悪人説の松永久秀は健康オタク?愛読書は○○○○指南書だった!?
- 作成:2022/09/21
戦国武将の松永久秀をご存知でしょうか。官職の名から松永弾正(だんじょう)とも呼ばれていたともいわれますが、調べてみると、史上最も悪い武将とされています。久秀は悪人か否か。歴女医の馬渕まり先生が考察します。
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悪人のレッテルは信長が貼った?
茶釜と共に爆死する、という強烈な最期が有名な松永久秀。
久秀は永正5年(1508年)生まれ、出自には諸説ありますが、天文2年~3年(1533~1554年)頃より、室町幕府の重臣である細川氏の家臣、三好長慶に仕え始めたようです。長慶が主君であった細川晴元と13代将軍・足利義輝を京都から追放し室町幕府を実質牛耳るようになると、久秀も出世し、公家や寺社との交渉や京都防衛を任されました。永禄3年(1560年)には将軍・義輝から御供衆に任じられ、大和国・信貴山城(しぎさんじょう)の城主となります。
永禄7年(1564年)、長慶が亡くなると、嫡男が早世したため養子に入っていた長慶の甥・三好義継を三好三人衆(三好長逸〈ながやす〉・三好宗渭〈そうい〉・岩成友通)と共に支えます。翌、永禄8年5月19日、三好家が二条御所を襲撃して足利義輝を殺害した「永禄の変」が起こります。
この年の後半ごろから久秀は三人衆と対立し家内で孤立します。三好家内紛の過程で、東大寺の大仏殿も焼失しています。三人衆との勢力争いの打開策として久秀が手を結んだ相手は、足利義昭を擁立して上洛した織田信長でした。
信長の家臣となった久秀ですが、反信長勢力が優勢になると信長を裏切り、その時は赦されたものの、天正5年(1577年)に上杉謙信、毛利輝元ら反信長勢力に呼応して反逆した際は、織田信忠らに城を囲まれ、弓折れ、矢尽き、天守に火を放ち焼死しました。
久秀は武将としての能力は高く評価されているものの、悪人として語られることが多い人物です。江戸時代中期に書かれた『常山紀談(じょうざんきだん)』で、信長が「久秀は常人では1つもなし得ない3つの悪行をした」と家康に紹介しています。しかし、主家乗っ取り、将軍暗殺、東大寺大仏殿の焼き討ちに関しては、少なくとも長慶を裏切ってはいませんし、義輝の暗殺時に久秀は従軍していません。大仏殿に関しては、積極的に焼き払ったというよりは戦中の事故に近いのではないかと感じます。ただ、寺に陣を置き戦場にする段階で罰当たりですが……。
戦国の梟雄(きょうゆう)で健康マニアの久秀、その健康法は?
さて、悪人といえども、いえ悪人だからこそか久秀は健康に人一倍気をつけていた人物でした。
脳卒中を予防するとされるツボに毎日お灸をしたり、時の名医、曲直瀬道三(まなせどうさん)が著した『黄素妙論(こうそみょうろん)』という書物を健康づくりに活用していました。
この『黄素妙論』と、はどんな内容なのでしょうか?それは、ずばりセックスの指南書です。こう書くとエッチな気がしますが、当時、男女の交わりは、飲食の保養とともに健康法として重要な役割を持っていたため、中国で書かれたこの性の指南書を曲直瀬道三が和訳、アレンジしたものなのです。
陰陽五行に基づき、正しく交合することで子孫が繁栄し、房中術(ぼうちゅうじゅつ)を実践することで養生を極められるとされ、例えば、「女性にその気がない時は無理にしてはいけない、相手の反応を見極めて双方が満足することが大切。一人のみ満足するような情事は養生に反する」そうで、これはとてもいい教えですね。このほか、お酒を飲み過ぎた時や女性の月経中は禁忌とされ、これらに反すると病につながるとあります。
また、茶人としても有名であった久秀は、2回目の反逆で城を取り囲まれた際に名器・古天明平蜘蛛(こてんみょうひらぐも)を城外に出すよう求められた時、「平蜘蛛の釜とわが首を同時に信長に差し出すことはしない」と平蜘蛛を打ち砕き城に火を放ち自害しました。
平蜘蛛に火薬を詰めて爆死したという話は当時の資料に見られず、後世の創作だとか。
享年68。自害するまでは病なく壮健であったようです。
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