認知症の新薬「レカネマブ」とは?専門医に聞く「効果と副作用」
- 作成:2024/04/26
2023年、認知症治療薬として「レカネマブ」という薬が新しく日本で使えるようになりました。 今回は、前回に続き、認知症診療の第一人者である新井平伊先生(アルツクリニック東京・院長)に、レカネマブの特徴や効果、副作用などについてお伺いします。
この記事の目安時間は6分です
2023年、認知症の新薬「レカネマブ」が承認されましたが、どんな薬なのでしょうか?
新井先生
レカネマブは、アルツハイマー病の原因物質と考えられている「アミロイドβ」というたんぱく質を、脳から排除する薬です。アミロイドβ自体はおそらく本来は悪いものではなく、健康な人の脳にも存在しています。その役目ははっきりとわかっていませんが、通常は、何らかの役目を果たした後、自然と脳から排泄されています。
しかし、なぜか排泄されずにかたまり状になって、脳に蓄積してしまうことがあります。すると、それがきっかけで神経細胞にダメージが与えられ、認知症へとつながっていきます。
レカネマブは、このかたまり状になって自然に排泄できなくなったアミロイドβを排除する薬になります。
これまでにあった薬は認知症の症状を抑えるためのものでした。一方、レカネマブは、認知症になった結果生じる症状ではなく、認知症の原因となる部分に作用するという点が大きく異なります。
これまでの薬と異なり、「認知症の原因となる部分に作用する」ということですが、どういった効果があるのでしょうか?
新井先生
レカネマブを使っても、認知症の進行を完全に止めることはできません。しかし、認知機能の低下のスピードを27%抑えられることが臨床試験で示されています。
これまでにあった薬は、アルツハイマー病の脳内で減ってきた伝達物質(アセチルコリン)を補う薬なので、短期的にみるとすぐに効きますが、効果は長続きしません。逆に、根本の原因に作用するレカネマブは、短期的にすぐに症状の改善効果が得られるというよりは、持続的に効く持久力のある薬です。
副作用はどんなものがありますか?
新井先生
重大な副作用として、脳の浮腫や出血などが報告されています。これらの副作用は、脳の血管のところに溜まっていたアミロイドβが取り除かれることで一時的に血管が脆くなることが原因で起こるものです。
そのためレカネマブを使用する時は、使用から2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月後など、定期的に脳に浮腫や出血が起きていないかを医療機関で確認し、もし起きていたら一旦使用を止めて様子をみます。そして、浮腫や出血のような脳の変化がMRI上で改善したら使用を再開します。
どんな人が使えるのでしょうか?
新井先生
現在、日本でレカネマブが保険適用で使えるのは軽度認知障害(MCI)と初期のアルツハイマー型認知症の患者さんです。
海外では、MCIより前の段階(症状が見られないプレクリニカル期)の患者さんを対象とした試験も行われていますので、今後そういうデータも出てくるのではないでしょうか。
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1984年順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年よりアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。日本老年精神医学会前理事長。1999年、日本初の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。
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