授乳期間が短かった人
・生理不順の目立つ人
・無排卵の人
・ストレスを多く抱えている人
・脂肪摂取量が多い人

乳腺症そのものは女性ホルモン分泌と深く関係しているため、このようなタイプに該当する人以外でも、ホルモンバランスが崩れないように、普段の生活においてストレスマネジメント、食生活の見直し、そして十分な睡眠を確保するなど各自で実施することが予防対策といえるでしょう。

そのほかの注意点としては、乳房のしこり、乳頭からの分泌物が確認できた場合には、すぐに病院で検査を受けるということです。病院における乳房の検査は乳腺症の予防というより他の乳房の病気(乳がん)を見逃さないための予防策でもあります。



【乳腺症関連の他の記事】


乳腺症の原因や予防方法についてご紹介しました。乳房のしこりのようなものに不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

症状や健康のお悩みについて
医師に直接相談できます

  • 24時間受付
  • 医師回答率99%以上

病気・症状名から記事を探す

その他
あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行

協力医師紹介

アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。

記事・セミナーの協力医師

Q&Aの協力医師

内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。

Q&A協力医師一覧へ

今すぐ医師に相談できます

  • 最短5分で回答

  • 平均5人が回答

  • 50以上の診療科の医師