水腎症の原因、症状、治療 どんな痛み?大人と子供の違いは?「グレード」の考え方や検査も解説

  • 作成:2016/03/24

水腎症は、何らかの原因で尿の流れが悪くなり、腎臓や尿感が拡張する病気です。子供と大人は原因が違うため、検査や治療も異なります。水腎症のメカニズムから原因、治療まで、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

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水腎症の症状とは?
水腎症とは?腎臓が膨らむ?
子供の水腎症の原因
大人の水腎症の原因 妊娠も関係
水腎症の症状 痛みはどんなもの?
水腎症のグレードとは?
増える赤ちゃんの水腎症 妊婦健診のエコーで発見も
大人の水腎症の検査
水腎症の治療

水腎症とは?腎臓が膨らむ?

腎臓で尿が作られてから排出されるまでには、「尿管」「膀胱」「尿道」を通っていきません。尿管は、尿を送り出すようにゆっくりと動いていますが、これを「ぜん動運動」と呼びます。

腎臓から尿道までの経路のどこかに狭窄(狭くなること)や閉塞(つまること)が起こり、尿の流れが悪くなることで、腎臓や尿管が拡張してしまう病気を水腎症といいます。

水腎症には、正常な状態と比べて少しだけ拡張していて症状がないものから、腎臓がボールのように膨らんでしまい、感染症や腎臓の機能に障害が出るものまであります。

子供の水腎症の原因

水腎症の原因は子供と大人で違うことがほとんどです。

子供の場合、先天的な、つまり生まれつきの狭窄が大部分を占めると言われており、最も多いものは「腎盂尿管移行部狭窄」というものです。これは腎臓と尿管がつながっている部分に、生まれつき異常があることを表しています。 腎盂尿管移行部狭窄以外の先天的な異常には、「尿管膀胱移行部狭窄症」「膀胱尿管逆流症」「尿管瘤(にょうかんりゅう)」などがあります。

「尿管膀胱移行部狭窄症」は、尿管と膀胱の間が狭くなっているため尿が流れにくくなり水腎症を起こします。膀胱に尿がうまく流れないため、尿管が大きく拡張することもあるため「巨大尿管症」と呼ばれることもあります。

「膀胱尿管逆流症」は、通常は膀胱から尿管に戻らないはずの尿が大量に逆流してしまうことによって、水腎症を引き起こします。

「尿管瘤」は、膀胱の中で尿管の末端部がこぶのように膨らんでいる状態です。尿管瘤を伴う水腎症の場合には、本来は1つであるはずの腎臓が上下2つに分かれていて尿管も2つ存在していることがあり、その時には水腎症が腎臓の半分のみに起こることもあります。

大人の水腎症の原因 妊娠も関係

大人の水腎症の原因では「構造上の異常」通常の位置より腎臓が低い「腎下垂」以外にも、腫瘍や結石、血栓、外傷、前立腺肥大症などが考えられます。

また、妊娠中は妊娠により大きくなった子宮により左右の尿路が圧迫されて両方の腎臓に水腎症を起こすことがあります。妊娠中に分泌されるホルモンの影響で、尿管の筋肉の収縮する力も低下するため、より一層水腎症を起こす可能性が高いと言われています。妊娠による水腎症の場合、妊娠の終了と共に改善することがほとんどです。

水腎症の症状 痛みはどんなもの?

水腎症の症状は、尿の通り道がつまっている原因や部分、つまった状態が続いている期間によって異なります。水腎症が短時間で急激に発症すると、発症した腎臓側のわき腹から腰にかけて痛みを自覚することがあります。この痛みは「腎疝痛(じんせんつう)」とも呼ばれ、激しい痛みです。腎臓の片側のみが閉塞している場合には尿量が減ることはないですが、両側の場合は尿量が低下し「腎不全」となることがあります。

一方で、水腎症がゆっくり時間をかけて発症した場合には、鋭い痛みよりも重く違和感があるような、うずくような痛みを自覚することが多いと言われています。

水腎症は他にも吐き気、嘔吐、腹痛などを起こすことがあります。尿が流れにくくなると細菌も停滞しやすくなり、腎盂腎炎や膀胱炎などを含む尿路感染症を併発する可能性があります。尿路感染症を併発すると、発熱や背部痛、膀胱や腎臓の違和感、尿中への膿(うみ)の混入などの症状が出ることがあります。


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水腎症のグレードとは?

水腎症には重症度によってグレードが分けられており、「グレード1」では軽度の腎臓の拡張、「グレード4」では腎臓の高度拡張(拡張の度合いが大きい)を認め、腎臓が薄くなっているように見えることがあります。

特に症状がないグレード1の水腎症の場合には、処置をせずに経過を見ることもあります。

グレード4の場合には、放置していると腎臓の機能に障害が出てしまう可能性が高いため、なるべく早く水腎症を解除する治療が必要になります。グレード4の場合には手術の適応となることが多いです。

グレード2か3の場合には、症状に応じて精密検査や手術を行うかを決定します。

重症の水腎症は放っておくと腎臓の機能低下や尿路感染症を起こしますが、原因を取り除けば日常生活に支障なく過ごすことができます。

増える赤ちゃんの水腎症 妊婦健診のエコーで発見も

最近では妊婦健診で赤ちゃんのエコー検査を行うことが多く、妊娠30週くらいに見つかる水腎症が増えています。妊娠中に気づかなかったとしても、出産後に小児科で行われる赤ちゃんの健診でエコーを行う病院も多いため、その時に水腎症と診断されることもあります。生後6か月から1歳前後では、尿から細菌が混入して尿路感染症を起こし、やはりエコー検査などで腎臓の拡張を指摘されることが多いと言われています。

エコーで水腎症を指摘され、グレード4または、グレード2か3でも症状がある場合は、「排尿時膀胱尿道造影検査」または「利尿レノグラム」と呼ばれる検査を行うことがあります。排尿時膀胱尿道造影検査は、排尿している様子をレントゲンで撮影し、膀胱から尿管へ尿が逆流していないかを確認します。利尿レノグラムは、少量の「アイソトープ(放射性同位元素)」というものを注射して、約40分間追いかけることによって尿路の狭窄の状態だけでなく、左右それぞれの腎臓の機能を検査します。アイソトープというと被爆を心配される方もいますが、レントゲン1枚撮影するよりも少ない放射線量であり、赤ちゃんでも安全に行えることが分かっています。

大人の水腎症の検査

大人の場合には、腫瘍や結石、前立腺肥大症などによる水腎症が多いため、エコーを行うとともに、膀胱内に軟らかいカテーテルを入れて。尿の排出があるかどうか確認します。もし膀胱内に挿入したカテーテルから尿の排出があれば、狭窄または閉塞などは膀胱より先で起きていることが分かります。膀胱より上位の場合には、「腎ろう」といって尿が溜まって拡張している腎臓に直接針を刺して管を挿入し、尿を出す処置を行うことがあります。その他にもCTやMRIなどの画像検査を行い、腫瘍や病気の原因を明らかにします。

水腎症の治療

水腎症の治療は原因によって異なりますが、先天的に腎臓と尿管の間や尿管と膀胱の間が狭くなっている場合には、その部分を切除し正常に尿が通るようにつなぐ手術を行います。腎臓と尿管のつなぎめの狭窄を治す手術は「腎盂形成術」、尿管と膀胱のつなぎめの狭窄を治す手術は「尿管新吻合術(にょうかんしんふごうじゅつ)」と呼ばれています。

大人の場合には、尿路を閉塞している腫瘍や前立腺肥大症を切除したり、放射線治療などで縮小さるなどします。結石がある場合は、体の外から粉砕する治療を行うことがあります。

水腎症の原因から症状、治療まで幅広くご紹介しました。尿の排出などに不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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