「第7波」の動向を専門家が解説!ピークアウトの予測と、「BA.5」の特徴、ワクチンの有効性は?

  • 作成:2022/07/29

過去最大の感染拡大を見せる、新型コロナウイルス感染症。「第7波」と呼ばれる今回の流行は、いつまで続くのかは気になるところです。また、オミクロン株の系統が「BA.2」から「BA.5」に置き換わったことで、症状や経過に変化はあるのでしょうか? 感染症専門医の水野泰孝先生(グローバルヘルスケアクリニック院長)に伺いました。

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「第7波」の動向を専門家が解説!ピークアウトの予測と、「BA.5」の特徴、ワクチンの有効性は?

第7波は、第6波の「約2倍」のスピードで拡大

現在、新型コロナウイルス感染症の感染者数は過去最多の11万人を超え(7月19日取材時点)、第7波と言っていい状況です。水野先生のクリニックの様子はいかがでしょうか。また、先生はこの状況をどのように見ておられるでしょうか。

まず第6波を振り返ると、昨年末に南アフリカで確認されたオミクロン株が日本に流入してきて、年が明けてから急激に増えたわけですよね。症状は比較的軽かったものの広がりやすい株だということで、1か月で一気に増え、全国で見ると2月5日がピークで10万5640人でした。それに比べて今回の第7波は、今日(7月19日)でもう10万人を超えています。7月になってから増え始め、約半月で第6波の1か月分の人数に達しているので、ざっくりと言うと2倍のスピードで増えたことになります。

外来で診察していても、今日発熱で受診した人の陽性率は100%でした。それくらい周囲に拡がっているということです。今のところ減るような印象は全くなく、多分この勢いでいくと、あと半月で現在の2倍くらいになるのかなと思います。
ただ、日本における第6波の時や、先行して流行した諸外国の状況を見ても、増えるのは早いですが減り始めるのも早い印象です。だいたい1か月くらいと考えるならば、8月中旬頃には頭打ちになるかもしれません。

免疫逃避、症状の長期化…「BA.5」の特徴

今回急速に感染が広まった経緯として、オミクロン株の系統が「BA.2」から「BA.5」に置き換わったとの話も聞きます。あらためてBA.5の特徴について教えてください。

BA.5の「実効再生産数」(1人の感染者から感染を広げる人数の平均値)は1.2倍程度で、BA.2に比べると若干感染が広がりやすいと言われています。さらに、ワクチンによる免疫をすり抜ける「免疫逃避」の性質があると言われており、ここが厄介なところです。
第6波の時は、ワクチンを2回接種した人であればそれほど症状が強く出ませんでした。しかし、BA.5に置き換わった今は、ワクチンを3回打っている人でも結構高い熱が出たり、のどの痛みが強かったりする人が目立っている印象はあります。この状況が免疫逃避を裏付けているのではないかと考えます。

また、BA.5の病原性に関して、当初は「強まっているというエビデンスはない」と報告されていましたが、その後、動物実験で「肺でウイルスが増殖する可能性」を示す仮説が出てきました。ただ、あくまでも動物実験なので、ヒトで同様のことが起こるのかは不明確です。
感染が先行したポルトガルで重症者が多いという報告はありましたが、病原性と短絡的に結び付けることはできず、何とも言えないところです。

今のところ、私が診療した新型コロナの患者さんの中では、肺炎を疑うような方はいません。症状が現れてから2日ぐらいで熱は下がり、体調が良くなったという人がほぼすべてですね。その一方で、熱が下がった後、のどに焼けるような痛みを感じたり、咳が続いたりする患者さんが散見され、第6波のBA.1やBA.2に比べると症状が長引くような印象はあります。フランスの公衆衛生局によれば「症状が続く期間はBA.1は4日間、BA.4とBA.5は7日間」と報告していますので、裏付けることになるのかもしれません。

今は熱中症や、細菌感染による肺炎なども起こりやすい時期です。患者側が新型コロナだと判断できるような特徴的な症状はありますか。

症状だけで見分けるのは難しいですね。ただ、最近の新型コロナ陽性者はかなり高い熱が出ますし、多くの方がのどの痛みを訴えます。症状は人それぞれで特徴的なものはあまりありませんが、発熱とのどの痛みは高確率で現れる症状であると思います。

4回目のワクチン接種を推進するべきか?

BA.5に対するワクチンの効果についてはいかがですか。

ワクチンによる発症予防効果は限定的で、3回接種をしたとしても2~3か月程度で大きく減少してしまいますが、重症化の予防効果は維持されることが報告されています。

昨年夏の第5波を振り返ると6月からワクチンの職域接種が始まり、接種率が一気に上がりました。短期間で多くの方が免疫を獲得したことにより8月中旬頃にその効果が現れ始め、新規感染者数の減少が見られたのではないかと考えられています(ワクチン効果がすべてであるというわけではありません)。感染が急拡大している時期に大勢の人が一気に接種するとしたらブレーキがかかる可能性があるかもしれませんが、現状では難しいと思います。

ワクチンによる感染の予防効果については3か月間程度ということですが、重症化を抑える効果はそれ以上継続するのでしょうか?

ワクチンを3回打つことによって、重症化を予防する基盤ができると言われています。また、ワクチンを打つことで、他の人にうつす日数を少し短くできるという見解も出てきています。
ただ、4回目の接種に関しては、私はちょっと賛同できないところがありますね。3回の接種で一定程度の重症化予防効果があるにもかかわらず、この段階で4回目接種を推進させることには疑問を感じます。むしろ3回目接種に重点を置くべきであると考えますし、副反応の強い既存のm-RNAワクチンではなく、不活化ワクチンの選択肢も拡げるべきであると思います。

小児のワクチンは、成人に比べてリスクとベネフィットが近い

現在、子どもたちの間でどんどん感染が広まっていると報道されています。小児のワクチンについては、どのようにお考えでしょうか?

子どもの新型コロナは重症化しにくいと言われていますが、実際に健康な小児であればワクチン未接種であっても多くが軽症です。診断後、保護者の方に連絡をとると高熱が出ても1~2日で解熱し、それ以降はすっかり元気になっている場合がほとんどです。

新型コロナに限ったことではありませんが、そもそもワクチンは「健康な人に薬を入れるリスク」と「ワクチンを打つことによって感染症の予防に寄与できるベネフィット」との天秤です。もし、ベネフィットの方が大きければ大きいほど推奨されるワクチンになります。逆にその差が少なくなってくるならば推奨度は下がってきます。

現在のところ、健康な小児への新型コロナワクチン接種は、成人に比べてリスクとベネフィットの差が大きいとは言い難いと考えています。とくに未就学児は自分で接種するかどうかを判断できないので、親が慎重に決めるしかありません。

ただ、これはあくまでも健康な子どもの場合です。持病をもった子どもたちに対しては、かかった場合の重症化のリスクが高まりますので、高齢者と同様にワクチン接種を推奨します。

水野 泰孝 先生

グローバルヘルスケアクリニック 院長

1994年、昭和大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院で臨床研修、同大学小児科学講座に入局。同大学大学院で熱帯医学を専攻し、2003年同大学附属病院感染制御部に異動。2004年より国立国際医療センター(現・国立国際医療研究センター)国際医療協力局・国際疾病センター(現・国際感染症センター)厚生労働技官、外務省医務官などを経て、2010年より東京医科大学病院 感染制御部・渡航者医療センター准教授。2013年より感染制御部部長・感染症科診療科長。2016年より国際診療部部長。また2009年から2017年まで、国際協力機構(JICA)感染症顧問医を務める。2019年6月、東京・千代田区に「グローバルヘルスケアクリニック」を開業。現在は千代田区医師会理事、東京都三鷹市感染症対策アドバイザーなどを務める。

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