うちの凸凹―外科医と発達障害の3人姉弟―「親の言葉」は本当に軽く扱われる。子の人生にかかわることでも
- 作成:2024/03/30
こんにちは。外科医ちっちです。 うちの3人の子どもは、全員が自閉スペクトラム症の診断を受けており、いくつかの困りごとを抱えています。一緒に生活するうえで、「こんな発想でこんなことをしてしまうのか」と驚かされることもあれば、「こうとしか考えられないのか」と辛い思いをすることもあります。この連載では、軽度の発達障害のわが子の日常や、子育ての様子を徒然なるままに綴ります。世の中にはこんな「変わっている子」「変わっている人」もいることを、いろいろな方に広く知ってもらい生きやすい世の中になるのを目標にしています。今日は「親の言葉は軽んじられる」についての記事です。
この記事の目安時間は3分です
やむなく転校を決めてから、校長に言われた一言
この春小学3年生になる次男。小1の夏休み明けから学校に行けなくなり、現在は週1コマ通級に登校しています。家庭での活気は戻ったものの、今のクラスには通えなさそうなので、思い切って学区変更のため、別の自治体に引越しを決めました。
そして、学校にも伝え、次男にとって残りあと数回の登校だったある日のことです。学校へ迎えに行くと、校長先生とすれ違いました。その時に校長先生から一言。
「あの検査結果だったら、知的級で行けましたね」
と笑いながら言われました。
元々、35人の普通級は難しそう。でも、今の自治体には普通級と知的級の設置しかない。なので、選択肢としては通級(個別)か知的級(最大8人)なら通えそうと、WISC 検査の結果(境界知能)を提出しながらお願いしていました(小2春)。
その時、「通級は空きがない。知的級に転級する検討には1~2年かかるから、早くても4年生から。そもそも1年生の様子を見ている限り、知的級っていう感じじゃない。戻りたくなってもまた1~2年かかる」と言われ、仕方がないとあきらめた経緯があります。当時の校長先生の言葉は、頭から離れませんでした。
主観だけで「知的級は無理」と言われた…?
今回、引っ越しを決めてから校長先生に言われた「あの検査結果」とは、新しく出したものではありません。小1の終わりのWISCであり、小2春の話し合いできちんと提示したもの。転校にあたり、検査結果をくださいと言われたので、再び提出したのでした。
つまり、先生は境界知能という結果を見ずに話し合いに参加し、校長先生から見た感じだけで、「知的級は無理」とおっしゃっていたのだと思います。
こちらは必死に、次男の人生に関わる選択として熟慮を重ねて、親の主観だけでなく客観的データを合わせて提案しました。
その結果の返答は、学校の代表者としての最終決定だと受け取りました。
合っていなくて知的級に入りたいと希望して、「検討や会議に2年が必要」という明らかに変な回答も最終決定として受け入れました。
でも、違いました。
ただのその場の思いつきで、検査結果は検討すらしていなかったことが分かりました。
証拠は残す。現状&要望はハッキリ伝える
変わった子を育てていると、こういう親の真剣さと周囲のズレがよくあります。
子どもたちへの影響が絶大な方針決定に対して、親側が注意点や現状を必死にプレゼンしても、適当な返答が返ってきます。親に決定権はなく、その適当な方針しか選べないこともあります。
校長がすれ違いざまにヘラヘラ笑いながら言えたのは、本当に「ちょっとしたことで、笑い話だから」です。
こちらにとっては、人生が大きく関係した話で、全くそうではないのだけど、それが意識すらされません。
騒いでもそもそもの音声や文章の記録がありません。
日々の生活で、騒ぐ体力も残されていません。
明らかに間違っていて、次の犠牲者の為には自分と妻が騒いだ方がいいのに、できない。
真剣に言っても聞いてもらえない、意見を求められる割に言っても素人の意見として却下される。
あまりの軽んじられ方に、医師免許を使って抗議の意見を書いてやろうかと思ってしまいました。
ただ、学校の先生から見れば、我儘ともとれる要望なのだろうと思うし、その妥当性や必要性を親以外から提案するシステムは殆どの自治体でありません。
医療だけでなく、教育も含めて総合的に支援する、それぞれの人員が欠けている知識・権限を補完し合うシステムを切に願います。
WISCの結果が学校で生かされない理由
小児の特に精神科領域に関わる医療従事者の方は、本当に親の意見は軽んじられるということを知ってほしいです。その時に、権威として応援できるのは、主治医からの意見書のみです。それすら、質や量、内容は主治医によってマチマチだし、さらに学校がどこまで重視するのかも幅があります。
WISCの結果は定期的な提出を求められる割に、おそらく解釈できる知識・経験がないので、あまり学校生活で活用できたことはありません。これは当たり前で、実際に何をするか、どういう結果はどういう状況を意味するかの知識を得る機会が教員側には殆どないので、結果を見せられても対応に困っているのだと思います。
少し前まで、幼稚園ではインフルエンザ罹患後の治癒証明=治った後に小児科を受診して書類をもらうという無駄な手続きがありましたが、世間の多くの人がその無駄さを知るに至り、少しずつなくなりました。
発達障害関連の扱われ方のおかしさも、少しでも多くの人が知って、変わっていくと良いと願います。
外科医師。妻(看護師はっは)と発達障害3児の育児中。記事中のイラストは、看護師はっはが担当。著書『発達障害の子を持つ親の心が楽になる本』(SBクリエイティブ)が2024年9月発刊予定。
・ブログ:「うちの凸凹―外科医の父と看護師の母と発達障害の3姉弟」
・ブログ:「発達障害の生活は試行錯誤で楽しくなる」
・note:https://note.com/titti2020/
・Twitter:@surgeontitti
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