「体の不調」「心のもやもや」実はうつ病のサインかも?

  • 作成:2025/09/11

「うつ病」と聞くと、気持ちが落ち込む、何をしても楽しくないなど、心の症状を思い浮かべるかもしれません。でも実は、胃の不快感、食欲の低下、疲労感、頭痛や肩こりなど、さまざまな身体の症状として現れる人もいます。身体の調子が悪く、病院に行っても検査では異常がないのに、なかなか体調が良くならないとき、実はうつ病によるものだったということがあります。日本の調査では、生涯のうちに約6%の人がうつ病を経験しています(Ishikawa et al. 2016)。うつ病は身近な疾患であり、治療開始が早いほど重症化せず、早く治るといわれています(Ghio et al. 2014; Kubo et al. 2023)。本記事では、うつ病が疑われる症状について紹介します。「もしかして?」と思ったら、医療機関などにご相談してみましょう。

この記事の目安時間は6分です

「うつ病」と「うつ状態」の違いとは?

気分が落ち込むこと自体は、誰にでもある自然な感情です。失敗や人間関係の悩み、疲れが重なったときなどに、一時的に気分が落ち込むことがあります。これは「抑うつ気分(depressed mood)」と呼ばれ、正常な心の反応のひとつです。一時的な「抑うつ気分」は原因となるできごとがなくなったり、時間が経ったりすれば回復します。こういった気分の落ち込みと回復の経験から、治療が必要な精神面の不調が続いても、「しばらくがまんすれば元にもどる」と、そのままにしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。必要なタイミングで医師に相談していただくために知っておいていただきたいのが「うつ病」と「抑うつ状態」の違いです。

「抑うつ状態(depressive state)」は症状です。「気分が沈む」「やる気が出ない」「今までだったら楽しめていたことが楽しめない」など、抑うつ気分が続き、仕事や家事、人間関係などの日常生活に支障をきたすような状態を「抑うつ状態」と呼びます。抑うつ状態は、いわゆる「うつ病」の他にも、ステロイドなどの薬の副作用、甲状腺の病気(甲状腺機能低下症)、認知症、慢性の痛みや生活習慣病に伴う精神的負担など、他の身体疾患や薬剤の影響によっても起こることがあります。抑うつ状態が現れていても、原因が必ずしも「心」だけにあるとは限りません

一方、「うつ病(depression)」は病名です。
「抑うつ状態」が2週間以上続き、日常生活に支障をきたしている状態で、特定のできごとというより、その人の性格や周辺環境、ストレスなどが複合的にからみあって生じると考えられています。
「うつ病」になると、時間による解決が難しいことが多くなります。また、見過ごしたままにしていると、重症化し、より日常生活への影響が深刻になったり、治療に時間がかかったりすることもあります。

このように、抑うつ状態が続くときは、心以外に原因があったり、うつ病の可能性があったりします。そのため、体の不調と同様、心の不調も見過ごさず、抑うつ状態が2週間以上続くようであれば、自己判断せず、早めに医師などに相談することが大切です。

うつ病の症状は「心」と「体」の両方に現れる

うつ病では、気分の落ち込みや不安といった精神症状のほか、胃の不快感、めまい、倦怠感、頭痛や肩こりなどの身体の症状も現れます。身体の不調を治療するために内科や整形外科を受診しても異常がなく、心療内科や精神科を紹介されて、はじめて自分がうつ病だと気づくケースもあります。このように身体症状の方が強く現れ、なかなか心の問題と気づきにくいものを「仮面うつ病」といいます。

うつ病の可能性に早く気づくためには、うつ病になると心と体にどのような症状が出るかを知っておくことが大切です。ここでは代表的な症状を紹介します。

〈精神症状〉

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・気分の落ち込みが続く
憂うつな気分が2週間以上続いていることは、うつ病の重要なサインです。朝、目覚めた時の気分が一番沈んでいて、夕方から夜にかけては少し上がるという「気分の日内変動」も特徴的な症状です。

・好きなことへの興味、喜びが失われる
趣味の活動や、生活のなかのちょっとした楽しみへの興味が喪失した状態が続くことも、典型的な症状です。平日はなんとか仕事に行っても、好きだった趣味もせず、休日はなんとなくインターネットをながめて終わり…、ということもあります。

・思考力・集中力が落ちて、ものごとを決められない
自分では普段通り活動をしようとしているのに頭が働かない状態です。例えば、仕事中に書類を読んでいるのに、内容がまったく頭に入らない。家事をしようと思っているのに、どうしても気力が出ず、段取りよく進められないといったことが起こります。

・「死にたい」「消えてしまいたい」と思うことがある
うつ病になっていると、「朝、目が覚めなければいいのに」「消えてしまいたい」といった考えが頭に浮かぶことがあります。こうした気持ちが繰り返し続く場合は、自殺を考える段階に進むこともあり、うつ病の非常に重要なサインの一つです。

〈身体症状〉

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・ほとんど毎日よく眠れないか、寝過ぎてしまう
睡眠に関する症状は、うつ病の患者さんの大部分に見られます。夜なかなか寝付けない、眠っていても何度も目が覚めるといった人もいれば、過剰に寝てしまい、日常生活に支障をきたすこともあります。

・食欲不振、胃の不快感、下痢、便秘
一見、うつ病と関係がなさそうで、意外と多いのが消化器にまつわる症状です。うつ病になると自律神経のバランスが崩れることにより、胃の不快感、吐き気、下痢、便秘などの症状が現れることがあります。

・食欲がわかない、あるいは食べすぎてしまう
うつ病では、「食べることが面倒」「何を食べても味がしない」と、著しく食欲が落ちる場合があります。逆に、食欲が増して、甘いものや炭水化物などを過剰に食べたりすることもあります。短期間での体重変化は注意が必要です。例えば、1ヶ月の間に、体重が5%以上増減した場合は要注意です。

・原因不明の頭痛や肩・腰の痛み
けが・病気などの明らかな原因がないのに、肩こりや腰が痛み、頭痛が続いたりすることも、うつ病にともなう身体症状の一つとして現れる場合があります。こうした痛みも、うつ病によって自律神経のバランスが崩れた結果生じる、筋肉の緊張や血流の変化に関係している可能性があります。内科や整形外科で診察を受けても異常が見つからず、マッサージに行っても改善しない場合は、心の状態を振り返る一つの手がかりになるかもしれません。

これまで述べてきたように、うつ病の症状は多岐にわたります。当てはまることがあれば、早めに身近な医療機関、職場の産業保健スタッフ、学校の保健センターや地域の相談窓口(保健所や精神保健福祉センターなど)での相談をご検討ください。

文献
Ghio, Lucio, Simona Gotelli, Maurizio Marcenaro, Mario Amore, and Werner Natta. 2014. “Duration of Untreated Illness and Outcomes in Unipolar Depression: A Systematic Review and Meta-Analysis.” Journal of Affective Disorders 152–154 (January): 45–51.
Ishikawa, H., N. Kawakami, R. C. Kessler, and World Mental Health Japan Survey Collaborators. 2016. “Lifetime and 12-Month Prevalence, Severity and Unmet Need for Treatment of Common Mental Disorders in Japan: Results from the Final Dataset of World Mental Health Japan Survey.” Epidemiology and Psychiatric Sciences 25 (3): 217–29.
Kubo, Kaoruhiko, Hitoshi Sakurai, Hideaki Tani, Koichiro Watanabe, Masaru Mimura, and Hiroyuki Uchida. 2023. “Predicting Relapse from the Time to Remission during the Acute Treatment of Depression: A Re-Analysis of the STAR*D Data.” Journal of Affective Disorders 320 (January): 710–15.

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