認知症の家族の介護・ケア体験談(30代/女性/会社員)

  • 作成:2023/11/14

本記事では、母親がアルツハイマー型認知症と診断された、30代女性会社員の体験談を紹介します。

この記事の目安時間は6分です

30代/女性/会社員

認知症を疑ってから受診までの経緯

あるときから、母が何回も同じことを聞いてくるようになりました。私は、認知症だとは思わず「何回も同じことを聞かないで」と怒ってしまっていました。その愚痴を友人に話したところ、物忘れ外来というものがあるから、一度行ってみてはと提案されました。この友人の話をきっかけに、認知症の可能性があるのでは、と思うようになりました。

その後、母と会話をする際に、以前よりも会話の内容に意識を向けるようになりました。 何回同じ話をするのか、どれくらいの間隔で同じ質問をしてくるのか、などを観察しました。すると、明らかに以前よりも同じ話をする回数が増えていることを実感しました。
そして、すぐに物忘れ外来のある病院をインターネットで調べ、いくつかの病院の口コミを比較したうえで、自宅からも通える距離にある病院の診察を予約しました。

診断されてからの生活

基本的に薬物治療を行っています。最初は1種類の薬で治療を開始しました。最初は少ない用量で副作用が出ないかを確認し、特に問題がなかったので、その後少しずつ最大容量まで増量していきました。そして治療開始して1年後、もうひとつ薬が追加されました。こちらも最小用量から段階を踏んで最大容量まで増やしていきました。
これらの薬物療法と並行して、積極的に脳に刺激を与えることをしています。具体的には、人と関わって会話をすることです。ちょうど新型コロナウイルス感染症が流行し、簡単なことではなかったのですが、最初はわたしの休みを利用して、同じように認知症の方が集う会に一緒に参加しました。今ではデイサービスを利用して週に1、2回程、家族以外の人と接する機会を設け、外からの刺激を与えています。

現在、認知症と診断されてから2年と少しです。薬を飲んでいなかったらもっと進行は早いのかもしれませんが、できないことは徐々に増えており、以前は当たり前にできていたことが少しずつできなくなってきました。
例えば、最初の頃は同じ話を何度もすることはあっても、文脈はしっかりしており、何をいっているのか、何がいいたいのかはわかりました。今では話の脈略もよくわからず、何をいいたいのかを掴むことに苦労することが多々あります。また、簡単な道でも覚えられず迷子になってしまうので、慣れない場所へ行くときは必ず一緒に行動しています。入浴や歯磨きも面倒になるのか、こちらからいわないと徐々にしなくなりました。でも自分ではしていると思っていたりします人の名前も徐々にわからなくなってきていますが、まだ今は顔を見れば認識できています。

アルツハイマー型認知症だと診断された時、母はまだ64歳で、若年性でした。
発症したのは私が気づいたより、もう少し前だったのかもしれませんが、若いうちに受診して治療を開始することで、症状の進行を遅らせることができているのではないか、と思っています。

日常生活で工夫していること

認知症である母の立場にたち、穏やかに接するようにしています。
正直、何度も同じことを言われたり聞かれたりすると何度も気持ちが滅入りそうになります。最初の頃は、認知症だとわかっていても自分の感情をコントロールできず、辛くあたってしまうことが多々ありました。私が辛くあたったせいで母が涙ぐむ姿を何度も見ました。そのたびに罪悪感にさいなまれ、さらに辛くなり、何度も死にたいと思いました。
今でも辛いと思う瞬間は数え切れないほどあります。しかしあるとき、自分が母の立場だったらと考え、とても怖くなりました。覚えていたくても覚えられない、なぜ相手が怒っているのかもわからないのに怒られる、そういったことを想像し、恐怖を感じたのです。でも母にとってはそれが現実です。こうやって、母の現状を冷静に考えたときから、穏やかに接することができるようになりました。
今では、何度同じ話をされても、初めて聞くかのように対応できるようになりました(ときには出来ないときもありますが) 。、それでも辛いときは、少し距離をおき、自分の気持ちを優先させることにしています。そしてほんの少しでも息を抜けたら、母だって望んで認知症になったわけじゃないんだ、と自分に改めて認識させています。

これらのことは、短期的に解決することではないので、辛くなったら自分ファーストで考えるようにし、あとは地域の包括センターを頼っています。みなさん力になってくれてありがたく思っています。
一人でなんとかしようとせずに、誰かを頼ることは必須だと思います。

家族が認知症になって大変だったこと

母の行動を直そう、正しいことを理解させようとするのではなく、母は認知症なんだという現実を受け入れ、母に寄りそい、自分を変えることが大変でした。
今でも大変です。

家族が認知症になって思うこと

母に心配をかけないようにもっとしっかりすればよかったと、今更ですが思っています。

ご家族の認知症に対する不安を抱えている方へのメッセージ

認知症は誰にでも起こりうるし、自分も将来なるかもしれない身近な疾患です。
今のうちに、精一杯やさしく接してください。安心をさせてあげてください。

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