昼でも夜用ナプキン、血の塊が混じる……その生理は正常? それとも「過多月経」?

  • 作成:2021/12/18

生理の出血量は人によって違うと言われますが、だれかと比べにくいことだけに、一人で悩んでいませんか? どれくらい多ければ「過多月経」というのか、原因や治療法はどんなものがあるか、婦人科医が解説します。

山中 章義 監修
茶屋町レディースクリニック 副院長
山中 章義 先生

この記事の目安時間は3分です

昼でも夜用ナプキン、血の塊が混じる……その生理は正常? それとも「過多月経」?

生理中や生理が終わったころの「貧血症状」に注意

過多月経とは生理の出血量が多い状態を言います。

  • 健康診断で毎年貧血を指摘される
  • 毎回生理の時に貧血症状が出る
  • 生理の血に塊が混じる
  • 日中でも夜用のナプキンが必要になる

これらに心当たりはありませんか? 1つでも当てはまるなら「過多月経」の可能性があります。

正常な月経量は20~140 mLと定義されています。つまり、生理期間中に合計140mL以上の出血があれば過多月経となりますが、自分の生理の量を知ってる人なんてほとんどいないのではないでしょうか。月経カップを使用している方はだいたいの量は分かるかもしれませんが、使用している方はまだまだ少ないでしょう。
目安として、生理の時にゼリーのような血の塊が出る場合や、ナプキンを2時間毎に交換しなければならない場合は月経量が多い可能性があります。生理中や生理が終わった頃に立ちくらみやめまい、だるさなどの症状が出る場合は、過多月経により貧血になっていることもあります。このような場合は、婦人科で診察を受けた方がいいでしょう。

子宮に異常がある場合と、ない場合がある

そもそも生理の出血は、子宮の内側にある子宮内膜が剥がれる際に血管が傷つくことによって起こります。この出血は、子宮の筋肉が収縮することにより血管が締められ、さらに凝固系と呼ばれる身体の止血システムで止まります。子宮の収縮の程度や凝固系による止血時間には個人差があるため、特に異常がなくても止血にかかる時間が長くなればそれだけ出血量は多くなります
また、子宮内膜ポリープや子宮筋腫、子宮腺筋症などの病気が原因で過多月経になることもあります。

ピルやミレーナは、月経過多と生理痛を同時に改善

子宮筋腫などの異常がない過多月経の場合は、止血剤やピルなどのホルモン剤の内服、前回紹介したミレーナを子宮に留置することで生理の量を減らすことができます。過多月経の場合は生理痛が強いことも多い傾向がありますが、ピルやミレーナを用いれば生理痛も同時に改善させることができます。

子宮内膜ポリープや子宮筋腫、子宮腺筋症などの異常がある過多月経は、止血剤やホルモン剤、ミレーナでは出血量を減らない場合もあります。その場合は手術が必要となります。

子宮内膜ポリープや子宮の内側にせり出ているタイプの子宮筋腫であれば、子宮鏡というカメラで子宮の中を覗きながら切除することができます。この手術の場合は下半身麻酔や麻酔が不要な場合もあり、お腹を切らずに患部を切除することができます。

子宮の筋肉に埋まっているタイプの子宮筋腫や子宮腺筋症は、全身麻酔による手術が必要となります。多くは腹腔鏡といってお腹の中をカメラで覗きながら手術を行います。お腹に数カ所小さな傷が残るだけですので、手術後の痛みなど身体に負担が少ない手術になります。
ただ、子宮筋腫が大きかったり、数が多かったりすると開腹手術となる場合もあります。子宮筋腫や子宮腺筋症の手術には、子宮ごと切除する場合と子宮を残す手術があります。今後、妊娠を希望される場合は子宮を残す手術を行いますが、出産時に子宮破裂のリスクが高くなるため帝王切開術を行うことになります。また子宮筋腫や子宮腺筋症は再発する可能性があり、再度過多月経が起こることがあります。

うまくいけば生理の出血をかなり減らせる治療法も

全身麻酔での手術は避けたいという方には、「マイクロ波子宮内膜アブレーション手術」(MEA)という方法もあります。子宮内膜をマイクロ波で壊死させて薄くし、生理の出血量を減らすという方法です。子宮筋腫や子宮腺筋症がある場合でも処置を受けることができます。うまくいけば生理の出血をかなり減らすことができます。ただし、妊娠を希望される方には行うことができません。

生理の量が多いかどうか自分で判断することはなかなか難しいものです。前述のように、生理の血に塊が混ざったり、2時間毎にナプキンを替える必要がある方や、健康診断でいつも貧血を指摘される方は過多月経の可能性があります。過多月経の方は生理痛がひどいことも多いですので、一度、婦人科で相談してみてください。

婦人科医・医学博士
滋賀医科大学医学部医学科卒業。滋賀医科大学附属病院にて初期臨床研修を修了後、滋賀医科大学産科学婦人科学講座に入局。関連病院で研鑽を積みつつ、大学院にて子宮内膜症・子宮腺筋症の研究を行い医学博士号取得。現在は大阪駅に程近い茶屋町レディースクリニックにて生理痛や生理に伴う症状で困っている多くの患者の診療にあたっている。

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