あなたの「心配性」はただの性格?それとも⋯ 知っておきたい長引く心や体の不調に潜む全般不安症

  • 作成:2026/04/17

「いつも何かに不安を感じている」「心配が頭から離れず、体もだるい」 日々の生活で生じる心や体の不調を「心配性な性格だから」「環境の変化に順応する努力が足りないから」と思い、そのままにしていませんか?  実はその自分でコントロールできない「過度な不安や心配」は、単なる性格の問題や一時的な疲れではなく、「全般不安症(全般性不安障害:GAD )」という治療可能な病気かもしれません。

原口 正 監修
宇都宮大学保健管理センター 准教授/学生相談室長
原口 正 先生

この記事の目安時間は6分です

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全般不安症とは?

性格のせいではなく「脳内ネットワークの不調」

全般不安症は、仕事、健康、家族、経済状況など、日常のさまざまな出来事に対して、慢性的にコントロールできない過剰な不安と心配(予期憂慮)が長時間(一般的に6ヶ月以上)続く病気です。この過剰な心配によって、十分な睡眠がとれない、筋肉が緊張してこるといった身体症状が出たり、集中できなくなって仕事や家事、人間関係に支障が出たりします。また、全般不安症は、うつ病などを併発しやすく、その場合には希死念慮のリスクが高まることがあります。

全般不安症の原因は明確にはわかっていませんが、単に「心が弱いから」ではありません。性格や遺伝など、ストレスに加え、脳内の神経伝達物質(セロトニンなど)や脳内で感情を司る「扁桃体(へんとうたい)」を含む脳の働きが関与している可能性が示唆されています。

「ただの心配性」と全般不安症の違いは、その心配が「自分でコントロールできない」こと、持続していること、またその心配により仕事のパフォーマンスが落ち、家事が手につかないなど日常生活に支障が出ていることです。

女性や若年層に多いが、誰もが発症する可能性がある

生涯のうちに、この病気を経験する人は数%程度とされ、決して珍しい疾患ではありません。女性は男性より多く、青年期〜成人期に発症することが多いですが、男女問わずあらゆる年齢で発症する可能性があります。

全般不安症の症状

全般不安症の中心となる症状は、全般的かつ持続的である過剰な不安ですが、精神症状のほか、身体症状も現れます。「動悸や息苦しさ、肩こり、めまいで内科を受診したけれど、異常なしと言われた」という場合、その背後に全般不安症が隠れているケースも多々あります。不安により心と体にどんな症状が出るかを知っていただき、あてはまる症状が長い間(6ヶ月以上)続いている場合は、「気のせい」で片付けず、心療内科や精神科への相談をご検討ください。

精神症状

  • 過剰な心配:仕事の些細なミス、家族の健康、老後の資金、新しい職場での評価など、複数の出来事に対して「悪い方向」に考えてしまう
  • コントロール困難:「これ以上心配しても仕方がない」と頭では分かっていても、止められない
  • 落ち着かない、緊張感、または過敏さ:そわそわして落ち着きがなくなる、常に神経が張り詰め、ささいなことに敏感になる
  • 集中困難:注意力が落ち、仕事や家事に集中できなくなる
  • イライラしやすい:ちょっとしたことでイライラする、怒りっぽくなる

身体症状

  • 首や肩のこり(筋肉の緊張):不安による緊張状態が続くことで、無意識に体に力が入り、肩こりや頭痛などが現れる
  • 慢性的な疲労感:常に気を張っているため疲れやすい
  • 睡眠障害:不安で寝付けない。夜中に何度も目が覚めてしまう

放置するとどうなる?

「ただの心配性だから」と放置し、適切な治療を受けずに放置すると、心身に以下のようなリスクがあります。

  • 慢性化・生活への支障:不安が長引いたり強くなったりして、仕事や家事、外出などの日常生活に大きな支障をきたすことがあります。また、自律神経の乱れなどから、動悸、疲労感、高血圧、胃腸の不調などの身体症状のリスクを高める要因にもなります。
  • うつ病との併発:全般不安症を放置した場合、うつ病(大うつ病性障害)を併発することもあり、併発すると、症状がより重くなったり、回復により長い時間がかかりやすくなります。

どんな治療方法がある?

全般不安症は、1人で抱え込まず適切な治療を受けることで症状を改善し、本来の生活を取り戻すことが期待できます。治療は主に以下の2つの治療法を組み合わせて行います。

薬物治療

各国の診療ガイドライン※では、抗うつ薬(SSRI / SNRIなど)が認知行動療法(CBT)と並んで標準的な選択肢とされています。抗うつ薬を服用することで、典型的には数週間後に症状の改善が得られるとされています。

また、短期間に限定して、ベンゾジアゼピン系抗不安薬も用いられることがあります。ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、不安を直ちに軽減できる可能性がある一方、長期服用により依存のリスクがあるため、慎重に使用することが勧められています。 ※ 2026年3月現在、日本におけるGAD診療ガイドラインはありません

認知行動療法(CBT)

心理療法の1つであるCBTは認知療法と行動療法の組み合わせであり、薬物療法と並んでGADへの効果が実証されています。認知療法的には、「心配しても仕方のないことを、無限に心配してしまう」という思考のクセ(認知歪み)に気づき、現実的で柔軟な考え方ができるように練習することで、不安への対処法を身に着けていきます。また、行動療法的には、不安や緊張しやすい状況を避けたい(回避行動)に対し、少しずつ慣れていく(馴化:「じゅんか」)ためのトレーニングをしたりします。

おわりに

「もしかして……」と思い当たる症状があれば、まずは一度、専門医(心療内科・精神科)にご自身の状態を相談してみませんか?それは決して「心が弱いから」「性格だから」ではありません。適切な治療に向けた、大切な第一歩です。

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