うつ患者さんの治療体験談②
- 作成:2025/09/11
私生活や職場で辛い出来事が重なり、声が出なくなるなどの身体症状からうつ病を発症したBさんの体験談です。複数の病院を受診しても原因が分からず、精神科にたどり着くまでには1〜2年かかりました。中等度のうつ病と診断され治療を始めるも、現在も不眠や不安感、希死念慮に悩まされるなど、困難を抱えながらも懸命に生きる姿が綴られています。うつ病への理解を求めるメッセージも紹介します。
この記事の目安時間は6分です
受診までの経緯
私がうつ病と診断されたのは3年前、33歳の時でした。
当時は失恋などプライベートで辛い出来事が重なり、ストレスからか、時々声が出にくくなる症状に悩まされていました。
それに加え、職場でのパワハラやセクハラ、過剰な業務負担がのしかかり、声が出なくなる頻度はどんどん増え、期間も長引いていきました。
原因不明の胸の痛みが続いたり、眠れない夜が増えたりと、身体的な症状もはっきりと現れるようになりました。
しかし、不調を訴えれば訴えるほど、周りからは理解されず、仕事や日常生活に大きな支障が出ていきました。
当時はコロナ禍ということもあり、病院をすぐに受診することもできず、症状は悪化するばかり。次第に無気力になり、死にたいと思ったり、自分を傷つけたりすることも出始めていました。
そうしているうちに、職場から「このままでは雇用問題に関わるので、即刻受診して何とかして欲しい」といわれました。
しかし、耳鼻咽喉科では「喉に物理的な異常はない」と言われるばかりで、5件もの病院をはしごしました。最終的には紹介状を手に、自分で精神科を探し出すしかありませんでした。
最初に「おかしいな」と感じてから、実際に精神科を受診するまで、1〜2年という長い時間が経っていました。
受診後の治療経過
精神科で初めて「中等度のうつ病による心因性発声障害」という診断を受け、長年の不調の原因が分かりました。
抗うつ薬と睡眠改善薬による治療を始めましたが、声が元に戻るまでには時間との闘いでした。
通院頻度は2週間に1回から始まり、3週間に1回、1ヶ月に1回と減ってきていますが、治療を続けても不眠や不安感、希死念慮や自傷行為は完全には改善せず、今も左腕には多数の傷跡が残っている状況で、薬の量を増やしてもらっています。
仕事の方は、職場で過度なモラハラを受け、依願退職する道を選びました。
退職後は2つの会社で働いた後、就労継続支援A型事業所に入所しましたが、事業者都合で解雇に。その後、勤務時間の調整がしやすいコールセンターでアルバイトとして働いています。
事業所に通っていた頃に父が急逝したことで症状は悪化し、簡単なことさえ考えられなくなってしまいました。
うつ病になる前のような記憶力や思考力は失われ、思考力や判断力、記憶力の低下が目立ちます。そのため、大切なことは手帳やアプリに記録する、車の鍵はなくさないようにキーチェーンを付けて常に持ち歩くなど、自分なりに工夫して生活しています。
父が亡くなってから精神面はまだ落ち着きませんが、最近猫を飼い始め、少しずつ心の回復に努めているところです。
一番つらいのは、こうした記憶力や思考力の低下を家族や職場に「どこがうつ病なの?」と理解してもらえず、病気になる前と同じ働きを求められることです。そのたびに自分を責めて、消えてしまいたくなります。
受診を迷っている方へのメッセージ
うつ病は、誰でもかかる可能性のある病気です。そして、「頑張りすぎ」と「無理」の境界線が分からなくなるなど、世間が持つ「うつ病」のイメージだけでは測れない、本人にしか分からない苦しさがあります。
今、不調を抱えている方や、その周囲の方にはこれらのことを心に留めておいてほしいと思っています。
もし少しでも不調を感じたら、迷わずに受診することをおすすめします。また、何よりの力になるのは家族や周りの人の支えや理解です。もし誰にも相談できなければ、行政の窓口に頼ることもできます。
あなたは、決してひとりじゃありません。「うつ病だから悪い」なんてことは絶対にないので、どうか誰かにその苦しさを吐き出す勇気を持っていただけたらと思います。
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