医師も手を焼く健康マニア、「天下人」家康の死因は…

  • 作成:2022/05/09

徳川家康の死因と言えば、「鯛の天ぷらに当たったこと」という話が有名ですが、現在これは否定されており消化器系のがんで死亡したという説が有力だとか。今回は、好きな武将ランキングの上位に常に位置する徳川家康について、歴女医・馬渕まり先生に考察していただきました。

この記事の目安時間は3分です

医師も手を焼く健康マニア、「天下人」家康の死因は…

不遇の幼少期から天下人に駆け上がった家康

徳川家康は天文11年(1542年)に三河の小領主、松平広忠の嫡男として生まれました。松平家は今川氏の庇護下にありましたが、母の実家が織田方についたため両親は離縁。6歳からは織田家、今川家で人質として過ごすなど苦労の多い幼少期でした。

元服後は今川義元配下の武将となりますが、永禄3年(1560年)桶狭間の戦いで今川義元が討たれたあとは自立、織田信長と同盟を結び、勢力を三河、遠江に拡大しました。
天正10年(1582年)本能寺の変後は、勢力を伸ばした豊臣秀吉と対立しますがのちに臣従。そして秀吉亡きあとの慶長5年(1600年)、関ケ原の戦いで西軍に勝利すると、3年後に征夷大将軍に任命され江戸に幕府を開きました。そして慶長20年(1615年)大阪夏の陣で豊臣氏を滅ぼし、ついに天下人となったのです。

サナダムシの下剤「万病円(まんびょうえん)」が寿命を縮めた?

だいぶ駆け足で生涯をまとめましたが、天下統一から亡くなるまでの約1年にスポットを当ててみたいと思います。

大坂の陣から約半年の元和2年(1616年)1 月、豊臣家を滅ぼしてホッと一息の家康は駿河の田中城で鷹狩りを楽しんでいました。そこへ挨拶にやってきたのが御用商人の茶屋四郎次郎。彼が京で流行していた鯛の天ぷらを家康に紹介します。

これが、すりおろした鯛を油で揚げ、ラッキョウをかけて食べるというもの。いかにも美味しそうですね。

家康はこれを喜んで食べ、翌日未明に激しい腹痛に襲われました。
この話を元に「家康は鯛の天ぷらで亡くなった」とうい話になったと思いますが、実はここから亡くなるまで3カ月あり、食中毒で死ぬには少々長い気がします。その後、鷹狩りを見学して駿府に戻っていますしね。問題はそのあとのことでした。

伊達政宗の書状にも記されていた「お医者さんも大変だね」。
ご存じの方も多いと思いますが、家康はバリバリの健康マニアでした。鷹狩りで激しい運動もこなし、麦飯を主食とした粗食で放蕩にふけることもなく、漢方薬も自ら調剤する力の入れようです。漢方薬に関しては風邪に効く「紫雪(しせつ)」や滋養強壮の「八味丸(はちみがん)」を自ら服用するとともに、大名たちにも分け与えていたそうです。

家康が愛用した漢方の中に「万病円」というものがあります。家康は当時流行していた「寸白(すばく:サナダムシのこと)」に散々悩まされており、特効薬とされた「万病円」という下剤をたびたび愛用していました。この薬が家康の寿命を少し縮めた可能性があるのです。

腹部に「積(しゃく)」家康の死因は胃がん

鷹狩のあと、1月下旬になって、食欲不振や胸のつかえ感、腹痛に襲われた家康は、例によって「万病円」を飲み、病態がどんどん悪化してしまいます。
実はこのとき主治医の片山宗哲は、別の診断を下していました。腹部に「積(しゃく)」と表現しており、固定制の境界明瞭な塊、すなわちがんだったと考えられます。そのため身体に負担のかかる「万病円」を控えるように進言したのですが、医師の診断を信じられなかったのでしょうか、宗哲は家康の怒りに触れ信州に流刑となりました。

伊達政宗の書状にも、次のように記されていました。
「大御所さまは病気が長引いて気の毒だ。医師の水薬も胸につかえて少ししか飲めない。どうせ効かないだろうとお手製のキツイ薬を飲んでいる。医師たちも治療しにくいみたいだね」

その後、家康の病態は改善することなく、田中の鷹狩りから3カ月後の4月17日、この世を去りました。享年75。

当時の医学水準では、胃がんになった場合、遅かれ早かれ死亡します。
しかし、周りの意見に耳をかさず「お腹が痛いのはサナダムシ」と決めつけて下剤を飲み続けたことは、いくらか寿命を縮めたことと思います。

そうそう、サナダムシの語源についてこういう説もあるのです。
「真田は虫になってまでもこの家康を苦しめる」

最期を少し残念に書きましたが、当時の75歳は長寿です。家康が天下をとれたのは健康で長生きをし、元気なうちに将軍職を息子、秀忠に譲ったことにあるでしょう。

辞世は「先に行く あとに残るも同じこと 連れて行けぬを わかれぞと思う」。
乱世を制した英雄は豊臣の滅亡を見届け、彼岸へと旅立ちました。

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