【専門医に聞くVol.2】慢性腎臓病、生活習慣の要注意事項は?

  • 作成:2000/12/07

慢性腎臓病(CKD)は症状が徐々に進行する病気であるため、生活習慣の中で出来ることから対策する必要があります。 AskDoctorsに寄せられた慢性腎臓病にまつわる質問を、腎臓内科専門医の長澤将先生(東北大学腎臓・高血圧内科 講師)にわかりやすく説明いただく本特集。2回目は、日常生活で注意すべきことを取り上げます。

長澤 将 監修
東北大学病院 腎臓・高血圧内科 講師
長澤 将 先生

この記事の目安時間は6分です

インタビュー企画Vol.2

CKDの治療、生活習慣はどうすべき?

CKDの治療中、生活習慣の面で意識すべきことはありますか。

腎臓を守るうえでは「血圧」が大変重要です。よく、食事において塩分を抑えることなどをすすめられると思うのですが、私は塩分量というより、血圧を最優先で観察していくことをおすすめしています。

なぜ「血圧」を見るかというと、「減塩の最大の目的は血圧を下げる事」です。そのためにまず血圧を診ると、食事にばかり気をとられていると実は血圧がどうなっているか?が判らなったりする人がいます。それに、塩分摂取は把握が難しいです。何にどれだけ入っているか?は慣れないと分からないですよね。普段わざわざ自分で「今日はどのくらい塩分を取った」など確認することも通常はないですよね。

最近だと成分表に表記されているものも多くなってきましたが、スーパーやコンビニのお惣菜などでは、まだ記載されていない物もあります。1つ1つ塩分量を測ることは現実的ではありません。

血圧は塩分だけではなく気温によっても変動しますし、食事量が多い人は必然的に塩分も多くとっています。

ですから、総じて「血圧をしっかり測定すること」が重要です。血圧をベースにして、良い血圧になったら現在食事の塩分量でOKとする、という視点もありなのではないかと思っています。

CKDの食事制限について

食事の面で、塩分以外にも確認しておくべきものはありますか?

「カロリー」ですね。理想体重当たりのカロリー摂取量も、ガイドラインに掲載されています。
その中でもよく質問されることが「低タンパク食」についてです。カロリー制限も難しい中、タンパク質も取らないとなるとコントロールが本当に難しく、食事については主治医と管理栄養士から十分にアドバイスをもらって行うことをおすすめします。

ちなみに、「タンパク質を摂取したら尿タンパクが出る」という間違った知識をもっている方も多いですが、そんなことは一切ありません。間違った知識のなかで自己流の食事制限を行うことは大変危険なので、必ず主治医や栄養士に相談してすすめるようにして欲しいと思います。

CKDの運動習慣について

食事の他に、運動習慣などでのおすすめはありますか。

運動量として明確な数字はいまだ出ていませんが、最近の腎臓病研究では、過度に安静にする必要はないともいわれています。

一般的に健康を維持する運動量としては、だいたい6,000〜8,000歩/日といわれていますので、これらの数字を目標にすると良いでしょう。
とはいえ、いつも2,000歩しか歩いていない方がいきなり8,000歩歩くことは危険です。そのため運動量も徐々に歩数を増やしていき、転ばない安全な場所で行うことが重要です。

CKDの診断が下った後は、基本的には生涯にわたって生活習慣に気をつけるべきなのでしょうか。

生活習慣に気をつけることは大変重要です。
そもそも基本的に腎機能というのは年々徐々に下がっていくので、CKDの診断があろうがなかろうが、どんなに健康でも加齢によって腎機能は低下していってしまうのですよね。

それに加えてよく説明していることは、「直線的に下がるのではなく、階段的に下がってしまう」ということです。何か入院するような病気をしたタイミングや、体調が悪くなって寝込んでしまうことなどでガクッと機能が落ちるため、それらのことを防ぐことが重要だと言えます。

まとめ

本記事では腎臓内科専門医であるから生活習慣の面からお話を頂きました。

症状が気になる方も、まずは日常の生活習慣から見直してみるほか、実際に食事療法を行う際には、自己流ではなく主治医に相談しながらすすめていきましょう。

長澤将(ながさわ・たすく)先生

東北大学病院腎・高血圧・内分泌科講師

2003年東北大学医学部卒。研修を経て、Medical College of Wisconsinに留学し、医学博士取得。2012年より石巻赤十字病院腎臓内科部長。2018年より東北大学病院、2019年より現職。RPGNガイドライン2020、腎生検ガイドブック2020などに参加。10冊以上の腎臓内科・透析の著書がある。(『長澤先生、腎臓って結局どう診ればいいですか?』(羊土社)、『Dr.長澤の腎問答』(中外医学社)、『この局面にこの一手!Dr.長澤直伝!腎臓病 血液透析の定跡』(金芳堂)など)
総合内科専門医、腎臓専門医・指導医、透析専門医・指導医、日本医師会認定産業医、医学博士

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