乳腺症の治療と「石灰化」「のう胞」の意味とリスク 乳がんになる?治療不要?手術の場合も?

  • 作成:2016/07/13

乳腺症で聞かれる「石灰化」という言葉ですが、これは乳がんと見分けることが非常に難しい場合があります。治療については、基本的に不要ですが、痛みがひどい場合などは、手術を行うことがあります。「のう胞」の意味やリスク、乳がんとの関係を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

近藤恒正 監修
落合病院 副院長
近藤恒正 先生

この記事の目安時間は3分です

乳腺症は乳がんにつながる?

乳腺症の石灰化とは?リスクあり?

乳腺症は、正確に言うと「病気」ではないため、乳腺に関わる様々な症状が含まれています。その一部として、乳がんとの鑑別(かんべつ)が極めて難しいといわれる「石灰化」があります。石灰化とは、乳腺にカルシウムが沈着することで起こる変化です。石灰化しているかどうかの診断にはマンモグラフィによる検査が必要になります。

乳腺症の石灰化の疑いがある人で、検査を受ける重要性が指摘されている理由は、乳がんでも石灰化が起こることがあるためです。そのため単なる乳腺症の石灰化なのか、乳がんによる石灰化なのか区別する必要があります。石灰化が見つかった場合には、悪性の可能性があるのかどうかを鑑別する必要があります。マンモグラフィで石灰化が見つかった場合には、石灰化の形と分布状態を観察しします。マンモグラフィにはカテゴリー分類があり、以下の5段階に分けられています。

1異常なし、2良性、3良性だが悪性を否定できない、4悪性の疑い、5悪性

NPO法人「日本乳がん検診精度管理中央機構」の読影試験に合格した医師のみにカテゴリー分類の診断を行うことが認められています。乳がんによる石灰化の場合、マンモグラフィで石灰化がみられる場合には、良性の石灰化なのか、あるいは悪性を疑う必要がある石灰化なのかを鑑別する必要があります。

石灰化の形や分布状況によって、乳がんの可能性が高いのかどうかはある程度評価することが可能ですが、明かに良性の石灰化とはいえない場合や良性と悪性の鑑別がつきにくい場合には、生検(組織検査)を受けることになります。良性の石灰化の場合には、特に治療の必要もなく、放っておいても問題ありません。ただし、乳腺の石灰化が見られた場合では、万が一のことを考え、その後も半年から1年に一度のペースで、マンモグラフィによる検査を定期的に受け続けることが推奨されています。

のう胞とは?リスクあり?

乳腺ののう胞とは、乳腺組織の一部が袋状になり、その袋の中に水がたまった状態です。のう胞も乳腺症同様、女性ホルモン分泌のバランスが崩れることで起こると考えられており、ホルモン分泌が正常になると自然に消滅するため特に治療の必要はなく、またがん化することもありません。

のう胞の診断には、超音波検査が必要になります。ただし、検査しても腫瘍との区別がつきにくい場合は、穿刺(せんし)といって注射針で水を抜き、細胞診(細胞の検査)を実施し、単なるのう胞なのか別の腫瘍なのか調べます。また、のう胞が大きくなってしまって見た目が気になるようであれば、同じように穿刺で水を抜くこともあります。

乳腺症は乳がんになるリスクがある?

乳腺症になったから乳がんになるリスクが高いということはありません。まず、乳がんが発生する仕組みとがん細胞について、まず理解しておきましょう。乳がんのほとんどが乳管(乳腺組織)から発生しています。はじめは非浸潤がん(微小がん)の状態(非浸潤がんの段階では「しこり」もわかりません)で、乳管や「小葉」と呼ばれる部分のなかに溜まっています。がん細胞は増殖を繰り返し、乳管や小葉を打ち破ると、今度は血液とリンパ液の流れを利用しながら周辺組織へ広まってゆきます。がん細胞は「増殖、転移」という明らかな特徴を持っています。

一方、乳腺症のしこりは、がん細胞のような特徴はもっていません。がん細胞は、通常の細胞とは異なり、血管を利用して増殖を続け、転移もするという特異な細胞なのです。乳腺症も乳がんも同じ乳腺組織から発生しているため、その関係性について多くの方が気にされているようですが、がん細胞が乳腺組織に存在しない限り、乳腺症だから乳がんになるリスクが高いという説は、現在のところ医学的には発表されていません。

乳腺症の治療とは?治療しないとダメ?

乳腺症では、基本的には治療の必要ありません。痛みがひどい場合には、鎮痛剤を処方したり、ホルモン注射を打つこともあるようですが、まれなケースです。また乳腺にのう胞ができていて見た目の大きさが気になる人は注射針で水を抜き出すこともあります。

乳腺症で手術をすることがある?

乳腺症では基本的に治療の必要性がないため、手術を受けることはありません。しかしながら、しこりが大きくなり、なおかつ痛みがひどい人は、医師と十分相談してから、手術でしこりを摘出する方もいるようです。ただ実際には、ほとんどの乳腺症の場合、医師から手術を薦められることはないと理解しておきましょう。乳腺症は生理的現象です。病気ではなく、放置しておいても、がん化することもなく、年齢を経て閉経するとしこり自体は消滅し痛みもなくなります。



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乳腺症の治療の必要性やがん化の可能性についてご紹介しました。乳房のしこりに不安に感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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