【Pick Up News】専門医に聞く、最新の片頭痛治療事情

  • 作成:2026/07/28

ズキズキとした強い痛みや吐き気により、仕事や家事など日常生活に支障をきたす「片頭痛」。近年、片頭痛治療の選択肢は着実に広がっています。今回は、片頭痛治療の最新の治療の進め方について、脳神経外科専門医の村上先生にお話を伺いました。

村上友太 監修
 
村上友太 先生

この記事の目安時間は6分です

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まずは痛みを抑える「急性期治療」から

片頭痛で病院を受診した場合、まずはどのような治療からスタートするのでしょうか。

村上先生(以下、先生): 片頭痛治療の基本となるのは、痛みが起きたときにそれを鎮める「急性期治療」です。患者さんの痛みの強さや頻度に合わせて、一般的な解熱鎮痛薬(NSAIDsなど)や、片頭痛に特異的に働く「トリプタン製剤」などを処方します。発作が起きたら我慢せず、痛みが軽いうちに早めに服用していただくのが、痛みをコントロールする第一歩となります。

「市販の痛み止めを飲んでも効かない」という声もよく聞きますが、なぜでしょうか。

先生: 片頭痛は単なる痛みの症状ではなく、脳の血管や神経が関わる複雑なメカニズムで起きています。そのため、一般的な鎮痛薬ではメカニズムに直接アプローチできず、効果が不十分なことが多いのです。

また、一番注意しなければならないのが「薬剤の使用過多による頭痛(いわゆる薬物乱用頭痛)」という状態です。痛みを恐れるあまり、月に10日以上も鎮痛薬を飲み続けていると、脳が痛みに敏感になり、かえって頭痛の回数が増えたり痛みがこじれたりしてしまいます。こうした悪循環を防ぐためにも、医師による適切な診断と薬のコントロールが重要になります。


根本から頭痛を起こりにくくする「予防療法」

鎮痛薬を正しく使っても、生活への支障が改善されない場合はどうするのでしょうか。

先生: 「月に何度も発作が起きて、仕事や学校を休んでしまう」「頭痛の頻度が多く、鎮痛薬を飲む回数が増えてしまっている」など、日常生活への支障が残る患者さんには「予防療法」の併用を検討します。

「予防治療」とは、具体的にどのような治療ですか?

先生: 痛み止めが「起きた痛みを鎮める」ものであるのに対し、予防治療は毎日お薬を使うことで「片頭痛の発生そのものを起こりにくくする」アプローチです。これまで片頭痛の予防薬としては、カルシウム拮抗薬や、抗てんかん薬、β遮断薬などを毎日服用するのが一般的でした。これらは現在でも第一選択として使われる非常に重要な治療薬です。

それらの従来の予防薬が効きにくい患者さんには、どのような選択肢があるのでしょうか?

先生: 患者さんによっては、従来の予防薬を一定期間続けても、十分な効果が得られないケースや、副作用によって継続が難しいケースが存在します。そうした患者さんへの新たな選択肢として、近年治療現場で普及しているのが「CGRP関連薬」という新しいお薬です。

「CGRP」とは何でしょうか。もう少し詳しく教えてください。

先生: 「CGRP」とは、私たちの脳内に存在するタンパク質の一種で、片頭痛の発作に深く関わっている原因物質です。ストレスや疲労、天候の変化などをきっかけに、脳の三叉神経からこのCGRPが過剰に放出されると、周囲の血管が拡張し、神経原性の炎症が起きます。これが、あのズキズキとした強い痛みの正体と考えられています。

新しいお薬は、このCGRPという物質自体、あるいはCGRPを受け取る受容体の働きを直接阻害することで、片頭痛の発生を元から防ぐというアプローチをとっています。そのため、従来薬では効果が不十分だった方にも、頭痛日数の減少が認められています。

その新しいお薬は、どのように投与するのですか?

先生: これまでは、CGRPを標的としたお薬は注射薬のみでした。月に1回、あるいは3ヶ月に1回のペースで定期的に注射をすることで、高い予防効果が期待できます。しかし、患者さんによっては「注射針に強い恐怖心がある」「注射時の痛みが苦手」といった理由で、新しい治療に踏み切れない方もいらっしゃいました。

注射が苦手な方にとっては少しハードルが高かったのですね。

先生: おっしゃる通りです。しかし、2025年から2026年にかけて、日本でも新たに「経口CGRP関連薬(飲み薬)」が2種類登場しました。これにより、注射ではなく「飲み薬」としてCGRPの働きを阻害できるようになりました。飲み薬であれば、自宅で従来の予防薬と同じような感覚で服用できるため、注射が苦手な方でも、この最新のアプローチによる治療を選択しやすくなったと言えます。片頭痛治療における選択肢の幅が、また一つ大きく広がりました。


より良い治療に向けた受診・相談の進め方

「専門的な治療を受けてみたい」と思った場合、今かかっている「かかりつけ医」がいる人はどうすれば良いでしょうか。

先生: 高血圧や糖尿病、あるいは一般的な風邪などで定期的に通っている「かかりつけ医」の先生がいらっしゃる場合は、まずはその先生に頭痛の悩みを直接ご相談いただくのが一番です。かかりつけ医の先生は、患者さんの全身の状態や、現在飲んでいる他のお薬のことを最もよく把握しています。片頭痛だと思っていたら別の病気が隠れていた、あるいは他のお薬の組み合わせが影響していた、ということもあります。そこで一般的な頭痛薬などを試しても改善が難しい場合や、より専門的な「CGRP関連薬」などの治療が必要だと判断された場合には、頭痛外来や頭痛専門医がいる医療機関への「紹介状」を書いてもらうのが最もスムーズで確実なステップです。

自分から専門医を探す場合は、どう探せば良いですか?

先生: 「日本頭痛学会」の公式Webサイトを活用するのがおすすめです。ホームページには、全国の「頭痛専門医一覧」が公開されています。初めて受診する際は、いつ、どんな時に痛んだかを記録した「頭痛ダイアリー」をつけて持参いただくと、医師が片頭痛のタイプを正しく診断する上で非常に大きな助けになります。

片頭痛の治療は継続が大切とのことですが、仕事が忙しくて毎月通院できるか不安です。

先生: そうした忙しい患者さんにとって大きな助けになるのが「オンライン診療」です。日本頭痛学会がまとめたオンライン診療の実践マニュアルにおいても、対面診療で予防療法を継続し、頭痛発作がコントロールされている患者さんがオンライン診療に適しているとされています。通院の負担による治療の中断を防ぎ、薬物乱用頭痛にならないようにするためにも、対面診療とオンライン診療を併用して治療を継続することが推奨されています。

最初からオンラインで受診しても良いのでしょうか?

先生: 「初診(初めての診察)」は原則として医療機関での「対面診療」が推奨されています。なぜなら、初診の段階では、脳出血やくも膜下出血、脳腫瘍といった命に関わる危険な頭痛(二次性頭痛)が潜んでいないかを、画像検査などでしっかりと除外する必要があるからです。

しかし、対面診療でしっかりと診断がつき、頭痛発作が安定してコントロールできるようになった段階であれば、オンライン診療へ移行することが可能です。「忙しくて通えないから」と治療を諦める前に、ぜひオンライン診療への移行も含めて検討してみてください。


さいごに

最後に、片頭痛でお悩みの患者さんへメッセージをお願いします。

先生: 片頭痛は外見からは痛みが伝わりにくく、周囲からの理解を得られずに一人で苦しんでいる方が少なくありません。しかし、医学の進歩により「片頭痛はコントロールできる病気」へと変わりつつあります。従来の治療で効果を感じられなかった方でも、新しいアプローチの治療薬によって生活の質(QOL)を取り戻せる可能性が十分にあります。日常生活に少しでも支障が出ている場合は、決して我慢せず、一度お近くの頭痛外来や頭痛専門医がいる医療機関にご相談ください。



医師
医学博士
日本脳神経外科学会専門医
日本脳卒中学会専門医
日本抗加齢医学会専門医
日本健康経営専門医

2011年福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学入局。星総合病院脳卒中センター長、福島県立医科大学脳神経外科学講座助教、青森新都市病院脳神経外科医長、東京予防クリニック院長を歴任。現在は複数の医療機関で頭痛予防含め脳疾患治療に従事している。

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